中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2022年10月8日

2022年度 第16期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました

10月8日(土)、2022年度第1回目の中間報告会を東京・日本青年館で開催しました。今回は3年ぶりのリアル(対面)開催となり、当日は体験チャレンジャーの小野澤謙真さん(ラグビー)、坂藤秀昌さん(フェンシング/エペ)、村田希空さん(スノーボード/アルペン)、地頭所光さん(自動車レース)、研究チャレンジャーの福家健宗さん、田渕絢香さん、髙見采加さん、池上諒さんの8名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を振り返るとともに、下半期の活動計画について発表を行いました。

参加いただいた審査委員(敬称略・五十音順)

伊坂忠夫審査委員長、草加浩一委員、杉本龍勇委員、瀬戸邦弘委員、村上晴香委員、ヨーコ・ゼッターランド委員

2022年度 第16期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました
福家健宗(研究)
福家健宗(研究)

身体不活動(運動不足)がまん延して、継続的な運動の実施が社会的な課題となっている。その解消を実現するためには、人々は「運動を行う心理的なハードル」を乗り越えなければならない。本研究では、運動意欲が高まる条件を評価するために、前頭前野の神経活動に着目してチャレンジしている。上半期では実験のモデルを確立することができたが、現時点のサンプル数では傾向を把握することはまだ難しく、下半期では実験を継続して充分なサンプルサイズを確保していきたい。また、生理指標評価区間の見直しなど課題も残っている。運動実施における「意思コストの見える化」という目標に向けて、今後も着実に研究を進展させていきたい。

小野澤謙真(ラグビー)
小野澤謙真(ラグビー)

オーストラリアのクラブチームに練習生として参加して、日本では経験のできないレベルのコンタクト強度を経験することができた。一方でコロナの影響により期待していたほど試合ができなかったこと、食事の面で問題を抱えて体重を落としてしまったことなど、計画通りにはいかなかった面もある。当初は秋以降、現地の高校への編入を計画していたが、年代別セブンズの代表合宿に招集され、今後のステップアップになると考えたことと、また勉学の兼ね合いも考慮して帰国を選択した。代表合宿後にプレーのレビューをいただいたが、データやコメントを確認して、もう少しスプリントやボールタッチ数を増やして自分の特徴を出していかなければならないと感じている。まずは来年1月に開催されるセブンズ世界大会出場を目指していきたい。

田渕絢香(研究)
田渕絢香(研究)

女性と男性では運動能力にも性差がみられるとともに、女性は性周期によっても運動パフォーマンスが変化する。本研究では、女性ホルモン量の変動が及ぼす影響を検証し、「骨格筋の細胞内環境の変化」という新しい視点から、月経周期を考慮した運動トレーニングの提示につなげたいと考えている。私は、エストロゲン濃度の高い発情期では、濃度の低い間期よりも疲労性運動中のパフォーマンスが高く、収縮中Ca2+動態に違いがみられると仮説を立てている。これまでに披験動物で性周期による運動パフォーマンス変化をみてきたが、今後はCa2+関連タンパク質の発現量・ミトコンドリアエネルギー産生酸素を、発情期と間期で比較していきたい。性周期研究の必要性は、世界のトップアスリートからも求められている。そこに貢献できるよう、研究に取り組んでいく。

髙見采加(研究)
髙見采加(研究)

球技や対人スポーツでは、パフォーマンスに「今日は調子が良い/悪い」といったゆらぎが生じる。私は「ボールや相手選手の動き情報を処理する運動視経路の能力がパフォーマンスの決定因子になる」という仮説を立て、脳機能のコンディショニングによるパフォーマンスの安定化・最適化につなげていきたいと研究に取り組んでいる。上半期は大学卓球競技者14名に対して、運動方向弁別課題と連続視覚運動課題による運動視能の定量評価を実施した。この結果、日々の成績にはゆらぎが生じること、運動視能の高い日は連続視覚運動パフォーマンスが高いことを確認した。連続視覚運動パフォーマンスのゆらぎは、ターゲットの動きを捉える視野での運動視能のゆらぎに起因すると考えられることから、プレー中に動き情報を処理する視野での運動視能を高い状態に維持することで、常にベストパフォーマンスを発揮することが可能になると結論づけた。今後は経頭蓋静磁場刺激を用いた介入実験を進めていく。

