スポーツ教材の提供

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 教材活用アイデアレポート

Case2 浜松市立水窪小学校(静岡県浜松市天竜区)

提供教材:ストップウォッチ

手が届きそうな目標設定に視覚化した記録を活用

“がんばる”モチベーションを高めて達成感を味わわせる

Case2 浜松市立水窪小学校(静岡県浜松市)

児童一人ひとりに寄り添い、温かく見守ることのできる小規模校ならではの特徴を生かし、個々に目標を設定しそれに向かって努力する指導を行っている水窪(みさくぼ)小学校。個の記録をプリントアウトして残せるストップウォッチは、目指すべきゴールを目の前に提示し、“辛くてもがんばる”モチベーションを維持・向上するのに役立てられていました。

Philosophy: 学校・家庭・地域が結束し「くるしさに負けない子」を育む

浜松市中心部から北へ約60キロ、長野県と愛知県の県境に位置する水窪町。天竜川の支流・水窪川に沿って家が軒を連ねる人口約3,000人ほどの山間に、全校児童71名の水窪小学校はあります。

「少人数だから、一人ひとりの児童が輝いてこそ学校が成り立つんです」とおっしゃるのは校長の熊谷三郎先生。「ですからそれぞれの可能性を引き出そうと、個を生かしながら互いに認め、励まし、伸ばすように指導しています」

学校のグランドデザインには、「み・さ・く・ぼ」の頭文字からなる4つの重点目標があり、その一つに「“く”るしさに負けない子」を掲げています。それを踏まえ、日頃から各自に適した目標を設定し、それをクリアするにはどうすべきか、時には子どもたち自身にも考えさせ、最後までやり遂げ達成感を味わわせる指導が行われています。

その結果の一例として、小学校5年生を対象に30分間泳ぎ続ける「30分間回泳」という浜松市の恒例行事では、水窪小学校の児童は誰一人として脱落せず、全員が30分泳ぎ切ると言います。目標を達成するまでに辛く苦しくても、児童を取り巻く先生の励ましや温かい指導に、子どもたちも自ずと諦めず最後までやり遂げるのだとか。「子どもだって手が届きそうな目標があれば、努力する。がんばれるんです」と熊谷校長。

そして上級生の努力する姿は下級生のお手本となり、逆に下級生が奮闘する際には、普段自分たちが周りの大人に励まされているように上級生が応援・サポートに回るなど、「“く”るしさに負けない子」は受け継がれているのです。例えば、低学年児が上手になりたいと大縄跳びを練習していると、上級生が縄をまわしたり、下級生の背中を押して飛び込むタイミングを教えたり、手助けするそうです。

水窪小学校では、学年を超えた児童の縦のつながりだけでなく、開かれた学校を目指していることもあって、地域との横のつながりも強固です。自然学習指導員資格を持った方が山への遠足に同行したり、野菜作りの名人が学校菜園を手伝ったりと、「子どもは地域みんなの宝」という意識の下、「水窪小学校地域サポーター」として“水窪小学校の子どもたちのためにやらまいか!”と多くの方が協力してくださるのだそうです。

※やらまいかとは、静岡県西部の方言で「やってみよう」「やろうじゃないか」という意味

Plan: 「我が学区が誇る一大行事」小・中合同持久走大会のスムーズな運営に活用したい

地域との連携ということでは、2008年から年に1度、町内のメイン通りで行う小・中学校合同の持久走大会も「我が学区が誇る一大行事」(熊谷校長)です。普段学校行事と縁の薄いお父さんも見学できるようにと日曜日に開催。沿道には保護者の方はもちろん、地域の皆さんがずらりと並び、がんばる児童や生徒に大きな声援を送ります。そして子どもたちの懸命な姿に元気をもらうのだそうです。

実は、今回の教材提供応募の動機が、「この合同持久走大会で正確な記録をとるため」でした。「以前は小中合わせてストップウォッチが1つしかなく、計測途中で間違えたり、リセットしてしまったりと、正確に記録が取れなかったことも(苦笑)。今回は提供いただいたプリンター付ストップウォッチ2台のおかげで、スムーズに運営できました。もちろん大会本番だけでなく、定期的にタイムを測り、がんばった成果として記録が伸びていることを意識させるなど、練習時にも活用しました」と4年生を受け持つ鈴木正崇先生。

Do: 市の水泳大会・陸上大会の練習に

持久走大会の前にも、5・6年生を中心に夏の水泳大会や秋の陸上大会に向けての練習に活用。ただ計測してそのタイムを告げられるだけよりも、出力された記録を目にすることで、自身の現状を強く意識でき、その自己ベストを0.01秒でも上回ることを目標にみんなが苦しさを乗り越えて練習に励んだと言います。

特にリレー競技の練習では、パートごとに記録が残せるので、個人の努力の成果が視覚化され、モチベーションが向上したそうです。また、水泳大会の練習を通じ、苦しくても努力し続ければ自己ベストを上回るなど、次のステップに上がれる歓び・達成感を体験したことで、陸上大会での練習にもいっそう力が入ったのです。

Check: 努力は実る! 記録の視覚化が自己ベスト更新に貢献

浜松市内の100校ほどが集まって開催された夏の水泳大会では、女子50mバタフライ(決勝6位)と男子50m平泳ぎ(決勝8位)、男子200mリレー(決勝7位)の3種目で入賞。また浜松市天竜区内約20校による陸上大会では、女子800mで2位、男子400mリレー2位、女子400mリレー3位と表彰台を獲得。しかも参加した児童は全員自己ベストを更新するという好成績を挙げたのです。

児童数が多い学校では泳ぎが得意だったり、走るのが速い、選ばれた子どもたちが大会に参加しますが、水窪小学校では5・6年生全員と希望する4年生が、夏は水泳部、秋は陸上部員となって参加。そんな状況下での入賞の数々に指導にあたった鈴木先生も「子どもたちの練習に取り組む真摯な姿勢に感動しました。素晴らしい結果を残してくれたことを嬉しく思います」と顔をほころばせました。

Action: 成功体験を積み重ね、夢を持てる子どもに

大会練習期間中は、測定記録を一覧にして教室に張り出していましたが、基本的には個々の児童の目標設定のために指導する側が記録を活用していたといいます。そこで、モチベーションをより高めるために、次回の大会に向けては子どもたち自身に記録を測らせることも検討するそうです。そしてがんばった先で得られる達成感の歓びを重ねさせ、「最近は、夢を持てない子どもが増えていると聞きますが、地域・家庭・学校が三つ巴となって夢に向かってがんばれる子どもを育んでいきたい」(鈴木先生)とのことです。

(2011年3月取材)