10月9日(日)、2022年度第2回目の中間報告会を東京・日本青年館で開催しました。当日は体験チャレンジャーの名草慧さん(ハンググライダー)がメキシコからオンラインで参加したほか、金澤野愛さん(スノーボード/アルペン)、研究チャレンジャーの林勇樹さん、小川まどかさん、吉原利典さん、李格さんの6名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を報告するとともに、下半期の活動計画について発表を行いました。
参加いただいた審査委員(敬称略・五十音順)
伊坂忠夫審査委員長、草加浩一委員、定本朋子委員、瀬戸邦弘委員、高橋義雄委員、増田和実委員、村上晴香委員、ヨーコ・ゼッターランド委員
林勇樹(研究)
競泳のレース分析に貢献するため、高解像度の映像から機械学習を用いて解析する手法にチャレンジしている。当初、すでに分析済のレースデータを用いて学習用の画像を生成する計画を立てていたが、データ数が少なくなる点を考慮して一部方針を変更した。学習用のデータの生成には画像処理を用い、分析済のデータは精度検証時に利用することとする。第1四半期では、条件の良い撮影映像において、ターンを含むレース全体の位置変動を取得することができるようになった。一方で常時水面に出ている自由形や背泳ぎに比べ、バタフライや平泳ぎは難易度が上がる。まだ解消しなくてはならない課題が残っているが、半期が過ぎたこのタイミングで、一旦、認識できている部分を使って学習を開始し、その結果を得た上で次のステップを描いていきたい。
名草慧(ハンググライダー)
アジア人初のハンググライダー世界チャンピオンを目指して活動している。現在はメキシコで暮らし、ハンググライダーの部品製造や組み立てを行いながら構造を学び、週末はテストフライトを行いながらわずかな挙動を感じ取る感性を磨いている。夏場はヨーロッパ遠征を行い4大会に出場した。ヨーロッパ選手権26位、フレンチオープン準優勝、ブリティッシュオープン4位、オープンアジェール6位という成績だった。この結果、世界ランキングも自己最高の19位まで上げることができた。こうした成果に加え、これまで経験のなかったフライト時間や距離を体感することができ、またトップ選手と競うことで新たな課題も発見するなど、モチベーションをさらに高めることにつながった。
小川まどか(研究)
寒冷や運動を介したβ-アドレナリン刺激は、ベージュ脂肪化をもたらすことが実験動物によって明らかにされてきた。しかし、同様のベージュ脂肪化がヒトでみられるか否かは明らかにされていない。肥満者の増加は全世界共通の課題であり、コロナ禍によってさらなる増加が予想されている中、ベージュ脂肪の増加がヒトでも有力な肥満予防・解消法となる可能性があると考えている。上半期では健常な若年者21名の男女を対象に、一過性の寒冷曝露がMR指標へ及ぼす影響を調べる実験を行った。その一方で実験プロトコルの再考やパイロットスタディを実施し、今後は一部計画を修正したうえで、定期的な寒冷曝露によるMR指標の変化をみていく。
吉原利典(研究)
筋力トレーニングの効果は男性と比べて女性で低く、女性競技者が筋機能を向上するためには高強度・高頻度の運動が必要となり、結果、オーバートレーニングによって運動器障害や競技力の低下を招くことがある。本研究では、女性の筋力トレーニングによるトレーサビリティが低い要因を解明し、女性の運動効果を最大限に引き出すための科学的根拠の創造にチャレンジする。上半期では安静時のヒト骨格筋におけるエピジェネティクス修飾状態および筋受容体遺伝子発現等の性差を解明したが、今後はヒト骨格筋細胞への遺伝子導入によるトレーサビリティの性差を司る分子制御メカニズムの解明等を進め、性差を考慮した有効なサルコペニア予防法の確立に貢献したい。
金澤野愛(スノーボード/アルペン)
春先はいろいろなスキー場で雪上練習を重ね、同時に板のテストを進めた。これまでで一番フィーリングの良い板を作ることができたと感じている。ゴールデンウィーク後からはサマーゲレンデでの滑走練習や、パーソナルトレーナーのもとで陸上トレーニングを重ねた。またSUPやスケートボードなど、スノーボードと感覚の近い道具を使ったトレーニングも採り入れた。今シーズンは久しぶりの海外遠征が行えるため、現在の自分の位置を把握するとともに、たくさんの刺激を受けてきたいと楽しみにしている。
李格(研究)
運動後に一時的に食欲が減退する状態を「運動誘発性食欲不振」という。運動量の多いアスリートは、エネルギーバランスやパフォーマンス維持のためにこの食欲不振を抑制し、栄養を補う必要がある。本チャレンジは、アイスベストの着用など、運動後の食欲を促進させる簡便な方法の開発を目指している。上半期では、健康な20代の男性10人に対し、運動後のエネルギー摂取量、主観的な食欲や温冷感、直腸温、皮膚温、食欲ホルモン、エネルギー消費量、基質酸化などを評価した。今後、データを分析し、国際ジャーナルへの投稿を計画している。