年度別チャレンジャー一覧

助成対象者のチャレンジ概要
田中 貴大
氏名
田中 貴大(たなかたかひろ)
助成実績
スポーツチャレンジ研究助成(基本):第17期生
平泳ぎキックで速く泳ぐためのメカニズムを解明する-足で作られる渦に着目して-

本研究は、競泳で使われる平泳ぎキックにおける高い泳速度発揮メカニズムを流体力学的に解明する。平泳ぎの高い泳速度発揮には、ストローク動作よりもキック動作での推進力獲得が重要である。また、泳者は身体周りで渦を生成することで前方へ推進している。そこで、本研究では、泳者が平泳ぎキック中に足部周りで生成する渦を、流体シミュレーションを用いて定量的に分析し、高い泳速度発揮に関連する渦の動態に着目する。

成果報告(2024年3月)

今回の研究チャレンジでは、平泳ぎのキックで速く泳ぐメカニズムを渦の生成という観点から解明することに取り組んだ。3次元的な動きをする平泳ぎキックの運動計測と流体シミュレーションは世界的に見ても研究例が皆無に等しく、先人の知恵を借りることができなかったため、チャレンジ失敗が頭をよぎるほど困難を極めた。しかし、諦めることなく試行錯誤を繰り返し、他の研究者の知恵をお借りすることでチャレンジ達成のための手法を確立でき、平泳ぎキック動作中に生成された渦の可視化に世界で初めて成功した。この分析により、平泳ぎキックでは、足の甲と小指側および下腿で推進に作用する渦が生成されており、高い泳速度を発揮できる泳者はそうでない選手よりも、それらの渦が大きいことが分かった。今回は、YMFSの皆様と知恵を提供いただいた研究者の皆様のサポートにより、学術的な意義も非常に高い成果を上げることができた。

スポーツチャレンジ研究助成(奨励):第14期生
ヒトがイルカのように泳ぐためには?-ドルフィンキックの体幹動作に着目して-

本研究はドルフィンキック動作を,3次元動作解析システムを用いて測定しドルフィンキックの体幹動作がパフォーマンスへ与える影響を解明する.ドルフィンキックは,大きな力学的エネルギーを生み出す体幹部から身体を ムチのようにしねらす動作であり,体幹動作はパフォーマンス向上に貢献すると考えられる.また,ドルフィンキッ クのパフォーマンスは高い泳速度と推進効率が重要であるため,これらに関連する体幹動作に着目する.

成果報告(2021年3月)

本研究チャレンジでは,高い泳速度を生成している水中ドルフィンキックの推進メカニズムを体幹部に着目し,運動学および流体力学的に解明することを目的とした.
第一四半期から第二四半期にかけ,感染症拡大により運動学データ取得の実験延期が余儀なくされた.しかし,流体力学的分析に必要な流体シミュレーションの準備を行うことができ,全体の研究遂行に大きな遅れは生じなかった.第三四半期より,競泳選手を対象としたデータの取得を開始し,運動学・流体力学的分析を行うことができた.その分析の結果,競技力が高い泳者は,胸部や腹部で生成した渦を進行方向に対してより後方へ放出していた.よって,優れた泳者ではこの体幹部付近での渦の放出により,高い泳速度を生成している可能性が示唆された.本結果は,競泳選手の競技力向上につながる一つの基礎的な知見となり得る.本助成により,自分が望んでいた研究を行うことができた.
しかしながら,本研究チャレンジでの分析は,二次元的な解析に留まった.イルカとは異なり,ヒトによる水中ドルフィンキックでは下肢の三次元的な動作が行われることが明らかとなっている.今後,三次元的な分析を行うことで水中ドルフィンキックにおけるヒトの特異的な動きを明らかにすることができる.また,取得したデータの解析が全て完了していないため,今後も分析を続ける.