提供教材:ボッチャボールセット
岐阜県多治見市立笠原小学校(岐阜県多治見市)
![[Case28]共生への第一歩、ボッチャが叶える一体感 〜義務教育学校への移行を見据えて〜](https://www.ymfs.jp/cms/wp-content/uploads/2026/03/ymfs_supply_case28_01-1024x682.jpg)
当財団の「2025年度スポーツ教材の提供」にて、ボッチャボールセットの提供を受けた多治見市立笠原小学校。校長先生自らが申請に携わられた経緯もあり、一部の学年・クラスに留まらず、全校で積極的に教材活用が進められています。3年生の体育と「パラスポーツクラブ」でのボッチャの取り組みを見学し、異なる学年が一緒に楽しむための工夫についてお話を伺いました。
新校舎建設やコロナ禍の影響を受け
身体を動かす機会が少ない子どもたち。
異学年が一緒に楽しめるパラスポーツを通じ
“共生”を学ぶ
2024年に創立150周年を迎えた多治見市立笠原小学校は、2026年春、小中学校の統合により、1年生から9年生(中学3年生)までが共に学ぶ「義務教育学校」として新たな一歩を踏み出します。同校は「自立・共生・創造」を教育目標に掲げており、これまでも「共生」の実践として、高学年を中心に車いすバスケットボールの実施や、2025年春には学校のクラブ活動として「パラスポーツクラブ」を発足させるなど、障がい者スポーツを通じた学びを大切にしてきました。
現在、児童たちは中学校の校庭に建てられた仮設校舎で授業を受けているため遊具が少なく、体を動かす機会が限られています。また、今の6年生は入学式後の学校生活のスタートが6月にずれ込むなど、まさにコロナ禍の影響を大きく受けた世代でもあり、児童全体の運動の「量」と「質」の不足が大きな課題です。
こうした状況の中、校長の加知昌彦先生は、限られたスペースでも誰もが手軽に楽しめるパラスポーツ「ボッチャ」を通じ、「下級生から上級生までがつながる学校」を目指したいとの願いを込めて、今回の教材提供に応募したと言います。
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ボッチャの存在認知向上と自発的に楽しめる環境づくり
笠原小学校では、まずはボッチャの認知度を高め、興味・関心をもってもらうために「ボッチャボールセット」が当財団より寄贈されたことを昼の放送で全校児童に案内しました。同時に、子どもたちが登下校時に必ず通る職員室前に、メジャーリーグの大谷翔平選手から贈られた野球グラブなどと並べて、「ボッチャボールセット」を展示。競技内容を説明する資料も添えて、子どもたちの興味を喚起しました。
「『ボッチャというパラスポーツの道具が学校にあるんだ』と子どもたちが認識してくれるだけでも、教材提供を受けた意義は大きいと考えています」と加知校長は語ります。
さらに、より多くの児童が同時に楽しめるよう「ボッチャボールセット」を追加購入したほか、通常ルールではジャックボール(目標球)との距離を測る必要があるなど、子どもにとってやや複雑で試合の間延びにつながる点を踏まえ、ルールの簡略化とテンポアップを目的に「ターゲットマット」も学校予算で導入。加えて、学年ごとに自ら点数計算ができる「得点シート」を作成し、競技に親しみやすい環境を整えたのです。
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ルールの簡易化で誰もが楽しくプレー
子どもたちが自発的に楽しめる環境を整えた上で、以下の3つの活動を展開しました。
❶全校ボッチャボール体験会の開催
会議室の机を動かすだけでコートをつくれる手軽さを活かし、ターゲットマットを用いた簡易ルールでのボッチャ体験会を昼休みに会議室にて実施。校内放送で「やってみたい子は誰でも大歓迎」と呼びかけたところ、前々からの展示効果もあり、多くの児童が集まって、今までボッチャに触れたことのない児童にも体験してもらうことができました。
加知校長は「ボッチャボールに初めて触れる子がほとんどでしたが、ボールの独特の質感や重みが新鮮だったのか、『よし、やってみるぞ!』と物怖じせず夢中でプレーする姿が印象的でしたね。
また、異学年が混ざる中で、高学年児童が自然に低学年の子をサポートする、自然なやさしさも見受けられました。笠原の子どもたちは、保育園・幼稚園から中学校まで持ちs上がりで進学するので、こうした思いやりの気持ちがなおさら色濃く表れるのかもしれません。学年や学級の垣根を越えてみんなが笑顔になる様子を目にし、この競技のもつ魅力を再確認しました」と振り返ります。
さらに体験会では「パラスポーツクラブ」の児童が、投げられたボールを返したり、好投を讃えて盛り上げたり、後片付けを率先して行うなど、運営をサポートしてくれたそうです。
