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【対談】山下良美×西村雄一

【対談】山下良美×西村雄一 審判という名の幸福

サッカーを支える仕事

YMFSそしてもちろんそこにはサッカーが大好きである、という大前提がありますよね。なんでそんなにサッカーが好きなんですか?

【対談】山下良美×西村雄一 審判という名の幸福

西村いやー、大好きですね。講演の冒頭で必ず言わせてもらうんです、審判が好きで審判をやっているわけではなくて、サッカーが好きだから審判をやっているんです、と。笑 ひとつのボールをあの白い枠の中に入るだけのことなのに、これだけたくさんの人が感動できたり、達成感を味わえたり。時には挫折を味わっても、じゃあ次こそは、ってまた頑張れる。そういうサッカーを通じて味わえる感動に居合わせることが僕にとっての一番大きな幸せにつながっているんです。

山下私も昔からずっと好きですね、サッカーは。サッカーの魅力って、自分でもよく口にしますけど、じゃあそれがなんなのかって、いまだにわからないんです。いま西村さんがおっしゃったように、そこに大きな感動があるのはわかるのですが、それがじゃあ具体的に何によるものなのか、っていうのはわからなくて。ただただやめられない、そういう感覚です。

YMFSサッカーの審判というのはこの世界で一番割に合わない仕事だと言われます。上手くやれて当たり前、ちょっとでもミスをするととんでもなく批判されます。

西村僕自身はサッカーが大好きなので、この仕事を通じてサッカーと関われていることは幸せでしかないです。

【対談】山下良美×西村雄一 審判という名の幸福

山下元々仕事という感覚でやってきたわけではないので、まあ今はプロフェッショナルになったので仕事になってしまいましたが、そのへんのことはあまり考えたことはないですね。

YMFSそうは言っても、やはりスタジアムにはいろいろな人がいて、口汚い野次を飛ばされたりすることがあるじゃないですか。

西村僕自身完璧ではないので、当然ひどく言われる時もありますし、あるいはちゃんとうまく裁けているとしても、下手くそ!って言われることもある。普段街を歩いている時に「西村ふざけんな!」って叫ばれるとちょっと困りますけど、スタジアムの中でなら、その野次だってチケット代の中に含まれている、そんな感覚です。日常のいろんな感情を忘れて、スタジアムで楽しんでもらって、そして日常にまた戻り、次の週末に再びスタジアムに足を運んでもらえたらと思っています。

YMFS今回山下さんは2022年11月下旬からカタールで開催されるワールドカップの審判団の一員として招聘されました。それ自体凄いことだと思うのですが、西村さんは過去に2大会、ワールドカップで笛を吹いてらっしゃいます。ワールドカップで審判をやるって、どういう感覚なんですか?

【対談】山下良美×西村雄一 審判という名の幸福

西村はい、これも僕はご縁だと思っていて。ワールドカップが開催された2010年、2014年、僕はちょうどその時に国際審判員として任命されていたということです。その任命が前の時代にずれていた人もいれば、後ろにずれている人もいる、ということだと思っています。時代時代にその役割を担うことができる幸運な人がいて、それが2010年、2014年はたまたま僕だった、2022年は山下さんになるのではないかなと。
僕自身、そもそもワールドカップに行きたいから審判をやっていたわけではありません。2014年は開幕戦の笛を吹きましたけど、対戦チームはブラジルとクロアチア、南米対ヨーロッパという時点でアジア人にその役が回ってくる可能性が高いのです。ワールドカップに行くと決まった瞬間から、レフェリーが注目され始めるという、不思議な感覚を覚えていますね。

山下本当にそう思います。そもそも審判員って注目されるべき役割ではないですよね。でもこうやって注目されることで、サッカーを支える仕事、審判だけではなくそれ以外の仕事にも気づいてもらえるきっかけになるし、それを知ってもらえることでもっともっとサッカーを見る機会が多くなるような気はします。

【対談】山下良美×西村雄一 審判という名の幸福

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