中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2023年10月14日

2023年度 第17期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました

10月14日(土)、2023年度第1回目の中間報告会を東京・日本青年館で開催しました。今回は体験チャレンジャーの瀧澤勇仁さん(レスリング)、地頭所光さん(自動車レース)、長洲百香さん(カヌースラローム)、研究チャレンジャーの田中貴大さん、高橋謙也さん、奥平柾道さん、山口達寛さんの7名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を振り返るとともに、下半期の活動計画について発表を行いました。

参加いただいた審査委員(敬称略・五十音順)

伊坂忠夫審査委員長、片山敬章委員、瀬戸邦弘委員、増田和実委員、村上晴香委員、吉岡伸輔委員

2023年度 第17期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました
田中貴大(研究)
田中貴大(研究)

平泳ぎは約200年の歴史をもつ古い泳法でありながら、その流体力学のメカニズムはよくわかっていない。本チャレンジでは、平泳ぎのキックで生成される渦を流体シミュレーションすることで、高い泳速度発揮のメカニズムを解明したいと考えている。すでに大学水泳選手を対象とした計測を完了し、第3四半期では身体形状への運動データの入力を行っていく。本チャレンジにおいてこの工程が最も困難だと考えていたが、つい先日、その課題解決の方法も得ることができた。今後は入力と解析を進め、第4四半期では学会の申し込みや学術論文の作成などを計画している。

高橋謙也(研究)
高橋謙也(研究)

陸上・中距離種目では、スピードと持久力の両方が求められる。しかしその一方で、レース戦略やトレーニングの方向性が確立されていない。先行研究では、好記録が出たレースでは前半が速く、順位が重要なレースでは後半の方が速い傾向がある。本研究では、ペース配分が運動時のエネルギー代謝に与える影響を明らかにするために、8頭のサラブレッドを用いたランダム化クロスオーバー実験を行った。運動強度によって前半型・後半型に分けたデータを取得し、呼吸循環や血液、乳酸代謝に関与する経路などを解析している。第3四半期は骨格筋代謝能力と基質濃度変化の検討を行い、論文執筆へと進みたい。

瀧澤勇仁(レスリング)
瀧澤勇仁(レスリング)

今年は年代別世界選手権での優勝を目標に活動を開始した。しかし半月板を損傷して縫合手術を受けたために、U17世界選手権への出場資格の懸かったJOCジュニアオリンピックカップを欠場することになってしまった。リハビリ期間を経て、現在はスパーリングが行えるところまで回復した。ただ、長いブランクによって、右脚の筋力、右膝の可動域の低下、全身のバランスの崩れなどを感じている。当初の計画では、テイクダウン技術を進化させるためにアメリカ遠征も行う予定だったが、その代わりに各年代の世界選手権の映像で最新技術の研究に取り組んだ。今後は下半身及び体幹を鍛えるとともに、近隣強豪大学への出稽古で実戦的な上半身の筋力アップに取り組んでいく。また、2024年にはアメリカに渡って強化に取り組みたいと、U17世界選手権のメダリストに合同練習の打診をしている。彼らと一緒に練習が実現すれば、最新のテイクダウン技術を習得できると期待している。

地頭所光(自動車レース)
地頭所光(自動車レース)

TOYOTA GR86/BRZカップに出場しているが、アクシデントが続き、ここまでの5戦はまともな成績を残せていない。練習では好調と感じる時でも予選で崩れてしまい、アクシデントの可能性が高いグリッドからのスタートとなり、結果、もらい事故による接触というレースが3戦あった。今シーズンは、技・車・心・体の4つに分けて課題の抽出を行い、それぞれについて改善のためのアプローチに取り組んでいる。特に自己の理解、環境変化に対する適応力の向上、バトルの安定感を主眼に取り組みを進め、残りの2戦でなんとしてでも昨年(3位)以上の結果を残したい。

奥平柾道(研究)
奥平柾道(研究)

本研究では、牽引装置などの外力を利用した“超最大スピード走トレーニング”が、アスリートの神経系機能と、疾走動作に及ぼす影響を検討している。上半期は、陸上競技のオフシーズンとなる本実験の実施を見据えて、研究倫理申請や機材の調達・確認、予備実験やプロトコルの検討などを行ってきた。今後は予備実験の解析を進め、11月からの本実験に備えてプロトコルを確立していく。YMFSの助成には、競技者のチャレンジャーも大勢いる。3月に開かれる成果報告会では、そうしたアスリートの皆さんとも知見を共有し、彼らの活躍にこの研究成果が貢献できればと願っている。

長洲百香(カヌースラローム)
長洲百香(カヌースラローム)

今シーズンはワールドカップ出場とジュニア世界選手権での決勝進出を目標に置いたが、両方とも実現することができなかった。大学の入学試験の時期に日本を離れられず、また4月の選考会ではシニアの日本代表に選考されなかった。ジュニア世界選手権のカヌースラロームでは準決勝で敗退した。外国人選手と競技することで、推進力やボートコントロールなど、さまざまな点で差があることを感じた。一方で、アジア大会では銀メダルを獲得し、初の国旗掲揚を味わうことができた。また世界選手権のカヤッククロスでは7位に入賞した。この新しい競技は観る人も楽しいし、やるのも楽しい。自分にも向いているのではないかと感じている。今年はU18最後の年。コーチからの期待、観客の多さ、後輩の成長などプレッシャーはどんどん大きくなるだろうが、自信が揺るがないだけの練習量をこれからも積み上げていく。

山口達寛(研究)
山口達寛(研究)

筋肉は、使わないと衰える。本チャレンジでは、神経筋接合部の機能に着目して、身体不活動に伴う筋力低下の機序解明に取り組む。10日間寝たきりだと筋肉は5%低下し、筋力はそれ以上の10%も低下する。不活動による筋力低下は、神経筋接合部の機能低下によるものかを調べるため、実験ではマウスにギプスと後肢懸垂の組み合わせによる不活動化を20日間処方した。その結果、不活動によって神経筋伝達が悪化して筋力低下を引き起こしたが、神経筋伝達の悪化には神経終末の萎縮が関係している可能性が見つかった。研究は概ね当初の計画通りに進行している。さらに、当初想定していた以上の研究になるかも、という手応えや期待を感じている。