中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2019年9月20日

2019年度 第13期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました

2019年度 第13期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会

9月20日(金)、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京都)にて2019年度 第1回目の中間報告会を実施しました。体験チャレンジャーの西原佳さん(ボート競技/選手)と吉岡詩果さん(フィギュアスケート/選手)、上村勇貴さん(陸上・障害者スポーツ/選手)、研究チャレンジャーの田邊元さん、白井祐介さん、上田麻理さんの6名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を報告するとともに、下半期の活動予定について発表しました。

報告会終了後には執筆家・スポーツコメンテーターである江橋よしのりさんを講師にお迎えし、第2回中間報告会に参加するチャレンジーも加わって、『人々は「応援する理由」を求めている』をテーマに座談会を開催。競技の魅力やアスリートの情熱を、競技やアスリートの枠を超えて社会に届け共鳴してもらうにはどうすべきか、またアスリート個人の体験談が広く受け入れられるためには一般の人にも応用可能な情報へと物語化する意義が話されました。その後はグループに分かれ、一般の人に受け入れられるための物語や社会に共感されるメッセージを実際に研究者とアスリートとがともに考え、発表し、活発な議論を交わしました。

参加いただいた審査委員

浅見 俊雄委員長、伊坂 忠夫委員、北川 薫委員、髙橋 義雄委員、福永 哲夫委員、ヨーコ ゼッターランド委員(五十音順)

西原佳さん(選手)
西原佳さん(選手)

「3月の日本代表選考会で代表から外れてしまい計画を一から立て直しました。目指すべきは来年4月のアジア大陸予選シングルスカルでの優勝です。そのためエルゴでの測定タイム7分を切り、レースでは7分40秒を目指しています。
4月から社会人になり練習環境が大きく変化しました。2人のコーチに指導を仰ぎ、ブレードが深く入ってしまう非効率的な漕ぎ方を修正。また筋力が足りず、乳酸耐性が弱いというフィジカルの課題に対し、高強度インターバルトレーニングやウエイトトレーニングを取り入れたり、乳酸耐性トレーニング理論について学習する他、スポーツ栄養士からの指導を受けるなど、さまざまなコーチ、人脈から知識やトレーニング理論を吸収。テクニックの飛躍的向上やフィジカル強化の土台固めにより、全日本選手権と全日本社会人選手権で準優勝という結果に結びつけることができました。今後もトレーニングを継続し、練習遠征を企画・実行するなどし、まずは日本代表に入ります」

田邊元さん(研究)
田邊元さん(研究)

「口腔内の炎症と選手のコンディションには相互関係があるという臨床的経験を基に、お口の中の状態から選手の疲労やコンディションの相関関係を分析し、新しい口内炎症マーカーを探索することで選手をサポートしたいと考えています。お口は消化器系の最前線の場所であり体表面の粘膜の変調を直接的に見たり触ったり測ったりできる場所です。実際にコンディションの変動・変調が口腔内に表出するか、トライアスロンU23代表合宿にて観察しました。お口の自覚症状や炎症検査では有意差を認める項目はありませんでしたが、2つ面白い変化が見られました。一つは口腔水分計と脱水の関係です。口内水分は簡単に測れるので、口腔水分計を開発している会社や救命救急で迅速評価として使用している大学とも協力し合い研究を進めたいと思います。もう一つは口内炎症の面積が多い選手ほど合宿後半で自覚的なコンディション低下がありましたので、大事な大会前や選考前などに、お口の消炎をやる意義があるのではないかと、電動歯ブラシメーカーと口内炎症治療、口腔ケアによる共同研究を検討中です」

白井祐介さん(研究)
白井祐介さん(研究)