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❷パラスポーツクラブでの実施
パラスポーツを通じて障がいへの理解を深め、誰もが共生できる社会を目指す活動の一環として2025年春に発足したクラブ活動「パラスポーツクラブ」。4年生から6年生までの児童14名が所属し、車いすバスケットボールやシッティングバレーボールと並んで、ボッチャを行いました。
「月1回のペースで4年生から6年生までが合同で活動しています。パラスポーツは、児童にとって馴染みが薄い分、経験による実力差や学年ごとの体格差が出にくく、全員が対等にプレーできるのが魅力です。今回でボッチャは5回目くらいですが、シンプルなルールから始めて、段階的に本格化させていったこともあり、ゲームとして成立するのが、一番早かったですね。初回から試合を楽しめました」と顧問の大岩俊貴先生。また、体育館が使えない日に会議室で実施したこともあったそうで、場所を選ばない手軽さも他の競技にはないボッチャ独自の利点だと付け加えます。
クラブ活動では、ターゲットマットを使う簡易的なルールだけでなく、クラブ長の児童が自らルールを調べ、下級生にも分かりやすく教えるなどし、ジャックボール(目標球)を使った本格的なゲームも実施。
「ジャックボールを使うゲームは、相手のボールにぶつけて弾くといった戦略性があり、大逆転の可能性も秘めているため非常に盛り上がります。長時間の作戦タイムを設けているわけではありませんが、ボールの配置を見て『このボールに当てればジャックボールに近づくよ』などと一言アドバイスするだけで、子どもたちは自ら多くのことに気づき、互いに声を掛け合いながらプレーしていますね」(大岩先生)
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❸地域の「障がい者ボッチャ交流会」への参加
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学校内で実践したことを学校外や地域に広め確かめてみる意識を児童にもたせたいという教職員からの働きかけにより、11月に開催された「多治見市身体障がい者ボッチャ大会」に、パラスポーツクラブの児童とボッチャ体験会を通じて興味をもった有志が出場しました。小学生の参加は大会史上初で、「これほど盛り上がったことはない」と小学生の参加をみなさんが心から喜んでくださったそうです。
ジャックボールまでの距離を正確に測るなど、公式ルールに則った試合に初めて臨んだ子どもたちですが、児童が活躍できるよう教員による大会主催者との綿密な事前打ち合わせや、岐阜県身体障がい者福祉協会や多治見市役所文化・スポーツ課の皆さんの手厚いサポートのおかげで、競技としてのボッチャの奥深さを学んだと言います。同時に、「自分たちの参加が誰かの喜びになる」という自己肯定感を育む貴重な機会にもなったのです。
もともと笠原小学校のある笠原地区は、多治見市と合併する以前から、「笠原の子は笠原で育てる」という教育理念が息づいており、ボッチャは子どもと大人、障害のある方とない方を結ぶ地域の架け橋にもなったと言えそうです。
仲間意識を醸成する一体感と挑戦することの大切さへの気づき
学級や学年を問わず、誰もがボッチャに親しみやすい環境を整えたことで、身体的な差や運動の得意不得意に関わらず、「興味をもった全校児童が、スポーツの本質的な楽しさを仲間と分かち合うことができた」と加知校長は評価します。「ボッチャは激しい運動を伴う競技ではありません。しかし、一投ごとにチームで一喜一憂し、狙い通りにボールが収まった瞬間、周囲から歓声が湧き上がるこの一体感は、他のスポーツにも通じるものであり、日頃の学校生活における仲間づくりの土台に通じると思います」
また、未経験の競技であるボッチャに取り組むことは、「上手くできるか」という結果以上に、未知の事柄に対して「まずはやってみる」という喜びを見出し、「挑戦することの面白さ」を実感する機会にも繋がっているようです。
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児童・生徒会主体の活動へと発展を願う
ボッチャは省スペースでも実施可能ですが、これまでは仮設校舎という制約もあり、ターゲットマットを常設して「いつでもできる環境」を整えることは困難でした。今後、新校舎への移転に伴い活動スペースが確保され、用具を常設できるようになれば、気軽に取り組める機会がさらに増えると期待されます。創設したパラスポーツクラブの存続はまだ未定ですが、「ボッチャの面白さに気づき始めた子どもたちの意欲を削がぬよう、中学生も巻き込みながら、この先も持続可能な活動として根付かせていければ」と顧問の大岩先生。
