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【対談】能瀬さやか×野口みずき

【対談】能瀬さやか×野口みずき/スポーツを『素晴らしいもの』にするために

自分の身体を理解し、正常な状態を知ってほしい

能瀬機内食を食べて座っているだけでは体重が増えるのは当たり前ですよね。特に若い10代の選手にとって指導者は絶対だから、そう言われると自分の管理が悪いと思ったり食べることを制限してしまう。100g増えただけでも、それが怖くて、最終的に摂食障害を起こしてしまったりとか。

野口私のチームでも一応BMI値を計ったりはしていましたけど、それはあくまでも参考値として見るくらいで。ベテランになってくると、筋肉のつき方を見れば、数字じゃなくてもわかりますから。

YMFS能瀬先生の女性アスリートにまつわるお話から、向き合うべき課題は多いと感じていました。今日、野口さんにお会いしてお話をうかがっていると、解決の糸口が見えてくるような気がします。

能瀬やっぱり最終的に頼りになるのは自分の感覚ですよね。

【対談】能瀬さやか×野口みずき

野口私も周囲の話を聞いていると、マラソンなんてやっていて大丈夫だったのかな?と思ったこともありましたよ、笑。でも走るってことはもうずっと習慣的にやってきたことなので、身体がそういうふうにできているんです。走ることは全然苦だとは思わないし、毎朝歯磨きするのと同じ感覚でやれることですから。

能瀬すごいなあ!野口さんは今も走ってらっしゃいますもんね

野口私はアテネ五輪の頃、体脂肪率が7%だったんですが、今は27%ぐらいになっちゃって。引退して1年ほど走るのをやめていた時期もあったんですが、ある日ちょっと思うところがあってもう一度走り始めたんです。そうすると、汗がどーっと出てきて、あー気持ちいい!って。いろいろ解決すべき問題点はあるとは思いますが、やっぱりスポーツっていいものだと思うんですよね。

【対談】能瀬さやか×野口みずき

能瀬そうなんですよね、スポーツって本来は素晴らしいもの、健康維持・増進、疾病予防にもつながるものなんですよ。だからこそ、若いうちから自分の身体を理解し、なにが正常な状態なのかを知ってほしいと思うんです。正常がわからないと、異常にも気付けないですから。

野口今日こうやってお話しさせていただいて、改めて思うんですが、能瀬先生の素晴らしいところは、その研究の成果はもちろんなのですが、とにかくアスリートの側としては、すごく信頼できるところだと思うんです。ただ研究した数字だけを押し付けるのではなくて、こうしたほうがいいよ、でもあなたの考えも大事だよって、相手に考えるスペースを与えてくれる、そういうのってとっても大切だと思うんです。

YMFSたしかに能瀬先生のお話には、いつも聞き入ってしまいます、笑

野口そしてすごく楽しいです!能瀬先生のような方々の人の輪がもっともっと広がってほしいな、そう願ってます。

能瀬ありがとうございます。これからも精進してがんばりますね、笑。

YMFS本日はありがとうございました。

【対談】能瀬さやか×野口みずき

<了>

写真=近藤 篤 Photograph by Atsushi Kondo

野口みずき

野口みずき

MIZUKI NOGUCHI

1978年7月3日 三重県生まれ。
三重県立宇治山田商業高校を経て、実業団チーム、ワコールへ入社、その後、グローバリー、シスメックスに在籍。
1999年、世界ハーフマラソン選手権で銀メダル獲得。その後もハーフマラソンを中心に好成績を残し、その目覚ましい活躍ぶりから「ハーフの女王」とも呼ばれた。2002年には名古屋国際女子マラソンで、フルマラソンに初挑戦、初優勝。2003年パリ世界陸上で銀メダル、2004年アテネ五輪では金メダルを獲得した。2005年には、ベルリンマラソンで2時間19分12秒の日本記録、アジア記録を樹立。2016年に現役を退き、現在は、岩谷産業陸上競技部でアドバイザーを務める。東京2025世界陸上実行委員会理事。