中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2020年10月25日

2020年度 第14期生スポーツチャレンジ助成 第4回中間報告会を実施しました

2020年度 第14期生スポーツチャレンジ助成 第4回中間報告会を実施しました

10月25日(日)、2020年度第4回目の中間報告会を開催しました。今回は新型コロナウイルス感染拡大防止を目的にリモートでの実施となりましたが、当日は体験チャレンジャーの山本草太さん(フィギュアスケート)、太田楓さん(近代五種)、村田希空さん(スノーボード・アルペン)、研究チャレンジャーの白井隆長さん、高橋克毅さん、田名辺陽子さん、中島大貴さん、土居裕和さん、増田一太さん、吉原利典さんの10名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を報告するとともに、下半期の活動計画について発表を行いました。

参加いただいた審査委員(敬称略・五十音順)

浅見俊雄審査委員長、伊坂忠夫委員、川上泰雄委員、北川薫委員、定本朋子委員、野口智博委員、福永哲夫委員、増田和実委員

白井隆長(研究)
白井隆長(研究)

たとえば、レジスタンス運動と持久性運動、高強度インターバル運動など、異なる二つの運動を組み合わせたコンカレントトレーニングを行う場合、どのような実施順序で行うと効果的なのかを明らかにするのが私のチャレンジ。すでに私はこれまでの研究で、レジスタンス運動と持久性運動の組み合わせの場合、レジスタンス運動を先に行うことが効果的であるという報告を行っている。今回はそれを一歩進めたいと考えている。すでに実験を開始しており、レジスタンス運動と高強度インターバル運動という実施順序は、肥大系に影響を及ぼすという傾向をつかんでいる。下半期はさらに実験を加速させていきたい。

高橋克毅(研究)
高橋克毅(研究)

私のチャレンジテーマは「拡散テンソル画像を用いた筋形状測定法の確立」。筋の3次元形状を高い空間精度で測定可能な方法論を築きたいと考えている。当初の計画では、第1四半期で装置の調整と画像の視覚評価を終え、第2四半期では測定精度を検証する予定だった。しかしコロナの影響でMRI測定を予定通り行えず、大幅に遅れてしまっている。将来的には、本研究で確立した測定法を用いて、アスリートの筋形状の特徴や、競技パフォーマンスとの関係、可塑性の解明などにつなげていきたい。

山本草太(フィギュアスケート)
山本草太(フィギュアスケート)

春先から全国のスケートリンクが閉鎖となり、約2か月間、氷上練習がまったくできなかった。この状況がいつまで続くのか不安ばかりが募ったが、世界中のアスリートが同じ思いをしているのだと思い直し、オフアイスの取り組みに力を入れることにした。自宅での単独トレーニングに加え、国際スケート連盟や日本スケート連盟が配信するオンラインのトレーニングも活用した。世界中のスケーターとのリアルタイムのトレーニングは、同じ目標を持つ者同士ということもあり、前向きな気持ちにさせてくれた。6月からは氷上トレーニングが可能になり、4回転ジャンプの練習を再開した。少しずつ感触が戻ってきて、9月には新プログラムの中での成功確率もずいぶん高まった。これからシーズンが本格化する。全日本選手権で良い成果を見せられるよう、チャレンジを続けたい。

田名辺陽子(研究)
田名辺陽子(研究)

筋損傷の評価は、一般的に血液や尿の採取によって行われる。しかし検出までに時間がかかるなど課題もあった。筋損傷指標の増加は血液よりも皮膚間質液で早く起こると考えられ、私は血液・尿と、皮膚透析法を用いた皮膚間質液中の筋損傷の経時変化を比較評価している。皮膚透析法は、皮膚に特殊な透析プローブを挿入し、物質を連続的に回収するもの。すでにこの方法用いて予備実験を開始しており、その結果としてタイチンは皮膚間質液でも検出できる可能性が示唆された。今後は比較的早期に検出されそうな分子サイズの小さい物質の網羅的探索を進めていく。

中島大貴(研究)
中島大貴(研究)

