スポーツ教材の提供

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 教材活用アイデアレポート

[Case4]寒くても屋外で楽しく身体を動かし、強く安定した心身を育む

提供教材:サッカー球

久留米信愛女学院中学校(福岡県久留米市)

さまざまなスポーツへの取り組みを通じて、これからを生き抜くたくましさを身に付ける

Case4 久留米信愛女学院(福岡県久留米市)

礼節を重んじ、国際社会で活躍する女性の育成を目指す久留米信愛女学院中学校。年頃の生徒たちにとって冬場の屋外での体育は敬遠されがち。サッカーボールの提供をきっかけにグラウンドを使った体育の授業が充実し、寒くても屋外で身体を動かすことで心の安定を促し、自ら考え行動する自主の精神の育成に一役買っているようです。

Philosophy: 学校・家庭・地域(同窓生)の三つ巴で“女性の生涯をサポート”

久留米信愛女学院中学校は、「カトリックの精神に基づいて一人ひとりが主体性を確立し、それぞれの可能性を最大限に伸ばして自己形成を図るとともに、物事を正しく判断して行動し、さらに豊かな心を持って社会に貢献する人を育てる」ことを教育方針とする、2010年に学院創立50周年を迎えた伝統ある中高一貫校です。

グローバルな時代に活躍する女性の育成として、国際交流や語学教育に注力する一方、伝統文化を受け継いだ立ち居振る舞いができるよう茶道・華道などの礼法指導が行われています。さらに“信愛しぐさ”として、端正な服装・身嗜み、適切な言葉遣い、明るくハキハキとした挨拶などを常に心掛ける指導を徹底し、「あ・す・こ・そ・は(挨拶・スマイル・腰骨を伸ばし姿勢を正す・掃除・履き物をそろえる)」を合言葉に常日頃から礼節が重んじられています。

また、成人式を母校で祝う「信愛成人式」や卒業後10年経った先輩が教壇に立ち在校生に人生経験を語る交流会「MESSAGE28」、40歳・60歳という人生の節目を迎える卒業生を学校行事にお迎えする「ロザリオの集い」など、“女性の生涯をサポートする学院”としての活動も活発です。

もちろん家庭の学校への関心も高めようと、保護者向けの学校通信を毎月発行することで学校に対する理解も深まり、学校行事への保護者の参加も多いそうです。

Plan: スポーツを通じて胆力を鍛える。その一環としていろいろな種目を体験させたい

部活動では、新体操やバスケットボール、バドミントンなど、室内競技が盛んな一方で、グラウンドを使う競技は人数不足や顧問の不在などもあり活発とは言えない状況でした。同様に屋外での体育の授業も特に冬場は敬遠されがちで、制服姿のまま見学する生徒が少なくなかったと言います。

そこで様々な競技種目に触れさせる一環として、グラウンドを活用した体育の授業を増やそうと思案。そんな折に当財団のスポーツ教材の提供の案内が舞い込み、「これを機にサッカーに取り組もう」と応募されたのだそうです。

Do: 屋外で楽しく身体を動かすための第一歩に

先生個人所有のボール1個を使い、持久走の後のレクリエーション感覚のサッカーごっこや、ハンドボールとマーカーコーンを使って体育館でフットサルをやっていたことはあるものの、これまでサッカーの授業は行われていませんでした。そこで今回の教材提供を好機と捉え、ボール、ミニゴールを追加で早速購入。2010年の冬季からグラウンドでの体育にサッカーを採用したのです。

「あくまでも“いろいろな競技種目に触れること”が目的なので、初心者でも楽しめるようコートを狭くしフットサルの感覚で取り組ませています。現在は寒稽古的な意味合いもあり、寒い時期に寒いグラウンドで行う体育として1年生の授業にサッカーを盛り込んでいますが、当初はまず3年生から導入しました。というのも先輩がやっている姿を見せることで、下級生たちが取り組みやすくなるからです」(立石先生)

体育の授業に割り振られた時間は週2コマ。限られた時間で、いろいろな種目に触れさせる機会として、競技力を向上させることよりも、ボールを使ってわいわい楽しみながら身体を動かすことを重視した指導が行われていました。

Check: 礼法などの指導とあいまって、生徒はみな自主性を持ってはつらつと

身体を動かすことにより、多感な生徒たちの心が安定。問題行動を起こす生徒がゼロになり、警察の方から「どのような指導をされているのですか?」と尋ねられるほど。またレクリエーション感覚の授業内容ということもあり、屋外での体育への抵抗が緩和され、見学者も激減。さらに自主性も芽生え、体育祭や生徒会活動を生徒たちがより率先して行うようになったと言います。

「文化祭と交互に隔年開催していた体育祭を毎年行うことにしたので、1回あたりの予算が削減されました。その分、中学と高校それぞれの1年生が企画運営してバザーを催し、その売上金を体育祭に回しています。今年は約90万円を売り上げ、うち3分の1を震災でマリア像が壊れてしまった被災地の学校に新しい像を贈るために使い、10万円をカンボジアに寄付、そして残りを体育祭費用にまわしていました。それら全て生徒たち自身の判断と行動によるものなんですよ」(片山校長)

もちろんこれらはサッカーを授業に採り入れたことだけの成果ではなく、礼法指導を始めとするさまざまな取り組みが有機的に作用してのことです。しかし屋外で身体を動かし心身ともに鍛えることで、これまでの指導がより効果的に浸透し、成果を挙げているように見受けられました。

Action: グラウンドを使う部活の活性化に向けて

週2時間の体育の授業の中でいろいろな種目を体験させる一環として、サッカーは引き続き採用し、今後は屋外での運動に親しみを持たせ、グラウンドを使う部活の活性化にもつなげたいと考えているそうです。

「既存のソフトテニスやソフトボール部の活性化に加え、サッカーに詳しい地元の方の協力を得て、サッカー部が作れたら最高ですね。今なら、なでしこジャパンの活躍も追い風となりますし。いろいろな種目を経験させるという意味では、今度はラグビーに挑戦しても面白いかもしれません」とこの先もスポーツを通じたさまざまな取り組みに着手したいと片山校長は目を輝かせていました。

(2011年12月取材)