2022(令和4)年度活動の全体概要
本年度は5つのテーマについて調査を実施しました。北京2022パラリンピック大会と関連し、TV放送量の変化やパラリンピアン認知度、TVコマーシャルの変化について調査しました。また、2019年度より実施している障害者スポーツ選手のキャリア調査は累計50名の中間報告を掲載、障害者スポーツをユニバーサル教材として活用した体験事業「チャレンジ!ユニ★スポ」による児童の意識変容調査については、1年後の追跡調査結果を報告しています。
各調査テーマの概要および結果
[第1章]障害者スポーツ選手のキャリア調査
- 内容
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障害者スポーツ選手のスポーツを始めるに至った経緯や活動状況について、2022年度実施の11人の報告、および今年度までに調査した50名の中間報告を掲載。
- 結果
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2019年度より本年度迄に実施した合計50名のインタビュー調査から、パラアスリートのスポーツへの社会化(どのようにしてスポーツをするに至ったか)および競技の継続に関して、7つの視点(条件)が重要であることが明らかになってきた。
[第2章]テレビメディアによる障害者スポーツ情報発信環境調査
- 内容
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冬季パラリンピック北京大会前後での、障害者スポーツのテレビでの露出状況(放送時間、番組傾向、トピックス)を調査。
- 結果
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- 過去の冬季4大会の合計放送時間は、大会バンクーバー大会が35時間27分13秒、ソチ大会が72時間5分15秒、平昌大会が113時間28分40秒、北京大会が79時間18分26秒と、平昌大会で増加した放送時間は、北京大会で減少した。
- 「開催前」「開催中」「開催後」の北京大会の放送時間をみると、「開催前」はソチ大会、平昌大会、北京大会と大きな違いはみられず、「開催中」はソチ大会から平昌大会にかけて倍増したが、北京大会で減少した。「開催後」はソチ大会から平昌大会にかけて微増したが、北京大会では減少して、ソチ大会と同規模の放送時間であった。
[第3章]パラリンピアンに対する社会的認知度調査
- 内容
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冬季パラリンピック北京に出場した選手の社会的認知度を調査。
- 結果
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- 北京パラリンピック日本代表選手で最も認知度が高い選手は「村岡桃佳」(11.6%)で、ついで、「岡本圭司」(5.6%)、「小栗大地」(4.5%)、「川除大輝」(4.2%)、「新田佳浩」(4.1%)、「高橋幸平」(4.1%)であった。
- 北京パラリンピックの観戦形態は、「テレビのニュース番組で観た」が42.9%で最も多く、ついで、「テレビで中継番組を観た」(31.3%)、「テレビの選手・競技を紹介した特集番組を観た」(7.7%)であった。
[第4章]テレビコマーシャルによる障害者スポーツ情報発信環境調査
- 内容
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2008年から2021年までの、障害者スポーツ関連やパラアスリート起用のテレビコマーシャルの実態を調査。
- 結果
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- 障害者スポーツ関連のテレビコマーシャル、パラアスリート起用のテレビコマーシャルと2つの調査を実施したが、いずれの調査結果からも東京2020大会の開催が決定した2013年以降徐々に本数は増え、2016年から急増したことが明らかとなった。2020年には一時減少しているが、これはコロナ禍がテレビコマーシャルにも影響したことがうかがえる。
- 複数の競技や出演者が特定できないコマーシャルなど、東京パラリンピックをきっかけとした共生社会実現に向けた啓蒙的なコマーシャルが増えている。
[第5章]ユニ★スポ体験での児童の意識変容調査
- 内容
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障害者スポーツをユニバーサル教材として活用した体験事業の結果より子どもたちの意識や行動の変化を1年に渡り追跡調査。ならびに当財団が実施している教材提供でボッチャボールの活用事例を紹介。
- 結果
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- 『ボッチャ』をユニバーサルなスポーツ教材と位置づけた体験授業で、事前学習、体験、振り返りという一連の学習内容が児童の障害イメージをポジティブな方向に変容させることが示された。
そして、1年後の追跡調査からも児童の障害イメージやアダプテッドへの意識が定着することが示唆された。 - 体験会終了後の1年間について、ボッチャ等を継続して実施した児童とそうでない児童を比較すると、継続して実施した児童の方が障害イメージや障害者スポーツに対するポジティブイメージが醸成されていくことが示唆された。
- 『ボッチャ』をユニバーサルなスポーツ教材と位置づけた体験授業で、事前学習、体験、振り返りという一連の学習内容が児童の障害イメージをポジティブな方向に変容させることが示された。
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はじめに・目次・障害者スポーツ プロジェクト | ダウンロード |
[第1章]障害者スポーツ選手のキャリア調査 障害者スポーツ選手のスポーツを始めるに至った経緯や活動状況について、2022年度実施の11人の報告、および今年度までに調査した50名の中間報告を掲載。 | ダウンロード |
[第2章]テレビメディアによる障害者スポーツ情報発信環境調査 冬季パラリンピック北京大会前後での、障害者スポーツのテレビでの露出状況(放送時間、番組傾向、トピックス)を調査。 | ダウンロード |
[第3章]パラリンピアンに対する社会的認知度調査 冬季パラリンピック北京に出場した選手の社会的認知度を調査。 | ダウンロード |
[第4章]テレビコマーシャルによる障害者スポーツ情報発信環境調査 2008年から2021年までの、障害者スポーツ関連やパラアスリート起用のテレビコマーシャルの実態を調査。 | ダウンロード |
[第5章]ユニ★スポ体験での児童の意識変容調査 障害者スポーツをユニバーサル教材として活用した体験事業の結果より子どもたちの意識や行動の変化を1年にわたり追跡調査。 | ダウンロード |
付録・調査表・集計表 | ダウンロード |
報告書に関するコメント
藤田紀昭
(日本福祉大学 スポーツ科学部 教授/当財団障害者スポーツ・プロジェクト リーダー)
障害者スポーツ選手のキャリア調査では4年間、50人のデータを分析した結果得られた、新たな知見も掲載。テレビメディアによる障害者スポーツ発信環境調査、パラリンピアンに対する社会的認知度調査、テレビコマーシャルによる障害者スポーツ情報発信環境調査はパラリンピック開催時に定点的に実施している調査。この間の障害者スポーツのメディアでの取り上げられ方の変遷を確認することができます。ユニ★スポ体験での児童の意識変容調査ではパラリンピック、パラスポーツを使った教材が共生社会実現に寄与できる可能性を示唆しています。是非ご一読いただき、ご意見、ご批判お寄せください。