年度別チャレンジャー一覧

助成対象者のチャレンジ概要
山口 達寛
氏名
山口 達寛(やまぐちたつひろ)
助成実績
スポーツチャレンジ研究助成(奨励):第17期生
身体不活動に伴う筋力低下の機序解明:神経筋接合部の機能に着目して

本研究では、身体不活動が筋力を低下させるメカニズムの解明を目指す。後肢懸垂とギプス固定という2つの不活動モデルを処方したマウスに対して、新たに開発した神経筋機能評価法を用いるとともに神経筋接合部や筋線維の構造を解析する。本研究のポイントはパフォーマンスに直結する筋力と不活動の関係に迫る点にあり、これによりスポーツに関わる全ての人々の健康に貢献することが目標である。

成果報告(2024年3月)

筋肉は使わないと衰える。これは誰もが経験的に知っている現象だが、そのメカニズムには不明な点が多い。特に、不活動による筋量減少についてはその全容が解明されつつあるものの、不活動中に筋力が筋量より減少するメカニズムについては手つかずの状態だった。私はこのような筋力低下は筋肉そのものより筋肉を制御する神経に原因があると考え、神経と筋肉のつなぎ目に当たる神経筋接合部に注目して研究を進めた。その結果、マウス神経筋接合部は不活動中に構造が劣化し、神経から筋肉へ信号を送る機能が低下して筋力低下を引き起こすことを確認した。さらに、このような不活動中の神経変性には神経栄養因子の減少が関連すること、神経変性が深刻化すると不活動後の筋量回復が鈍化することも突き止めた。今後は不活動中の筋量減少・筋力低下の両方に有効な治療法・治療薬の開発によりアスリートだけでなく社会全体の人々の健康増進に貢献したい。