中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2023年10月29日

2023年度 第17期生スポーツチャレンジ助成 第4回中間報告会を実施しました

2023年度 第17期生スポーツチャレンジ助成 第4回中間報告会を実施しました

10月29日(日)、2023年度第4回目の中間報告会を東京・日本青年館で開催しました。当日は、久保田真知子さん(スキージャンプ)、研究チャレンジャーの加地智哉さん、小宮諒さん、瀬戸川将さん、成瀬正俊さん、吉沢直さんの6名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を振り返るとともに、下半期の活動計画について発表を行いました。

参加いただいた審査委員(敬称略・五十音順)

伊坂忠夫審査委員長、片山敬章委員、瀬戸邦弘委員、髙橋義雄委員、増田和実委員、村上晴香委員、吉岡伸輔委員

2023年度 第17期生スポーツチャレンジ助成 第4回中間報告会を実施しました
小宮諒(研究)
小宮諒(研究)

Virtual realityを利用したビジョントレーニングの効果検証を行うため、まず介入動画を撮影した。360度撮影可能なカメラを頭に装着し、バレーボールの試合でスパイクを受ける場面を4種類撮影。バレーボール未経験者を対象に、座っているだけの安静条件、介入動画を5分見る場合、5分介入を2回行う場合(10分介入)の3条件で、眼球運動、視機能(瞬間視・深視力)、身体機能を評価した。結果、10分介入では、局所的でなく間接視野で見るようになっていた。変化が顕著だったのは瞬間視。介入動画を見た方が、速くなる傾向が見て取れた。深視力と全身反応時間については変化が感じられなかった。介入動画を見ることで効果が表れそうな項目とそうでないものとがわかってきた。今後、即時効果の検証数を増やすとともに長期介入効果の検証・解析を行いたい。

加地智哉(研究)
加地智哉(研究)

機械学習とデジタルヒューマン技術を活用し水泳運動の計測/解析システムの開発にチャレンジしている。水中での運動解析は難しく、上期においては、水中でも浸水の心配が無く、輝度を上げるテープを貼ったマーカーを調達するなど、実験準備を行った。また実験時に泳者に装着するマーカや慣性センサの個数を減らせるようAIを使用する予定であり、解析用プログラム作成のため、陸上で水泳の模擬動作を計測。さらに水中での動作計測実験と身体の形状を計測し、試しに1名の身体形状データにモーションキャプチャのデータを合わせてモデル学習を行った。今後は、計測したデータのレベリングを進めながら、平行して学習モデルの調整やプログラムの修正を行う。

久保田真知子(スキージャンプ)
久保田真知子(スキージャンプ)

2026年ミラノオリンピックに出場、表彰台獲得に向けチャレンジ中。今シーズンはワールドカップに出場するチームに定着しようと、ワールドカップに出場可能なポイント獲得のため、夏季は、国内戦で優勝するとともに、ワールドカップと同等試合であるサマーグランプリに参戦。そして冬季は、比較的チャンスが多い国内のワールドカップ計4試合でポイント獲得を目標に臨んだ。
4-6月は通常のトレーニングに加えて、週2回トレーナーとリモートにて体幹、臀部の強化、そして怪我予防のトレーニングを行い、さらに週末は実践練習を実施。しかし6月中旬、ジャンプトレーニング中に転倒して左膝を負傷してしまった。現在、日常生活は可能になり、来夏の競技再開に向けて、リハビリ中心にトレーナーとのリモートトレーニングを予定。さらに地元の大会運営サポートや他競技の観戦など、飛べない今だからこそできる色々なことに挑戦し、新たな経験や成果を得たいと考えている。

瀬戸川将(研究)
瀬戸川将(研究)

スポーツのスキル習熟において重要な大脳基底核の線条体は、複数の亜領域からなり、その各機能は明らかになってきたものの、学習時に複数の亜核がどう機能しているのかは、時間的(安静時や睡眠時など訓練期間以外も学習が進む)、空間的(スキル学習には亜領域が複合的に関与)問題により未だ謎である。そこでネズミに匂い弁別課題を与え、その間の神経細胞の活動を、高密度神経電極を用いて記録することにした。匂い弁別課題は、常に同じ匂いを2種、毎回新しい匂いを2種嗅がせて行動選択を迫るもので、学習済みスキルに関わる神経細胞と新規学習に関わるものとを同時に捉えることが可能である。また従来、記録装置と電極をつなぐケーブルが制約となって、2、3時間で実験を終えるのが一般的だったが、今回簡単・低コストな仕組みで回避することに成功し、45時間記録することが可能となった。今後、入手困難であった高密度神経電極を購入し、神経活動の記録をさらに進めていく。

吉沢直(研究)
吉沢直(研究)

人工雪施設の状況を把握すべく、研究対象地域のスキー場への聞き取りを行ったが、夏場の電話対応は40%ほどであった。また人工雪設備は、カナダやフランス等の海外と異なり申請義務がないため、正確な設置時期やタイプ、型番がわからないケースが多かった。一方で、スキー場に設置されている索道(リフト)リストと、Googleマップで調べたその乗車人数からスキー場の規模を割り出せたので、今後人工雪施設に関するデータがそろえば、分析がすすめられる準備が整った。とはいえ、スキー場に人工雪施設の開示義務がない上に、開示するメリットもなく、さらに地球温暖化を背景に積雪が減っている状況下でさらに電力を使って雪を人工的に作ることへの懸念から協力を得るのが難しくなっている。データが予定通りに集まらなかった場合の学術的意義や新規性を見直すことも視野に、スキーシーズンとなるこの先、研究対象のスキー場に赴き、信頼を構築してどこまでデータを出してもらえるかが、本チャレンジ推進の鍵だと考えている。

成瀬正俊(研究)
成瀬正俊(研究)

間欠的スプリント能力は、低酸素トレーニングで向上すると言われるが、実際に高地に滞在したり、低酸素施設を利用してトレーニングを行えるアスリートは一部に過ぎない。そこで運動中に息を止め低酸素状態を体内に誘発する、自発的低換気という処方に注目。自発的低換気を利用して運動することで体内に低酸素状態が誘発されるか、また自発的低換気を利用した際にトレーニング効果が落ちないかを確認しつつ、最適な運動プロトコルを探るため、通常呼吸と自発的低換気の条件下でワットバイクを全力で漕ぐ予備実験を実施した。結果、自発的低換気にて血中・筋中ともに体内に低酸素状態を作り出すことに成功。発揮パワーにおいても通常呼吸時と変わらずに実施できることが明らかとなった。本実験では、低酸素の条件を追加し、自発的低換気の生理反応をより包括的に解明したい。