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[Case11]誰もが楽しめるタグラグビーを入口に、ラグビー文化のすそ野拡大をめざす

提供教材:タグラグビーセット

NPO法人ゆめフルたけとよスポーツクラブ「武豊ラグビースクール」(愛知県知多郡武豊町)

接触プレーがないタグの特性でラグビーへの抵抗・不安感を払拭するとともに基礎練習にも活用

Case11 NPO法人ゆめフルたけとよスポーツクラブ「武豊ラグビースクール」(愛知県知多郡武豊町)

地域の小・中学生を対象に、代表である氏家拓也さんご自身が、ラグビー仲間とともに2013年春に立ち上げた「武豊ラグビースクール」。地元の高校がかつてのラグビー強豪校である地域性も手伝って、2019年のワールドカップに向け町内にラグビー機運が高まりつつある中、2014年からは総合型地域スポーツクラブ「ゆめフルたけとよスポーツクラブ」のプログラムのひとつとして地域に根ざしたスクールとして再出発しました。

Philosophy: 誰にでも居場所のあるラグビーで子どもたちの長所や可能性を引き伸ばしたい

武豊ラグビースクールの代表・氏家さんは、現在、中学校教諭ですが、以前、小学校で教鞭をとっていた頃、学校のクラブ活動としてタグラグビーを指導していたそうです。その後、中学へと異動になりそこでもラグビーを、と思ったそうですが、「新しく立ち上げることは、なかなか難しく、一方で小学校のタグラグビークラブも私が抜けた後は結局存続できませんでした」。ラグビー育成の芽を絶やしてなるものかと、2014年4月13日に地域の小・中学生を対象とした「武豊ラグビースクール」を開校。小学生の時に指導した児童たちが高校生へと成長し、今では時折後輩指導に参加してくれるそうです。

もちろん氏家さん自身もラグビー経験者。「高校生になったらラグビーするものだと、確固たる根拠はないままに(笑)始めました。中学時代の恩師がラグビーのことをよく話してくれた影響が大きいかもしれませんね。ラグビーは誰でも活躍できるスポーツ。足が遅くても、ボールが上手く扱えなくても、少し体重が重くてもいいんです。何か一つ自分ができることを突き詰めて、互いの長所でカバーし合い、ひとつのチームとしてみんなでひとつの目標に向かい、喜びも辛さも分ちあえばいい。野球やサッカーは続かなくても、ここならがんばれそうと思ってもらえるはずですし、できることを伸ばして行くことで自信が持てるようになるはず。そんなラグビーでの経験は、生きて行く上で必ず役に立つと思っています」

Plan: ラグビーの町復活の端緒にタグラグビー

地元の高校は、以前全国大会出場を果たすほどのラグビー強豪校でしたが、現在は競技人口が減少。折しも2019年にラグビーワールドカップが、2020年にはオリンピックが日本で開催されることから、ラグビー伝統校復活をめざしラグビー部OBのみなさんが強化・普及に向け動き始めたのです。そんなラグビー機運高まる町のムードを追い風に武豊ラグビースクールも今年から「ゆめフルたけとよスポーツクラブ」のプログラムのひとつとして活動を開始。「まずは馴染みのない子どもたちにラグビーを知って興味を持ってもらうきっかけにタグラグビーを活用しようと教材提供に申請。タグラグビーは鬼ごっこの延長で誰もが楽しめますし、接触プレーがないので、親御さんも安心して子どもに始めさせられますからね」(氏家さん)

Do: ラグビーの楽しさや基礎を養うタグラグビー

武豊ラグビースクールには、小学生3人、中学生10人の計13人が在籍し、隔週火曜日の夜と土曜日の午後に合計月4回活動しています。中学生のほとんどは、以前氏家さんが小学校でタグラグビーを教えていた子どもたちです。

「ラグビーの楽しさを実感してもらう最初のステップとして、タックルやスクラムなどの接触プレーのないタグラグビーは最適です。ゆめフルたけとよスポーツクラブのプログラムとしては、タグラグビー教室として開設し、間口を広く設けています。タグでラグビーの楽しさに目覚めてくれれば、次のステップへと進みたくなるでしょうから、とにかく子どもたちが怪我することなく、面白い!続けたい!と思えることを第一義に指導しています」と氏家さん。またタグラグビーは、ウォーミングアップにも、1対1や2対1のラグビーの基本練習にももってこい。また腰の位置にあるタグを狙うことは、効率よく相手を倒せる低い位置でのタックル練習にも結びつくのだとか。

「小・中学生が一緒にプレーしても小学生のタグは位置が低いので中学生は取りにくいし、小学生もすばしっこいので互角の勝負。しかもタグラグビーはタグを取るという動作が分かりやすい上に、相手にタグを返すところまでが一連の動作。ですから、タグラグビーは相手を気遣う心を育むことにも大いに有益なんです」と練習の冒頭にはタグラグビーを積極的に取り入れているそうです。

Check: 地域クラブとして多世代と交わり人間力も育む

「参加している子どもたちが、ラグビーが楽しくて続けたいと思ってくれていることがまずは成果」と氏家さん。実際、この春から通い始めた児童のお兄さんが、後期の10月から新加入するなど、口コミで徐々にラグビーの輪を広げているのです。また、小・中学生合同で練習しているため、小学生にとって中学生は手本や目標になるし、中学生にとって小学生をフォロー・指導することで相手を思いやる心の育成や復習にも有効的。さらに地元のラグビー部の高校生や保護者、地域の方々も練習の合間にスクールに駆けつけて指導くださるなど、多世代の交流も行なわれ、スポーツを通じた地域の活性化にも貢献しているのです。

「いろんな年代が参加できる地域のクラブだからこそ、10年、20年の長期スパンで目標・計画を立てられますし、合宿に行ったり、さまざまなチームと交流試合を行なったり、学校のクラブ活動では難しいことにも取り組めているのがいいですね」と氏家さんは相好を崩します。

Action: ラグビー人口を増やし定着させ好循環させる仕組みを

今は近くのクラブと合同で試合に参加している状況のため、「まず試合ができる人数まで参加者を増やしたい」と氏家さん。今後生徒数を増やしていく一環として、女子の参加を望むものの、体験してもらうチャンスをなかなかつくれないのだとか。「特にタグラグビーは女の子たちにもおもしろがってもらえると思うのですが」と思案の様子。そして「いつの日か、私たちのスクール出身者が地元高校のラグビー部に入って全国大会に出場し強豪校復活に貢献。その後、大学や社会人ラグビーでも活躍し、時々スクールに顔を出しては後輩の指導にあたる。指導される子どもたちは“いつかは自分も!”と先輩の姿に自分を重ね、目標にすえてがんばるような競技人口ピラミッドの形成と世代循環が定着するといいな」と思い描いているそうです。「もちろん行く行くはワールドカップやオリンピックに出場するような選手を輩出できたら最高ですけれどね」と大きな志を語る氏家さんには、子どもたちが実際に活躍する姿が遠くに見えているようでした。

(2014年12月取材)

特定非営利活動法人 ゆめフルたけとよスポーツクラブ

平成21年3月に発足した、愛知県知多郡武豊町にある総合型地域スポーツクラブ。

子どもからおじいちゃんおばあちゃんまでのすべての人たちが、身近な場所でスポーツに親しめるように、さまざまなスポーツ教室やイベントの開催、各種研修会や健康・体力相談事業の開催などを行っています。

1000人を超える会員数を誇るクラブでは30を超えるスポーツ教室を擁しており、毎回多くの参加者が集まって体を動かしながらスポーツを楽しんでいます。