たまたま教える対象の子供たちに障害があっただけ
伊藤タカちゃんの存在や成し遂げたことは、子供たちにとっては本当に良い刺激になりますよね。あんなふうになりたい、僕も、私も、メダルをとりたい、憧れる存在があるってとても大事なことですから。今、うちのスクールに来ている身体障害の男の子や女の子もタカちゃんの東京大会での活躍を見て、僕も頑張ったらこういう大会に出られるようになるの?って聞いてきますからね。私はまだ泳げなかったタカちゃんも知ってますから、そんな話もして、だからあなただってできるかも知れないわよと励ましてあげることもできますし。
YMFS30年という時間の中で、障害者スポーツ、パラスポーツを取り巻く環境も変化してきたと思いますが、今回の東京でのパラリンピックを経て、それぞれの世界で大きな変化は感じられますか?
鈴木そこは変わりましたね。例えば僕は今までパラ水泳の選手として認識されてきたのですが、最近はパラの、ではなく、水泳選手の鈴木さんですよね、って声をかけてもらえることが多くなりましたね。
伊藤障害っていう言葉がパラっていう言葉で置き換えられるようになった、という印象はすごくあって、それはとても喜ばしい変化だなと思っています。それと、私は、彼がまだ高校生の時、テレビ局に取材していただいたことがあるのですが、その時は福祉関係のテーマとして放映されたんですね。その同じテレビ局に最近また取材してもらったのですが、今はちゃんと一般のテーマとして放映してくれます。そういうこともすごく大きな変化かな。
YMFS伊藤さんはよくそうおっしゃいますよね。私のやってきたことは福祉ではないんだと。
伊藤そうなんです。私がやってきたのは子供たちに水泳を教えること、水の中の楽しさを教えることなんです。そしてたまたま教える対象の子供たちに障害があって、一人ひとりを見ながら、それぞれの課題をどう解決するかにエネルギーを注いできただけなんですね。そんな大勢の子供たちの中に、タカちゃんもいたんです。
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