中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2019年10月4日

2019年度 第13期生スポーツチャレンジ助成 第3回中間報告会を実施しました

2019年度 第13期生スポーツチャレンジ助成 第3回中間報告会

10月4日(金)、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京都)にて2019年度 第3回目の中間報告会を実施しました。今回は体験チャレンジャーの齋藤康祐さん(カヌースラローム/選手)、篠原琉佑さん(スノーボード・アルペン/選手)、研究チャレンジャーの片岡正教さん、松田晃二郎さん、三重野雄太郎さん、森田哲史さんの6名が参加。また、イギリスでチャレンジしている体験チャレンジャーの神箸渓心さん(スヌーカー・ビリヤード/選手)はインターネットを通じて参加し、それぞれが上半期のチャレンジ状況を報告するとともに、下半期の活動予定について発表しました。

報告会終了後にはスポーツライター・コメンテーターである高樹ミナさんを講師にお迎えし、第4回中間報告会に参加するチャレンジーも加わって、『「伝える」を武器にする』をテーマに座談会を行いました。冒頭では、伝えたいメッセージには「共感」「発見」を織り交ぜながら、社会が欲している情報を正確に把握して届けることの重要性を紹介。合わせて言葉で伝えるための技術と思考について、実際にアスリートが使ったフレーズなどを用いて解説しました。これを受けて、各チャレンジャーは自己紹介を行い、その後はグループ毎に内容を評価し合い、また「伝わる」自己紹介について考え、「伝える」ことの大切さを学びました。

参加いただいた審査委員

浅見俊雄委員長、伊坂忠夫委員、遠藤保子委員、北川薫委員、草加浩平委員、定本朋子委員、高橋義雄委員、野口智博委員、福永哲夫委員、村田亙委員、ヨーコ ゼッターランド委員(五十音順)

森田哲史さん(研究)
森田哲史さん(研究)

昨年、新学習指導要領が告示され、その中に「投の運動(遊び)を加えて指導することができる」という文言が加わりました。これは初の記載となりますが、小学校では「どう指導すべきか」という課題があり、本研究では、授業実践、縦断的調査、指導計画の普及というプロセスでこの課題と向き合ってきました。まず授業実践では、これまでに開発した教材や競技を授業で実践ました。また調査では、授業を受けた児童の昨年度と今年度のソフトボール投げの変容を確認しましたが、大きな優位差は見られませんでした。しかし2学年に渡り実践を行ってきた児童と、一度も実践していない児童を比較すると優位差が見られ、系統的な指導が投動作を身につける上で重要であると確認できました。普及については、出前授業や教員を対象とした講演を行ったほか、投の運動を取り入れた年間指導計画の作成を行ってきました。今後は年間指導計画の発刊を目指すとともに、他の指導者による授業実践の効果確認や、縦断的調査を継続して行ってきます。

三重野雄太郎さん(研究)
三重野雄太郎さん(研究)

ドイツでは近年、刑法によってスポーツ・インテグリティーを保護する動きがあますが、本研究はこの状況を起点に、文献調査、専門家へのインタビュー調査などでスポーツ・インテグリティの意味と、刑法で保護することの当否を検討することが目的です。ドイツでは国家権力が、スポーツを含め専門領域に介入しない伝統がありましたが、ある時期に競技者の健康保護を目的にドーピングが法律で規制されるようになります。しかし2015年には、競技としての公正と機会の平等を保障する反ドーピング法が作られ、2017年にはスポーツ賭博詐欺や八百長が犯罪化されました。これは、スポーツの純潔性の侵害と詐欺的方法による他人の財産の侵害という理由からでしたが、これに対してドイツでは、スポーツ・インテグリティの内実が不明確であったり、刑法を用いる必要があるのかという批判があることがわかっています。今後はドイツのスポーツ倫理学の議論を参考に、スポーツ・インテグリティがどう理解されているかを調査し、法律による保護が本当に必要なのかを模索していきます。

片岡正教さん(研究)
片岡正教さん(研究)

ボッチャとは、重度脳性麻痺もしくは四肢体幹に重度の機能障害がある方を対象とし、白いボールに、赤と青のボールを投げあってどちらが近いかを競い合うパラ競技です。その中でボッチャ選手は、柔らかさや重量を規定の範囲内で調整したマイボールを使っていますが、選手自身に適したボールを追究するモジュールボールの開発と、トレーニングボールとして有効な重量を検証することが目的となります。ここまでは実験用トレーニングボールを製作し、使った感触など試している状況です。具体的には、回転解析システムをボッチャボールに入れ、健常者ならびにボッチャ選手の投球速度、回転軸等を解析しようと試みましたが、正確なデータが取れなったので、内蔵するセンサーの検討を進めていくこととなります。また様々な素材を用い、±30%の重量の異なるボールを製作し、選手に使ってもらっていますが、これからデータを取得しつつ、容易に重量のカスタマイズができる機構などの検討を進めるとともに、どの重さで効果があったのかを導き出ていきたいと思います。