近年、投球の球質を計測するセンサーが開発され、投球の回転が注目されている。先行研究ではストレートの回転が打者のパフォーマンスに及ぼす影響などが明らかにされているが、変化球については回転数や変化量などの特徴にとどまっている。私は「野球の投球における“キレ"のある変化球とは何か?」をテーマに、捕手が考えるキレの良い変化球の物理量の定量化にチャレンジしている。現在までに機材を揃え、分析プログラムも作成した。これらを用いて11月以降、実験を開始していく。捕手が感じる変化球のキレを明らかにすることができれば、投手は明確な目標設定が可能となり、パフォーマンスの向上に役立てられると期待している。

土居裕和(研究)
土居裕和(研究)

飛んでくるボールなど、ターゲットの捕捉の成功率を高める視覚情報ストラテジーの解明が私の研究テーマ。これを解明すれば、学術面では感覚機能と運動機能に関する研究の統合を加速させ、応用面ではスポーツ指導法の改善や、競技力向上につながる知見の創出にも結び付くと考えている。現在までに機材の動作確認、刺激用CGアニメーションの作成、そのアニメーションと手指運動計測装置の同期化を終えた。コロナ禍での学務の関係でスケジュールの再調整を余儀なくされているが、ターゲット捕捉成功率の向上に役立つエビデンスの提供に向け、研究を加速させていく。

太田楓(近代五種)
太田楓(近代五種)

新型コロナウイルスの感染拡大により、試合や合宿の中止、プールの閉鎖など、活動の場所が大きく制限された。そうした中、乗馬クラブは人数制限をした上で使用可能だったため、障害飛越練習を繰り返した。大会では、抽選によってパートナーとなる馬が決まる。あらゆる体格、あらゆる性格の馬で同じパフォーマンスを発揮できるよう、たくさんの馬で練習した。また、馬術障害検定2級の取得に向けて準備をしてきたが、これも受験の機会が延期になった。いつ受験できるかわからないが、準備だけは進めていく。11月には近代五種全日本選手権が開かれる。久しぶりの大会だが、最高のパフォーマンスを発揮して、史上初の中学生チャンピオンになりたい。

増田一太(研究)
増田一太(研究)

クランクは、自転車に踏力を伝える重要な部品。効率の良いペダリングを実現し、股やひざ関節への負荷、さらには関節角度を考慮して、最適なクランク長を明らかにすることが私の研究テーマ。一般的な自転車のクランク長は165〜180mm。たとえば170mmのクランク長の場合、最も効率よくペダリングできるのは身長約183cmの体格が必要という計算もある。もしかしたら、多くの人は非効率なペダリング、関節への負荷が大きなペダリングを強いられているのかもしれない。11月からは、サドルの高さやクランク長など条件設定の違いを反映できる計測システムでプレ実験を重ねていき、データ収集に移行していきたい。

吉原利典(研究)
吉原利典(研究)

仮に同じトレーニングをしたとしても、運動効果の獲得には性差が生じる。たとえば男性競技者の筋肉は肥大しやすく、女性競技者は肥大しにくい。この結果、さらに筋肉を肥大させようと過度なトレーニング等を行うことによって、重篤な運動器障害や健康問題につながってしまうリスクがある。本チャレンジは、女性特有のエピジェネティクス制御がトレーナビリティに関与しているのでは? という仮説のもと、「女性のトレーナビリティを決めるのは遺伝よりも環境なのか」というテーマで取り組んでいる。この研究を進めることで、性差を考慮した有効なサルコペニア予防法の確立に貢献したい。

村田希空(スノーボード・アルペン)
村田希空(スノーボード・アルペン)

ジュニア選手権での優勝、国内外FIS大会での表彰台を目標に、オフシーズンはフィジカル、動体視力、ローパワー、俊敏性の向上に取り組んだ。フィジカルについては、板を引きつけるために重要な役割を担う腸腰筋の強化を課題として取り組み、その成果を数値にしてチェックした。志賀高原での合宿では、器具を使って海外レースの環境に近い低酸素状態をつくって鍛えた。室内練習場で雪上トレーニングも行った。本来、フリースタイル系の施設なので滑走距離が短いものの、フォームのチェックには効果的だったと考えている。1月から海外レースへの出場を計画しているが、開催されるかどうかまだわからない。中止の場合は3月の全日本に照準を合わせ、国内で滑り込みを行う予定。