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[Case20]タグラグビーの特性を活かしながら「走る・投げる・跳ぶ」の基本を身につける

提供教材:タグラグビーセット

三豊市体育協会(香川県三豊市)

アクティブ・チャイルド・プログラムの一環として遊びの中で運動の面白さを感じさせたい

Case20 三豊市体育協会(香川県三豊市)

幼児期に身体を動かす遊びを通して「楽しさ」を知り、「運動が好き」という気持ちを育んでいこうと、アクティブ・チャイルド・プログラムの一環として運動教室を今年度から新たに開始した香川県・三豊市体育協会。夏休みに実施した短期運動教室が大好評で、秋にはボール遊びを中心とした屋外プログラムを行うと聞き、お邪魔しました。

Philosophy:「身体を動かすことが楽しい」から「運動が好き」という気持ちを幼児期から育みたい

「身体を動かすこと、外で遊ぶことがとにかく楽しい! と感じる子どもを少しでも多く増やしたいのです」と三豊市体育協会・会長の佐藤晌一さん。ゲームやテレビに少子化などの要因で外遊びの機会が減っている中、香川県の子どもたちの体力・運動能力は、厳しい状況にあり、しかも小学生の1割くらいが生活習慣病予備軍と診断されているそうです。

最近は、積極的に運動する子どもと、そうでない子との二極化が進んでいます。神経系の発達が著しい幼児期は、外遊びなどで体を動かすことの楽しさを伝えることで「運動が好き」という気持ちが育まれるのに最適な時期であると言われており、その年齢の子どもたちの運動促進には保護者の協力が必要であることから、三豊市体育協会では、スポーツ少年団の入り口として幼児や小学生低学年児を対象に、アクティブ・チャイルド・プログラムの一環として「走る」「投げる」「跳ぶ」など多様な動きを経験し、親子体操を含む運動教室を今年度から新たにスタート。 そのコーチ役として抜擢されたのが、幼・小・中で体育の教員や保育士の経験を経て香川の子どもの体力向上のための講座などで長年の実績のある澤 宜英さんです。

Plan: 楽しそうなタグラグビーに挑戦!

そんな折に、今回の教材提供の募集を知り、楽しそうなスポーツであり、運動教室のメニュー多様化に結びつけられればと、タグラグビーセットに申請。当選を受けて、夏休みの期間中に開催した短期運動教室のボール遊びのひとつとしてタグラグビーを織り込んだと言います。幼児コース・低学年コースに分かれ、ボールを使った遊びの他に親子体操やマット、跳び箱、プールなど多彩なメニューを実施したそうですが、参加者のアンケートによると、タグラグビーへの人気は高く「この地域ではタグラグビーはまだまだ馴染みがなく、新しい遊びとして、誰もが楽しめました。子どもが大好きな鬼ごっこの要素もあるし、楕円形のボールはどこに跳んで行くか予想がつかないので、ボールを追いかけているうちに楽しくたくさん身体が動かせるし、子どもたちは大喜びでした」と佐藤会長。

Do: 遊びながらタグラグビーの特徴が自然に身に付く工夫

夏の短期教室が好評だったことを受け、11月には屋外の芝生グランドで裸足でボール遊びをする教室が開かれました。お伺いした回では、足や指の運動を始め、リズム良く身体をほぐしたら、早速タグラグビーに着手。

(1)金魚のフン競争:3〜4人のグループに分かれて一列に並びます。「みんな、金魚のフンって見たことある?」と澤コーチ。グループ先頭の子が金魚となりボールを持って走ります。その後ろを同じチームの子がくっついて走っていきます。目標を回って帰ってくるとボールを後ろに手渡しして金魚交代です。走る道中に仕掛け(コーチの股の下をくぐったり、四つん這いになった背中を乗り越えたり)を設け、多様な動きを取り入れるのがポイントです。

(2)一番後ろがゴー!:続いてのゲームは金魚だけがボールを持って走っていきます。目標を回って(この道中にも仕掛けを用意)、グループ先頭の子へボールを渡します(手渡し・パス・キックなど、渡し方にも工夫を)。先頭がキャッチしたらすぐ後ろの子に渡し、一番後ろまでボールを回したら、その最後尾の子がボールを持って走っていくリレー形式で、競わせて遊びます。

(3)宝(ボール)運びゲーム:今度は全員がタグをつけて、タグ取り役の鬼(始めはコーチが担う)を横一列に配置します。鬼にタグを取られないようにラインを突破して宝(ボール)を運ばせます。一人で運んだり、チームみんなが宝を一つずつ持って運んだり、さらに一つの宝をチーム全員で協力して運んだりと、運び方にバリエーションを持たせて、何回も繰り返し運びます。

(4)タグラグビーをやってみる:上記のゲームには、タグラグビーの特性が取り入れられており、タグラグビーに必要な動きの習得に自然と繋がっていきます。小学生低学年コースの子どもたちは、大人にサポートしてもらいながらも、タグラグビーの試合を楽しんでいました。

みんなが楽しく参加できるよう状況に応じ創意工夫が施されていました(番号は本文中に対応)

Check: 多彩な運動の組み合わせが楽しめるタグラグビー

「タグを取ったり取られないために身体をかわしたり、ボールを抱えて走ったり、パスしたりと変化に富んだ動きが飽きさせませんし、児童や低学年の子どもたちにとって、仲間と一緒に身体を動かして遊ぶにはタグラグビーはうってつけな教材だと思います。こうした運動遊びを通じてスポーツに興味をもち、ゆくゆくはスポーツ少年団に加入してくれると最高ですね」と顔をほころばす佐藤会長。

Action: 目新しいタグラグビーをより多くの子どもたちに

「身体の接触が少なく子どもが安心して楽しめること、また、みんなが活躍できるチャンスがあること、さらに仲間と協力してボールを運ぶことなど、タグラグビーの競技特性や理念に大いに賛同しています。もっと多くの子どもたちに伝えて普及していくと楽しいでしょうね。ボールの大きさやタグの着脱を工夫できるとより多くの年代に見合った楽しみ方ができると思います」と澤コーチ。

身体の発達段階にある幼少期には、一つの種目に限って取り組んで行くことよりも、多様な運動を身体を動かして遊ぶことで、楽しさを知り、運動が好きになることが重要と言われています。当財団でも「走る・投げる・跳ぶ」をバランスよく取り入れたタグラグビーに楽しく取り組めるよう、指導ノウハウについて、今後追究して行きたいと思います。

(2017年11月取材)