松田晃二郎さん(研究)
松田晃二郎さん(研究)

イップスはターゲット型のパフォーマンス課題に多く見られるものですが、このイップスの発症要因と長期化する要因を、心理学的な側面から探っていくことを研究の目的としています。また長期化の要因がわかったところで、効果的な改善方法を検証していきたいと考えています。イップスの発症については、競技に対する固執が主な要因ですが、長期化の要因は、固執だけでなく周りのサポートや、改善に向けた取り組み方(同化と調整)があげられます。プロ・アマゴルファーを対象に、イップス群と非イップス群に分けて調査を行ったところ、イップス群は競技に対する固執が高い状況が見られました。またイップスを発症した経験のあるプロ・アマゴルファーを対象とした調査では、長期化の要因として、競技への過度な固執や周囲からのサポートが不足している可能性が示唆されました。さらにイップスを発症した経験のある野球選手の調査では、イップス改善に向けた取り組みとして、イップスについて考えないようにする調整があった人ほど短期で改善している傾向が見られました。今後は群分けの基準の明確化や調査の継続、学会発表・論文制作に進んでいきます。

齋藤康祐さん(選手)
齋藤康祐さん(選手)

国内のJAPAN CUPでは7戦中5戦に出場し日本代表を決める大会で失敗して代表を逃しましたが、3勝して最終ランキングでは男子K-1で1位を獲得できました。国際大会では世界選手権のU23に出場し、日本人では最上位の28位でした。その後2つのランキングレースに出場しましたが、ともに予選敗退となりました。この中で世界選手権を見ると、1位の選手とは16秒差があり、ミスによるロスが約12秒と4秒の差がある状況です。これをどう埋めていくかですが、事前に様々なアクションを用意し、それを水に伝えた時のリアクションを感じとっての臨機応変を、トップ選手のように正確に素早く行うことが一つ。もう一つが、漕ぐことだけにとらわれず、ボートが水をつかむのを待つことで体力消費を抑えながら効率的に進んでいく技術を身につけることが課題になります。また進んでいる海外のテクニックを取り入れ、それを自分なりにアレンジすることでアドバンテージを作っていくことも必要だと感じています。2月にはオーストラリアにいく予定ですが、そこまでは流れのないところでの練習になりますが、新たな課題を見つけて来シーズンに繋がるトレーニングができればと思います。

篠原琉佑さん(選手)
篠原琉佑さん(選手)

ジュニア世界選手権、ワールドカップ、オリンピック、そしてオリンピックでの金メダル獲得という段階的な目標があり、今季はジュニア世界選手権でのメダル獲得を目標としました。しかし3月に右肩を脱臼してしまったため、第1四半期はフィジカルの機能チェックに基づいた機能向上のほか、乳酸カーブテストを行い基礎体力向上を目的に有酸素トレーニンも実施しました。第2四半期ではリハビリが順調に進んだため、筋力・体力アップを本格的に開始するとともに、フォームの修復を目的にニュージーランドとイタリアでの雪上トレーニングを行いました。今後は、パワー発揮と加速動作が可能なフォームへ改善するため、雪上練習で重りやバンドを使い軸を意識したターンを身体に染み込ませます。陸上では、特に遅れているパワー発揮トレーニングをペースアップして行います。さらにその後は、フィジカルの強化・維持とともに、フリーライディングによる技術向上、ゲート内でのラインどりやタイム計測による実戦的なトレーニング、そして国際大会に出場し変化するコースに対応できる判断力を養い、ジュニア世界選手権への出場枠とメダル獲得を狙います。

神箸渓心さん(選手)
神箸渓心さん(選手)

スヌーカーのプロとなり世界チャンピオンになることを目標にしていますが、そのため現在はイギリスのスヌーカー専門のアカデミーで活動しています。上半期はコーチの指導によるフォームの改善、プロや強豪選手のプレーを見ることでの判断力強化、強豪選手との対戦による集中力をコントロールすることに力を入れてきました。試合では、U21世界選手権で、昨年のベスト16からベスト8に上がりましたが、目標の優勝には届きませんでした。プロアマ入れ替え戦は、昨年の1回戦負けから4回戦まで勝ち進みましたが、まだプロには届かない状況です。第3四半期は、引き続き強豪選手と緊張感のある実戦練習を重ねながら、欧州のトーナメントに積極的に参加し集中力・平常心を身につけ、メンタル強化に励みます。第4四半期では、スヌーカーの試合は長ければ3時間にも及びますが、フィジカルとともに技術・戦術・メンタルのすべてを高め、精神力とパフォーマンス向上を目指します。また新たにヨーロッパチャレンジツアーへの参加資格を獲得しましたが、これはランキング上位がプロになれる大会なので、成績上位を目指し精一杯がんばります。