「持久性のスポーツでは、高い生理的な負荷にさらされており、集団で行う競技の場合、ペースの調整、競争相手や味方選手の動向にも注意を払うなど、認知的負荷も生じています。認知的負荷が増えた時に持久性運動はどのような影響を受けるのか、パフォーマンスがどう変わるのか、前頭前野の活動レベルも含め検討しています。
まず実験プロトコルを決定するための実験を行いました。非常に高い強度でペダルを漕ぐ運動を行わせ、運動のみ、運動と単純反応課題、運動と選択反応課題の3条件で実施。運動単独で実施した場合に比べ、認知課題の付加により、運動継続時間は減少し、反応時間が遅延するという関係が確認できたので、これから前頭前野の組織酸素化レベルと合わせた本実験を開始します。また単純反応課題と選択反応課題では、認知的負荷の増大以外の要因が影響を及ぼす可能性が考えられたので、本実験では選択反応課題をベースに回答スイッチをランダムに振り分けて認知的負荷をコントロールします」

吉岡詩果さん(選手)
吉岡詩果さん(選手)

「4月に右足に疲労骨折が見つかり計画を少し変更してスタート。6月まで氷上でのジャンプ、スピン、曲掛け練習が禁止されたため、スケーティングや振付の表現練習を中心に行いました。また演技表現力を磨くためのダンスレッスン、体力維持のためのスイミングを実施。7月から9月にかけ、ナショナルトレーニングセンターや合宿での練習に取り組み、地方試合にも積極的に参加。プログラムのレベルと完成度をチェックしました。足の怪我で新しいプログラムの練習が出遅れ不安でしたが、アクアカップと関東サマートロフィーでは優勝できて良かったです。特に関東サマートロフィーでは10点以上演技構成点を伸ばすことができ、中でもInterpretation of the musicの評価が昨年より1.32倍と、表現力を強化した成果が表れました。今後は、試合のたびに自己ベストスコアを更新したいと思います。最後に台風15号の影響でホームリンクが来年5月まで使えなくなってしまい、他県まで練習に出向かなければならない状況ですが、このような状況でもスケートの練習ができていることに感謝しています」

上田麻理さん(研究)
上田麻理さん(研究)

「ブラインドサッカー競技中に発生する音の音響的特徴の解明と音環境・動作解析及び聴察力推定項目の作成を行っています。聴覚における知覚について、方向定位については先行研究が多く行われていますが、距離定位についての研究は少ないことから、ブラインドサッカーの距離定位に着目。選手が味方の選手へボールをパスする際に、ボールが移動した分の減衰量(音圧レベル)と選手間の距離が対応することを調べ、減衰量を把握することで、音で距離を知覚することが可能であるか否かを検証しました。
実際に、ボールをパスする人と受け取る人との間の音の減衰量を計測。音の物理現象としての計算値と実測値とが概ね一致していることから、この仮説のまま進めてもいいことが確認できたので、現在、音による距離定位訓練システムとして、減衰量が知覚できるための聴能訓練システムを構築しているところです。この後ブラインドサッカー日本代表選手に実際に取り入れてもらいインタビューと評価を行う予定です」

上村勇貴さん(選手)
上村勇貴さん(選手)

「今まで世界選手権に4回出場しました。リレーでは銀と銅のメダルを獲得したことがありますが、個人種目では4位が最高なので、今年こそメダルを取りたいと思い、チャレンジテーマを『2019年度に開催される世界陸上選手権大会などの国際大会で表彰台を目指す』としました。上半期8つの大会に出場。そのうちの一つ、6月の日本ID陸上競技選手権大会男子800mでは、1分58秒46という記録を出し10月に行われるINASグローバルゲームス派遣標準記録を突破、出場を決定しました。またこのタイムは2019年の世界ランキング2位の記録です。
INASグローバルゲームスは、国際知的障がい者スポーツ連盟(INAS)が主催する、知的障害を持つアスリートのための4年に1度の世界最大のスポーツイベントです。今年はオーストラリアで開催され、世界80カ国以上、1,000人以上のアスリートが集まり、10競技でメダルを競います。陸上競技800m日本代表3名のうちの一人として、メダル獲得目指してがんばってきます!」