10月24日(土)、2020年度第3回目の中間報告会を開催しました。今回は新型コロナウイルス感染拡大防止を目的にリモートでの実施となりましたが、当日は体験チャレンジャーの村上レイさん(アイスホッケー)、神箸渓心さん(ビリヤード・スヌーカー)、地頭所光さん(自動車レース)、守屋拓海さん(ウインドサーフィン)、井戸アビゲイル風果さん(陸上・短距離)、研究チャレンジャーの上原一将さん、三谷舜さん、植田俊さんの8名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を報告するとともに、下半期の活動計画について発表を行いました。また特別参加として第12・13期生のOBチャレンジャー森田哲史さんも加わり、現役チャレンジャーとの意見交換を行いました。
参加いただいた審査委員(敬称略・五十音順)
浅見俊雄審査委員長、伊坂忠夫委員、北川薫委員、小島智子委員、定本朋子委員、野口智博委員、増田和実委員
村上レイ(アイスホッケー)
4月に予定されていたU-18 世界選手権が中止となり非常に残念な思いをした。しかしその一方でJOCからオリンピック強化指定選手の認定が届き、これまでにない自覚も膨らんでいる。オフシーズンには陸上練習でスプリントの向上に励んだ。また、地元北海道で小中学生の練習に加えてもらい、子どもたちに教えることで基礎を見つめ直す良い機会にもなった。9月に入ってようやくカナダに出発することができ、私にとって留学4年目のチャレンジが始まった。来年、ジュニアリーグに上がるという目標を必ず実現したい。まだ学校に通えるのは2日に1回というペースだが、自分にできることをしっかりこなして、今後もNHL選手という大きな目標に向かって進んでいく。
神箸渓心(ビリヤード・スヌーカー)
7月に再びイギリスのシェフィールドに渡り、新たなアカデミーに移籍して新鮮な気持ちで毎日を過ごしている。一方、プロアマ入替戦では2回戦で敗退してしまい、ストロークの安定性やシュートの精度、メンタルなどの課題をあらためて感じる結果となった。移籍先のアカデミーには自分が尊敬する選手をはじめ、20名のプロが在籍している。そうした現役プロから受けるコーチング、そして一つのミスが致命的になってしまう緊張感のあるプロとの対戦は自分を日々成長させてくれると信じている。プロアマ入替戦で実感した3つの課題については、一つひとつ対策を講じている。U-21 世界選手権、シニアの世界選手権、WSFチャンピオンシップはすべて中止が発表されたが、この期間に、一週間ずつの具体的な目標を立て、それを一つずつクリアしていくことで着実なステップアップを果たしていきたい。
上原一将(研究)
各種のスポーツでは、プレーの正確性を求めればスピードが落ち、スピードを求めれば正確性が落ちるというSpeed / accuracy のトレードオフが見られる。一方でトップアスリートの場合、正確性を保っても一般人ほどスピードは落ちず、スピードを上げた状態でも正確性をある程度担保していると考えられる。こうした現象は身体能力のみでは説明できず、脳の機能が大きく関与しているというのでは? という仮説を持っている。このトレードオフに関わる脳内神経系基盤を理解し、運動技能を脳からも鍛えられるような手法を開発すれば、秘められたアスリートの能力を拡張することができると考えている。在宅勤務や実験の自粛などで計画通りには進んでいないが、この期間に新たな仮説を思いついたり、プログラミングにたくさんの時間を割けたりと、結果的に悪いことだけではなかったという実感がある。これまでの予備実験で現象はつかめているので、秋以降、データ計測のペースを上げていきたい。
三谷舜(研究)
戦後、日本ではテニスや野球など、軟式スポーツが発達した。これを文化社会学的に考察するのが私のチャレンジ。上半期は資料館や図書館に足を運んで史資料の収集と分析を行う計画だったが、各種施設が閉鎖されてインターネット中心の収集となるなど計画はやや遅れている。予想される結論としては、軟式スポーツの統括団体と、行政・教育、そして用品の製造業がそれぞれ結びつき、硬式とは異なる「するスポーツ」の界(さかい)がつくられたのだろうということ。競技団体は用具の認可を、製造業界はゴム等の素材の入手を、行政・教育はポピュラースポーツの廉価版として軟式スポーツを位置づけ、これらが今日の軟式スポーツ界の土台となっているのだろうと考えている。年度末の論文投稿を見据え、下半期にはヒアリングと分析を進めていく。
地頭所光(自動車レース)
スポーツチャレンジ助成を受けて海外のレーシングスクールで技術を磨く計画だったが、渡航することができず、今年度の目標を、国内のフォーミュラカーレース「SUPER FJ」の日本一決定戦で優勝することに変更した。また「全日本EV-GPシリーズ」にも継続参戦し、3回目のチャンピオン獲得を目指して活動している。9月にはSUPER FJの第5戦筑波大会に出場した。これが自分にとって初めてのフォーミュラカーレースだったが、予選でタイムを伸ばせず、決勝は他車との接触もあり7位に終わった。一方のEV-GPは開幕から4連勝したが、第5戦を発熱で欠場したためシリーズポイントでライバルに詰められた。ランキングトップのまま最終戦を迎えるが、必ず優勝して3連覇を果たしたい。また、eスポーツにチャレンジしたり、ジムカーナ場での散水トレーニングなど、新たな試みも行っている。11月以降もレースが続くので、良い結果を残してシーズンを締めくくりたい。
植田俊(研究)
私は、視覚障害者の「視覚」について研究を進めている。スポーツ実践を支援する健常者との相互作用を通じて、視覚障害者の「視覚」が構成されていくプロセスと、その内実を解明したいと考えている。具体的には、視覚障害者がスポーツの実践空間をどのように「見ているのか」、見えないことでどのような障壁が存在するのかといったことを明らかにすることで、視覚障害者のスポーツ参与に貢献したいと考えている。これまでランニング等のフィールドワークを通じて、伴走者がどのような情報をランナーに伝えているか、ランナーが持つコースイメージはどのようなものかといったことを調査してきた。自分自身も伴走者として走ることで、ランナーと伴走者の協働の姿が見えてきている。
守屋拓海(ウインドサーフィン)
目標にしていた国内外の大会がキャンセルとなり、特に7月にスペインで予定されていた世界大会が中止となってしまい非常に残念に感じている。一方で、自粛期間は練習時間を増やすことができた。この時期は「ミスをなくす」ということを一番に考え、基礎を磨くことで進化できたと感じている。また筋トレやランニングを増やしたことで体力も上がったと実感している。国内のプロ戦で、その成果を試すのが楽しみで仕方ない。11月には三浦半島で、12月には浜名湖での大会開催が決定した。今年はプロとしてのスタートの年。3位以内に入れるよう、十分な準備をしてチャレンジしたい。
井戸アビゲイル風果(陸上・短距離)
4〜6月は陸上競技場が閉鎖されたため、自宅付近の坂道や神社の階段、公園などを使ってトレーニングを行った。またトレーナーの診断を受け、自分自身の身体の特徴を把握することにも努めた。その結果、足首が緩く蹴りが弱くなっていること、また内転筋が弱く前に進めていないことなど改善点を理解することができた。一方、日本学生陸上では、苦手だったスタートは改善されたものの、中盤から後半にかけて伸びなかったことからフォームの分析を行った。この分析から重心を前に乗せられていない、接地が遅いなどの課題も浮かび上がった。今後はこうした課題と向き合い、一つひとつ改善していきたい。