一方、体育の授業におけるボッチャの活用については、低学年では「多様な動きをつくる運動遊び」の「的あて」や「転がし遊び」として、中学年では「ゲーム領域」の「的あてゲーム」や「ボール投げ運動」、「仲間と作戦を立てる活動」として、高学年では「ボール運動」の導入や戦術を重視した活動として考えられるものの、学習指導要領に盛り込まれていないスポーツであり、用具を準備する教員の負担や評価規準を考慮すると難しいようです。
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加知校長は「今後は義務教育学校としての特性を活かし、1年生から9年生までがボッチャを一緒に楽しみながら、仲間づくりや他者とより良いつながりを生み出していくことに期待しています。児童・生徒会が主体となって地域も巻き込んで大会を企画・運営し、子どもたちが自主的に『やってよかった』『もっとやりたい』と思えるような活動へと発展してほしいと願っています」とおっしゃっていました。
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パラスポーツクラブ・クラブ員の感想
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6年生・横井晶帆さん(クラブ長)
クラブ活動として、ボッチャをはじめ、車いすバスケットボールやシッティングバレーに取り組みました。いずれも初めて体験するスポーツだったので、非常に貴重な経験となりました。また、競技を通じて「公平に接すること」の大切さを学べた点も、大きな収穫でした。
ボッチャは、学年や障がいの有無を問わず誰もが参加でき、ルールも分かりやすく、非常にゲーム性が高いスポーツだと感じました。
地域のボッチャ大会にも参加しましたが、学校でのやり方とは異なり、本格的なルールのなかで障がいのある方や大人の方と一緒にプレーすることができ、とても楽しかったです。また機会があれば、ぜひ多様な人たちと一緒にボッチャを楽しみたいです。
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5年生・原 杏慈さん
パラスポーツクラブでは、みんなで協力して楽しく活動することができました。プレー中も「あと何点差で勝てるよ!」「最後までがんばろう!」と互いに声を掛け合い、一丸となって取り組めたことが良かったです。
3種目のパラスポーツを体験しましたが、ボッチャは、投球の瞬間にぐっと集中するのがとても楽しいです。狙った場所に投げるのはとても難しい分、思い通りのところに決まった時の喜びは言葉にできないほどでした。
学校を訪問して
笠原小学校では、ターゲットマットの準備や得点シートの作成といった環境整備に始まり、校内放送や展示による興味・関心の喚起、そして昼休みの体験会へと、児童がボッチャに親しめるよう段階的な工夫が凝らされていました。
私たちが「チャレンジ!ユニ★スポ(ユニバーサル・スポーツ)」として静岡県内で行っているボッチャ体験教室では、主に小学4年生以上を対象とすることが多いので、今年度は特に戦略的な駆け引きに重点を置いて実施してきました。しかし、今回拝見した3年生の体育の授業やパラスポーツクラブでのボッチャでは、小学1年生から6年生まで全校児童が共に楽しめることを重視し、ターゲットマットを活用して「シンプルに的の中心にボールを近づける」という根源的な楽しさに焦点を当てて取り組まれていました。
得点エリアが視覚的に明確なマットを使用することで、「あの場所に入れたい」という直感的な目標が生まれ、2点、3点と点数を競い合う中で自然と投球に工夫を凝らす姿も見られました。自分の投球だけでなく、相手のボールが枠に入るかドキドキしながら見守り、一喜一憂する姿からは、誰もが同じコートで真剣勝負を楽しめるボッチャ本来の醍醐味と一体感が強く感じられました。
途中、ある児童に「投げたい方向に中指を向けると上手く行くよ」とちょっとしたコツを伝えたところ、劇的に投球精度が上がり、「ありがとう」と感謝を伝えてくれる場面がありました。また先攻・後攻のどちらが有利かを話し合い、「後攻なら相手のボール位置を見て巻き返せる」「先攻なら後攻の人に押し込んでもらえる(不可抗力)を期待できる」といった、ルールを逆手に取った高度な視点をもつ児童もおり、シンプルな簡易ルールの中にも、ボッチャの本質的な面白さが確実に芽生えているようでした。
今後は、低学年は「投げる楽しさ」を重視した簡易ルール、高学年はジャックボールを用いた「戦略重視」のルールと、発達段階に応じて指導法を変えていくことで、ボッチャのもつ奥深さをより引き出していけるのではないかと感じました。
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事務局
(2026年2月取材)
