中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2023年10月28日

2023年度 第17期生スポーツチャレンジ助成 第3回中間報告会を実施しました

2023年度 第17期生スポーツチャレンジ助成 第3回中間報告会を実施しました

10月28日(土)、2023年度第3回目の中間報告会を東京・日本青年館で開催しました。当日は、齋藤華南さん(フェンシング/エペ)、研究チャレンジャーの池上和さん、芝口翼さん、野々山隼弥さん、柳岡拓磨さんの5名が会場に、佐藤姫夏さん(トライアスロン)、名草慧さん(ハンググライダー)の2名がオンラインにて参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を振り返るとともに、下半期の活動計画について発表を行いました。

参加いただいた審査委員(敬称略・五十音順)

伊坂忠夫審査委員長、瀬戸邦弘委員、髙橋義雄委員、野口智博委員、増田和実委員

2023年度 第17期生スポーツチャレンジ助成 第3回中間報告会を実施しました
野々山隼弥(研究)
野々山隼弥(研究)

足関節内反捻挫(LAS:足首の捻挫)およびその7割が進行する慢性足関節不安定症(CAI)において、足首周りの感覚が適切に脳に伝達されないため、バランスを取る際に視覚情報に依存し、感覚運動循環システムに機能不全を抱えている。一方、小型だが強力なネオジム磁石で脳の活動を抑制する経頭蓋静地場刺激(tSMS)を用いると、視覚野の脳活動を抑制することが先行研究で分かっていることから、本研究では、LASやCAIで見られる視覚依存と運動循環システムの機能不全をtSMSにて改善する効果を明らかにする。予備実験では、tSMSの介入前後で、動的バランスに変化は見らなかったものの、実験の進め方や測定方法を確立することができた。今後、安全性に配慮しながら実験データを収集し、研究成果をとりまとめ、CAIを改善するリハビリテーションの確立に貢献したい。

池上和(研究)
池上和(研究)

疲労骨折が多いと言われる長距離選手。成長期の骨量獲得が、疲労骨折予防の鍵と言われているが、成長期アスリートに関する骨密度に関する研究が不足している。そこで本研究ではまず、競技種目に多少の偏りはあるものの、小学校4年生から中学3年生までのジュニア選手を対象に、男子228人、女子74人の骨密度や体組成を測定。加えて骨に影響を及ぼしそうな食事、睡眠などのアンケートを取得。骨密度の分布において、男子は競技別の特徴は見えてこなかったが、女子では長距離の骨密度が低い傾向に。また、男女ともに陸上競技では、標準体重に対する体重の割合が、エネルギー不足の指標に近い傾向が見受けられた。今後はサンプル競技種目数を増やし、解析を進めながらリスク因子や競技特性を探る。さらに対象を絞って食事、活動量など追加調査も検討。

芝口翼(研究)
芝口翼(研究)

肉離れなどの骨格筋損傷において、従来禁忌とされる急性期からの温熱刺激が、アイシングよりも筋再生を促進させるのではないかとの見通しから、ラットを使った実験を実施。まずは遅筋のヒラメ筋と速筋の足底筋に筋損傷を起こし、単回の温熱刺激の影響を検証。ヒラメ筋では、線維化を抑制する傾向が見られたものの、足底筋においては、温熱刺激を加えた方が、筋再生が抑制されてしまうという仮説と異なる現象が現れた。そこで刺激時の温度条件を下げて再検証するも、結果に変化は現れなかった。今後は、温度ではなく温熱刺激を開始する時期や実施するタイミングによる影響、筋種差が生じるメカニズムの追求、そして痛みへの検証を進めていきたい。

齋藤華南(フェンシング/エペ)
齋藤華南(フェンシング/エペ)

上期は4つの課題に取り組んだ。まず「アタック時の上半身のブレ」を修正しようと、体幹トレーニングや後ろ足のバランス感覚トレーニングなどを行い、攻撃で踏み込んだ際の安定性を向上させた。2つ目は「剣操作のコンパクト化とポジションの改善」で、対人レッスンを毎日実施し、最短距離でのアタックを目指した。3つ目は「強み技の取得」。足突きを強みにすべく、正確性が求められる技のため対人レッスンと実践練習を重ねた。最後に「メンタルコントロール」。オンライン訪問時のアドバイスを生かして、専門の心理サポートを受けた。
これからの課題への取り組みは、相手の力を利用して突けるようになること、相手のアタックに余裕を持って対処できるようにすること、また足突きの精度を上げバリエーションを増やすこと、さらに視点の中心を剣先から相手の肩へと変えることで、身体全体を見ていくようにしたい。

柳岡拓磨(研究)
柳岡拓磨(研究)

身体冷却効果に関する個人差(体格差)研究のため、身体が暑さに慣れてしまっている環境下では実験できないことから、上期は予備試験による実験方法の修正と確定までを実施した。予備試験では、暑熱環境下でサッカーの試合を再現しようと、気温33度・相対湿度53%の室内にて約40分間の運動を15分間の休憩を挟んで2回実施。15分の休憩中に常温の水を摂取した場合と氷と水を混ぜた飲料(アイススラリー)を摂取した場合のパフォーマンスや深部体温などを計測。プロトコルの再現性と実際のサッカーの試合状況との妥当性を確認することができた。しかし設定容量のアイススラリーを摂取できなかったことから、アイススラリーの作り方と摂取量を改善して本実験を行いたい。

佐藤姫夏(トライアスロン)
佐藤姫夏(トライアスロン)

3月に海外大会派遣基準タイムをクリアし、5月にU23世界アクアスロン選手権で8位入賞。以降、U23国内選手権で3位表彰台、U23アジア選手権では初のファイトマネー獲得など、結果が付いてくるようになった。以前は第4の競技とも称されるトランジション(種目間の移行)の失敗で負けてしまうこともあったが、細かい動作を見直し、練習してきたことで、トランジションがキーポイントになって勝つこともあり「塵も積もれば山となる」を実感。
9月もレベルの高い大会を経験するが、ハプニングに見舞われたり、準備不足でパフォーマンスを発揮できずもどかしい結果に。しかしそれらを10月以降のレースに生かしていきたい。また今年は海外選手とコミュニケーションを深めることができた。
昨年12月に鎖骨を骨折。ピンチをチャンスに変えようとポジティブに取り組んできた結果、タフな精神が身につき、競技本来の楽しさも取り戻した。2028年のロサンゼルス五輪に向けて世界ランキングを上げていくため、1戦1戦、目的と目標を持って自分らしく挑んでいきたい。

名草慧(ハンググライダー)
名草慧(ハンググライダー)

5月にイタリアチャンピオンシップに参加し、総合12位。イタリアはハンググライダー最強国であり、その強豪選手たちから色々と学びを得て成長の機会とした。その後、予定していた2つの大会がキャンセルとなり、フランスとスイスへ遠征。また、自己最高の世界ランキング6位に到達し、世界チャンピオンへの道に着実に近づいている実感が湧いた。7月にはスペイン選手権で総合6位入賞するが、8月、北マケドニアでの世界選手権では67位と競技生活最大の挫折を味わう。しかし気持ちを切り替えて臨んだブリティッシュチャンピオンシップでは準優勝。目標としている2025年の世界選手権の開催地であり、良いイメージを持つことができた。その後、ヨーロッパ遠征からメキシコに戻り、テストフライトとトレーニングを再開。初めて瞑想を導入した。今後の課題として、安定した精神状態の維持、集団での飛び方の向上、体重増量に取り組む。