2023(令和5)年度活動の全体概要
本年度は障害者スポーツ競技団体の実態調査、全国の大学における障害者スポーツの現状に関する調査、障害者スポーツ選手のキャリア調査、「チャレンジ!ユニ★スポ」(障害者スポーツをユニバーサル教材として活用した体験事業)体験を通した児童の意識や行動の変化について掲載しています。
各調査テーマの概要および結果
[第1章]障害者スポーツ競技団体の実態調査
- 内容
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障害者スポーツ競技団体を対象に実態調査を実施した。東京2020パラリンピック大会前後での変化や過去調査との比較も含めて報告する。
- 結果
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- パラ競技団体、およびデフ競技団体では、全ての団体で法人格を取得していた。
- 実施事業では、「広報」「スポーツ大会の開催」が8割を超えている。
- パラ競技団体において、ナショナルトレーニングセンター(NTC)を、現在または過去に利用している(いた)団体は9割を超えた。国立スポーツ科学センター(JISS)を現在または過去利用している(いた)団体も約4分の3だった。
- 直近5年で、パラ競技団体ではスポンサー数に大きな変化はみられないが、非パラ競技団体ではスポンサー数が倍増した。
[第2章]大学における障害者スポーツの現状に関する調査
- 内容
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全国の4年生大学を対象に、障害のある競技者に対する支援や施設貸し出し、障害者スポーツ支援に関する意向等について調査を実施した。
- 結果
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- 障害のあるスポーツ選手について、体育・スポーツ系学部を有する大学の在籍割合がほとんどの障害種で他学部のみ設置の大学よりも高くなっている。
- 体育・スポーツ系学部では過半数の大学が合格実績を有しており、障害のあるスポーツ選手への門戸は広がってきている。
- 障害のある選手および団体への運動施設貸し出しについては、全般的に低調であった。
- 障害者スポーツ選手の競技力向上における大学の役割について、60%以上の大学が重要であると回答している。一方、実際の取り組みは非常に低調となってる。
大学の先進的取り組み調査について
- 内容
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障害者スポーツに関する先進的取り組みを行っている大学の事例紹介を通じ、今後の大学における障害者スポーツ振興活動の参考情報として紹介。
- 調査対象
[第3章]ユニ★スポ体験での児童の意識変容調査
- 内容
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小中学校を対象に、ボッチャをユニバーサルなスポーツ教材として5年間(参加4200人)にわたり実施した体験事業の結果より、アダプテッド意識の変容について調査を総括する。あわせてボール提供の有無による影響、学校規模による影響について分析する。
- 結果
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- 事前学習、体験、振り返りという一連の学習内容が、児童の障害イメージをポジティブな方向に変容させる。また、1年後の追跡調査から、継続して実施することで児童の障害イメージやアダプテッドへの意識が定着することも示唆された。
- 単に用具を提供するだけでは効果がなく、学校規模に応じた用具の準備が必要であることが示された。また学校規模はその後の活動実施に影響しており、体験的に学ぶことから生じる「障害者スポーツイメージ」や「アダプテッドの考え方」に差が生じた。
- 体験機会を増やし継続実施するための課題として、児童数に見合った教材の確保、総合学習に加えて体育などの時間でも実施できるようにすること、そして教員が楽しさや効果を知ることが挙げられた
[第4章]障害者スポーツ選手のキャリア調査
- 内容
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障害者スポーツ選手のスポーツを始めるに至った経緯や活動状況について、2023年度実施の26人の報告、および今年度までに調査した76名のキャリアパターンを掲載。
- 結果
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- 視覚障害のある選手の多くが特別支援学校やリハビリテーションセンターの部活動として競技を始めている。
- 東京パラリンピック招致決定後に社会人となった選手に学校卒業後そのまま選手雇用される人が多い。
- パラスポーツ開始を中心としたスポーツキャリアパターンとして12のタイプに類型化することができる。
報告書ダウンロード
報告書全文 | ダウンロード |
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はじめに・目次・障害者スポーツ プロジェクト | ダウンロード |
[第1章]障害者スポーツ競技団体の実態調査 障害者スポーツ競技団体、合計78団体(パラ競技28,非パラ競技36、デフ競技14)を対象とした実態調査の結果を報告。 | ダウンロード |
[第2章]大学における障害者スポーツの現状に関する調査 全国の大学を対象に、障害者スポーツに関係する環境や支援、今後の意向等についての調査結果を報告。 | ダウンロード |
[第3章]ユニ★スポ体験での児童の意識変容調査 ボッチャを活用して5年間(参加4200名)にわたり実施した体験事業の結果より、アダプテッド意識の変容調査について総括。 | ダウンロード |
[第4章]障害者スポーツ選手のキャリア調査 2023年度にインタビューした26名の調査報告、および本調査の累計76名から見えてきたキャリアパターンを掲載。 | ダウンロード |
附録 ユニ★スポ調査票 | ダウンロード |
報告書に関するコメント
藤田紀昭
(日本福祉大学 スポーツ科学部 教授/当財団障害者スポーツ・プロジェクト リーダー)
障害者スポーツ競技団体調査では非パラリンピック競技団体でスポンサーが増加していることなどが明らかになってきました。また新たにデフリンピック関連競技団体を対象とし、2025年のデフリンピックに向けた動きも視野に入れました。大学における障害者スポーツの現状調査ではスポーツ推薦制度のある大学の6割以上が障害のある選手も制度の対象とし、そのうち4割以上の大学で障害のある選手の合格実績があることがわかりました。そして小学校で障害者スポーツについて学んだり、体験したりした子どもたちには長くポジティブな影響が残ることもわかってきました。さらに、障害者スポーツ選手のキャリア調査ではこれまで5年間のデータの蓄積により、選手のスポーツキャリアには12のパターンがあることが明らかになりました。今回の報告書も「注目点多数あり!」ぜひご一読いただき、忌憚のないご意見ご質問等お寄せいただければ幸いです。