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[Case12]丈夫な身体づくりのため、多種多彩な外遊びの時間を大切に

提供教材:サッカーボール

社会福祉法人愛育会 西方保育園(静岡県菊川市)

鉄棒・登り棒・竹馬・探検ごっこ…身体を楽しく動かす取り組みの一つにサッカーでボール遊び

Case12 社会福祉法人愛育会 西方保育園(静岡県菊川市)

夏はプール遊びに冬はマラソン。鉄棒や登り棒、竹馬などの遊びに近隣の山の探検などなど。豊かな自然に恵まれた地域特性を活かしながら、天気がよければ外に出て運動遊びを行なっているという西方保育園の子どもたち。身体を動かす遊びのひとつとして、サッカーボールが自由に活用されている様子をうかがいました。

Philosophy: 外遊びで身体を鍛え、努力し達成する喜びを得る

「英会話や音楽、絵画といったお勉強ごとはちょっと……ですけれど、元気の良さ、身体を動かすことにかけては、ぴか一の自信があります。普段から野山を駆け回っていますからね」と豪快に笑うのは西方保育園の飛田正彦園長先生。子どもたちの丈夫な身体づくりのため、食育活動や身体全体をバランスよく使う外遊びに積極的に取り組んでいます。天気がいい日には、みんなで散歩に出かけてしまうので、園内から子どもたちの声が消えるのだとか。

西方保育園では、子どもの成長を1本の木になぞらえ、それを育む光となり水となって見守り支えていく保育をめざし、「何を教えるか」よりも「どのように教えるか」を大切にしています。中でもチャレンジする心意気を重視しており、「とりあえず何でもやってみる。最初からあきらめさせません」と飛田園長先生。できない時、失敗した時も前向きに葛藤し立ち上がらせる経験を積ませて、自信を持たせるのだそうです。

そのひとつが「やまんば山への探検」です。近くの丘陵地をやまんばが住む山に見立て、やまんばの住処で紐を蝶々結びして来ないとやまんばに取って食われてしまうというストーリー仕立ての探検ごっこ。様子をビデオで拝見しましたが、草木が生い茂り大人が登るにも急な崖を泥だらけになりながら両手両足を目一杯使い子どもたちが懸命に掛け上がっていました。しかも崖下の薮の中には、やまんばが隠れていて、子どもたちを追い立てる演出も。飛田園長先生によれば「探検の前には、坂道を駆け上れるよう、のぼり棒や逆上がり、うんていの練習をする」そうで、トレーニングの形をとらず遊びに乗じて自然と体力向上に結びつく工夫が施されているのです。

Plan: 色々な遊び方が可能なサッカーボール

そんな遊びを通じた身体づくりの一環に役立てたいと申し込んだのが、本財団の教材提供。「今年はサッカーワールドカップもありましたし、サッカーっぽいことはもちろんドッジボールなど、蹴ったり転がしたり投げたり、子どもたちの柔軟な発想に任せて自由に遊べればいいなと軽い気持ちで申し込んだのです。ところが抽選に当たった静岡県内の団体はうちの園だけだったと聞いて、正直驚いています」と飛田園長先生。

Do: 初めてとは思えないサッカー教室

取材にお邪魔した日は、年長児を対象としたジュビロ磐田普及部コーチによる「Jリーグ・アカデミー ジュビロサッカー巡回教室」が行なわれていました。あいにく雨のため室内での開催でしたが、サッカーボールを使った準備運動から始まって、ドリブルにシュート練習、そして最後は男女分かれての試合までと充実した内容。キーパーなしで始めた対戦では、「こっちのスペースが空いているよ」「もう少しでゴール、最後までボールをちゃんと見てね」など、コーチの的確なアドバイスもあって、なかなかの接戦。途中からゴールを守る役割に徹する子どもが出て来たり、自然と互いに声を掛け合ったり、わずかな試合時間の合間にもどんどん工夫し上達していく姿が印象的。特に男児のゲームでは、ボールを激しく奪い合ったり、ゴール前で身体を張った攻防が続くなど、まるで日頃からサッカーに慣れ親しんだ子どもたちのような動きを見せます。そしてゴールを決めるたびコーチの差し出す手にハイタッチし、全身で喜びを表していました。

「普段は自由にボール遊びしているだけですので、コーチにボールの使い方を教わって本当に楽しそう。さすがはコーチ、教え方が本当に上手い!子どもたちのやり方を見て、できるレベルを把握した上で的確に指導していますね」と室内のスペースでは物足りなさそうに全力でサッカーボールを追いかける園児たちに飛田園長は目を細めます。

Check: 家庭の育児支援に結びつく保育園での出来事

サッカー教室のコーチから「シュート練習では、回数を重ねるごとに力強いキックが飛び出すなど、普段から裸足で生活していることもあってか、体のバランスを崩すことなくみなさんとても上手ですね」と評価されるほどの子どもたちの様子に、飛田園長は「月に2度、外から指導者を招いて運動遊びを行なう体育教室も開いているのですが、その先生からも身体の動きがいいと褒められますね。これも日頃の外遊びの成果でしょうか」とご満悦の様子。そして「今日のサッカー教室がどれほど楽しかったのか、子どもたちが家に帰って親御さんに話すことで、近くの公園でサッカーしたり、サッカー観戦に出かけるなど、親子で一緒に遊ぶきっかけになるといいなと期待しています。子どもを育てるのはやはり家庭です。仕事などで大変なことは重々理解していますが、子育て期間は本当に短い。うちの園では親御さんに参加いただく行事を毎月1回程度設けるなど、なるべく育児に関われるような環境づくりも心がけているんです」と続けました。

Action: 教材提供や教室開催がサッカーへの興味喚起のきっかけに

「今回年長さんが教わっている姿を年中さんがうらやましそうに見ていたので、機会があればぜひまたサッカー教室を行ないたい。でも園としては、何かの競技に特化するのではなく、バランスよく身体全体を使う遊びのひとつとしてサッカーを取り入れたいですね。せっかく自然に恵まれた地域でもありますし、基本は外遊びです」と飛田園長先生。

運動遊びで鍛えた子どもたちだからこそ、今回の教材提供やサッカー教室がきっかけとなってサッカーに面白さを感じて興味を持ち、「サッカーをしよう!」とサッカーボールを持ち出してくる子どもたちが増えることを願っています。

(2014年12月取材)