坂藤秀昌(フェンシング/エペ)
坂藤秀昌(フェンシング/エペ)

パリ五輪への出場を目指して、世界ランキングの向上に取り組んでいる。上半期は、学連、年代別U20、そしてシニアの大会を数多くこなしてきた。国際大会ではU20世界選手権で47位という結果だった。トレーニングと試合を繰り返す中で課題が浮かび上がり、毎日の練習の中でその対策に取り組んでいる。その一つが左利きの選手に対する戦い方。現状では左利きの選手に対して有効な技のバリエーションが少なく、コーチと課題を共有しながら新たな技の習得に取り組んでいる。また8月に太ももを痛めてしまい、大会で十分なパフォーマンスを発揮できないということも経験した。栄養や睡眠といった基本的なコンディショニングはもちろん、今まで以上に身体のメンテナンスに配慮していきたい。下半期も重要な大会が続くが、11月中旬にスイスで開催されるワールドカップへの初出場が決定した。事前にポーランドで強化合宿があり、そこでさらに力をつけて良い成績を残してきたい。

池上諒(研究)
池上諒(研究)

レジスタンストレーニング後のコンディショニングにより、筋損傷を予防・軽減させることは非常に重要。本チャレンジでは、筋損傷からの回復過程で「寒冷療法」「温熱療法」のそれぞれが与える影響と、トレーニング効果に与える影響を検討している。上半期では、ヒトにおいて、「寒冷療法は伸張性収縮後の筋発揮張力低下からの回復を遅延させ、温熱療法は回復を促進させる」という仮説を検証した。この結果、温熱療法及び寒冷療法は可動域と伸張時痛を改善するが、筋発揮張力の回復には影響を与えないことが明らかになった。しかし、今回はあくまでも一過性の効果の検討であるため、下半期では慢性効果の検討を進めていきたい。

村田希空(スノーボード/アルペン)
村田希空(スノーボード/アルペン)

2026ミラノ・コルティナ冬期五輪出場を目指して強化に取り組んでいる。4月のナショナルチャンピオンシップ(アメリカ)の予選1本目で北京五輪4位の選手に次ぐ2位となり、トレーニングの方針に間違いはないと実感することができた。一方で切り返しの時の板の引き付けが足りないと感じ、現在、腸腰筋と腹斜筋の強化に取り組んでいる。また、シミュレーターを使って骨盤の向きや可動範囲を反復練習しているほか、3Dターンシステムを用いて身体の動きの細部をチェックしている。こうしたトレーニングにより筋力の強化が見え始めたほか、体重は増加し、体脂肪率も低下するなど、新シーズンに向けて順調に準備が進んでいる。来年2月前半までは国内FISレースに参戦し、その後、欧州にてFISレースやヨーロッパカップを転戦する予定。

地頭所光(自動車レース)
地頭所光(自動車レース)

2030年にルマン24時間レースで優勝することを目標に、8年間、毎年ステップアップを重ねていきたいと考えている。現在、各種カテゴリーのレースに参戦しているが、それは14期生としてのチャレンジの成果だと感じている。今年は2023年にSUPER GTに到達するため、モータースポーツの甲子園とも言われるFIA-F4などに参戦中。スーパー耐久富士24時間レースではクラス優勝をすることができたが、その一方でフォーミュラカーレースであるFIA-F4では苦戦が続いている。改善しなくてはならないことはたくさんあるが、最も大きい課題は「フォーミュラカーの挙動に慣れない」「ブレーキの踏力を上げられない」ことだと考えている。これらについて走行データを読解するとともに、プロドライバーから指導を受けて改善に取り組んでいる。また、トレーナーの指導を受けて、体幹、腕力、首の強化にも取り組み、筋力や体力の不足を感じる場面が以前より大幅に減ったと感じている。

2022年度 第16期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました
全員が中間報告を終えた後、チャレンジャーと審査委員で意見交換会を実施。相談や質問、それに対する意見や助言が積極的に交わされた