ツルのひとりごと

Vol.19 より美しく

「より美しく」といってもミスビューティのコンテストのことを書こうというのではない。「より速く、より高く、より強く」というオリンピックの標語があるが、私はこれに「より美しく」を加えるべきだと、かねてから強く思っているからである。

速く走り、高く飛び、強く投げるという陸上競技だけではなく、スポーツは全力を競い合う種目が多いから、速さ、高さ、強さの要素が、勝敗を決める上での重要なものになるのは当然のことだろう。

しかし私はこうした物理量で測れる尺度だけではなく、スポーツには「より美しく」という量では測れない質的な要素というか、芸術性とでもいうべき要素も重要なものだと思っている。速く走る、高く飛ぶ、強く投げるといった陸上競技に代表される競技でも、極限を極める競技者の動き、姿には、見る者を魅了する美しさがあるものだ。特に、体操やフィギュアスケートなど、身体の動きの変化で表現するスポーツ種目では、美しさがそのスポーツの本質的な要素だと思っている。ボールゲームでも競技者個人とボールの動き、チームとしての動きの変化に、速さ、高さ、強さ、美しさの要素の全てを感じるのである。

こうした身体の動きで外部に表現される速さ、高さ、強さ、美しさだけでなく、競技する人の内面にある心の動きの速さ、高さ、強さ、美しさも、スポーツが見る人々を魅了する重要な要素になっているのだろう。それが外部に滲み出てくるものが「フェアプレー」というものだと思っている。これもより美しくあってほしいものだ。

(このコラムは、平成28年11月に発行したYMFSスポーツチャレンジ助成会報誌Do the Challenge Vol.17に掲載された内容を転載したものです。)

プロフィール
浅見 俊雄(あさみ としお)

埼玉県出身。東京大学卒業。東京大学名誉教授・日本体育大学名誉教授。元国立スポーツ科学センター(JISS)センター長、日本サッカー協会顧問、アジアサッカー連盟 規律委員会・審判委員会 副委員長など。元YMFS理事・審査委員長・調査研究担当理事