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[Case6]色々な種目を経験させたいとの想いから、新たな球技“タグラグビー”に挑戦

提供教材:タグラグビーセット

学校法人徳風学園 早苗幼稚園スポーツ教室(京都府八幡市)

発達段階に合わせた多彩なカリキュラムの採用で、子どもの心身育成を図る幼稚園主催のスポーツ教室

Case6 学校法人徳風学園 早苗幼稚園スポーツ教室(京都府八幡市)

身体を思いきり動かしてのびのび遊べる環境づくりを心掛けている学校法人徳風学園早苗幼稚園では、園児や近所の小学生を対象にスポーツ教室を開催。体力向上はもちろん、発想力、想像力、工夫する力を育むカリキュラムの一つとして、未知の領域ながらタグラグビーの採用に踏み切りました。

Philosophy: 遊びの中から色々な知識と経験を自発的に身に付けていく

「何事も“百聞は一見に如かず”です。経験が全て。とにかく色々なことを子どもたちに体験させたいのです」とお話くださるのは、京都府八幡市にある早苗幼稚園の成瀬晴久園長。“一人ひとりの個性を大切に、心身共に健やかで、たくましく生きる力を育てる”を教育・保育方針としている中で、特に重視しているのが“遊び”です。

「自由にのびのび遊ぶ子どもの姿は、見ていてほほ笑ましいものでしょう? 遊ぶことから自分で物事を考え、創意工夫するんです。子どもの発想力、想像力、工夫の凝らし方は、大人が考えている以上ですよ」

そのため早苗幼稚園では幼児期の子どもの発達段階を無視した知識の詰め込みや勉強ではなく、遊びを通じて想像力や集中力、個性や協調性を伸ばすような取り組みをしています。そしてその遊びの延長のひとつに位置づけているのがスポーツです。早苗幼稚園にはなんと専任の体育教師が常駐。身体をしっかり鍛えることで、健康維持と精神力を強化しているのです。

成瀬園長によれば、「毎年冬には2kmのマラソン大会を行っています。この大会に向けて体育館の中を走るのですが、1人で50周くらい走ってしまう子もいるくらい」なのだそうです。

Plan: 未知の競技だからこそ、子どもに体験させたい

このようにスポーツに精力的に取り組む早苗幼稚園では、専任の体育教師を常駐させるだけでなく、在園生や卒業した小学生などを対象にスポーツ教室を開いています。元々は器械体操を中心とした内容でしたが、現在は基礎体力の増進と運動能力の向上を目的に子どもたちの発展段階に応じて縄跳びやボール運動など、色々なカリキュラムを盛り込んでいます。

「スポーツ教室でさまざまな種目を経験させたいと考えている中で、タグラグビーは取り組んだことのない新しい種目。独特な形のボールは、敏捷性育成に役立てることができそうだと、ダメモトで教材提供に応募」(成瀬園長)されたのだそうです。

Do: 教本を参考に細かいことにとらわれずゲーム感覚で

「私自身、ラグビーやタグラグビーの経験が全くありません。でも、パスを前に出さず後方からのサポートを受けチーム一丸となって前に突き進みトライするラグビーの精神って素晴らしいと以前から感銘を受けていたんです。だから今回、新たな種目としてタグラグビーに取り組むにあたっては、自分が感じたラグビーの魅力を子どもたちに少しでも伝えたいと思っていました」と話すのは、早苗幼稚園の専任体育教師であり、スポーツ教室でも指導を務める水川暢介先生です。スポーツ教室では、園児クラスは年少・年中と年長の2つに分かれていますが、小学生は1〜6年生までが一緒にレッスンを受けています。その小学生クラスにて、まずはタグラグビーセットに入っていた教本を参考にしっぽ取り鬼ごっこから始めたそうです。

「最初はタグを取り合ったり、走りながら後ろの人にボールをパスさせたり、横一列に並んだ人の間をタグを取られないようすり抜けさせたり、ざっくりと遊び感覚で動作を繰り返し、身体で覚えてもらうようにしました」(水川先生)

今では攻撃と守備に分かれ、パスを回しながら相手方のゴールライン(敷き並べたマット)にトライするゲームが成り立つほどに上達。合間には「どこに走ったら抜け出しやすいかな」「タグを取られたとき、どこの誰にパスしたらいいか、またどこに立っていたらパスを受けやすいのか、周りをよく見てね」などと子ども自身に考えさせ、なるべく均等にパスが回るようなアドバイスが水川先生から送られ、子どもたちも互いに声を掛けあい工夫しながら活き活きと身体を動かしていました。

Check: 体格性別問わずみんなが一緒に楽しめる

タグラグビーを始めての手応えとして「小学生クラスは異なる学年の子どもが一緒に受けているのですが、まずは体格差、体力差に関わらず、1年生でも女の子でも、みんなが一緒に楽しめるところがいいですね。実はサッカーやポートボールなど別の種目ではこれまでそれほど活躍していなかった子が、タグラグビーでは驚くような動きを見せて活躍し、充実した表情を見せてくれる場面が何度もあるんです」と水川先生。さらに楽しみながら自然と運動量も増えるのだとか。

「今回年長クラスで、初めてタグラグビーに挑戦してみましたが、タグをめがけてダッシュしたり、ボールを持って走り回ったり、人をすり抜けようとして子どもなりに考えつつ機敏に動き回っていましたからね。さらに、みんなで協力しなければトライできないことから、自ずと協調性や相手を思いやる心もタグラグビーを通じて芽生えてきているのではないでしょうか」と水川先生は評価します。

Action: ルールを覚えてゲームの組立も

「小学生クラスでは、なんとかゲームらしい形になってきていますが、今はまだ、これまで体験したことのない遊びとして楽しむことを優先していますので、今後はタグラグビーのルールをもう少し理解浸透させ、ゲームの組立の面白さも習得させたいですね。さらにこのタグラグビーで養った協調性を活かすような、誰もが一緒にプレーできるキンボールにも挑戦してみたい」と水川先生。

周りに視線を送り声を掛け合い協力しあっている子どもたちの姿に、水川先生がラグビーに感じた魅力は、タグラグビーの実体験を通じて子どもたちに浸透しているように見えました。

(2012年12月取材)