中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2021年10月2日

2021年度 第15期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました

2021年度 第15期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会

10月2日(土)、2021年度第1回目の中間報告会を開催しました。今回は新型コロナウイルス感染拡大防止を目的にリモートでの実施となりましたが、当日は体験チャレンジャーの久保田真知子さん(スキージャンプ)、守屋拓海さん(ウインドサーフィン)、蠣崎優仁さん(自転車ロードレース)、研究チャレンジャーの中村雅俊さん、原村未来さん、佐々木多麻木さん、林七虹さんの7名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を報告するとともに、下半期の活動計画について発表を行いました。

参加いただいた審査委員(敬称略・五十音順)

伊坂忠夫審査委員長、景山一郎委員、川上泰雄委員、小島智子委員、定本朋子委員、篠原菊紀委員、瀬戸邦弘委員、高橋義雄委員、野口智博委員、村上晴香委員、ヨーコ・ゼッターランド委員、吉岡伸輔委員

中村雅俊(研究)
中村雅俊(研究)

片側のみのレジスタンストレーニングによって、非トレーニング側の筋力増強が生じるCross-Education効果の研究を進め、怪我やスポーツ障害を抱えるアスリートの筋力低下に貢献したいと考えている。この効果をより高く発揮させるには、私は伸張性収縮(ダンベルをゆっくり降ろすような動作)のみのトレーニングが有効だと考えている。それを明らかにするための研究を予定通り完了したが、その中で可動域の最終域や、筋伸張位トレーニングといった新たな視点が生まれてきた。山を登ったら、もう一つ山があったという感じ。今後は論文の執筆・投稿に加え、この新たな山に向けた研究プランを練っていく。

久保田真知子(スキージャンプ)
久保田真知子(スキージャンプ)

私の目標は、2026年冬季五輪(ミラノ/コルティナ・ダンペッツォ)への出場。そのためにはW杯メンバーに定着しなければならない。15期生に選ばれてあらためて気持ちを入れ直した矢先、着地でバランスを崩して前十字靭帯を断裂してしまった。私の競技人生の中では初めての大きな怪我。2月に手術をし、4月からリハビリを開始した。この期間は、トレーナーによるリモート指導で受傷の原因と考えられる動作の改善・強化(着地の衝撃に耐えられる筋力)に取り組んだほか、いままで手を付けられなかったマテリアルの変更も検討した。週末は先輩とともにジャンプ台に通い、コーチ目線でジャンプを客観的に見つめることに取り組んだ。その結果、助走、踏切における技術の重要性を再認識することができた。コンディションはまだ十分ではないが、10月末の全日本選手権に出場して新しいシーズンにつなげたい。

守屋拓海(ウインドサーフィン)
守屋拓海(ウインドサーフィン)

長い間、大会が開かれなかったが、4月にJWA逗子大会のプロクラスが開かれた。この大会で2位になり、今シーズンの目標である年間チャンピオンへの手ごたえを感じることができたが、それ以上に嬉しかったのがたくさんの観客の前で競技を行えたこと。やはり、モチベーションが高まるし、心から楽しいと思えた。ただ残念だったのが、2年連続でW杯が中止になってしまったこと。国際大会は、出れば出るほど強くなるという実感があるので、その機会を一つ失ってしまったのが残念でならない。一方で、新たに取り組んでいるフォイルが2024年パリ五輪の種目(iQFoil)になったり、海外のトッププロが使う高難度の技を習得できたり、トレーニングの中でたくさんの喜びもある。コロナ禍で何事も予定通りにはいかないが、楽しんでいればモチベーションを落とすことはない。

原村未来(研究)
原村未来(研究)

トレーニングの現場で活用できる簡易的な負荷強度スケールを作成し、運動指導の現場に貢献するための研究を進めている。これを実現すれば、たとえば子どもたちへの指導の現場で、筋や呼吸循環器系にどのくらい負荷がかかっているのかを確認しながら、テンポを上げたり、種目を変えたりしながら、適切なトレーニングを提供できるようになる。自体重負荷運動時の生理的強度の測定を終え、現在はデータのまとめと分析を進めている。自体重負荷運動から着手したのは、運動が苦手な子どもを含む幅広い対象を想定しているため。計画は順調に進んでいるが、課題としては、日常の運動習慣別に異なるスケールを作成する必要があるということ。そのために追加測定項目を設定し、身体活動量の質問シートへの回答を依頼している。

佐々木多麻木(研究)
佐々木多麻木(研究)

コンタクトを伴うスポーツではマウスガードが用いられるが、その製作には1週間ほどの時間を要するため、再生を必要とする場面ですぐに使用できないなどの課題があった。そこで、競技中に容易に外れない適合性と、衝撃に耐えうる物性を備えた4Dプリントスポーツマウスガードの開発に取り組んでいる。成型加工後に力が加わり変形しても、ある程度以上に加熱すると元の形状に回復する形状記憶ポリマーの開発を進めているが、当初想定していた材料の入手が困難になるなど計画に大幅な変更が生じている。一方で、東京オリンピック2020の選手村で、合計200個ほどのマウスガードを製作・提供する経験をした。トップアスリートからたくさんのフィードバックを受けることができ、その知見は本研究にも良い影響を与えている。

蠣崎優仁(自転車ロードレース)
蠣崎優仁(自転車ロードレース)

3月下旬にやっとフランスに渡ることができたが、現地に到着してすぐ3度目のロックダウンが始まり、当初の計画を大幅に変更しなくてはならなかった。5月末までのすべてのレースが中止となり、仕方なくトレーニングに集中することにした。ただこの期間を有効に活かすため、苦手とするタイムトライアルの強化に取り組んだ。レース再開後は予定通り「毎週2レース」のペースで実戦をこなし、9月までに35レースに出場した。この間には、ミニツールドフランスと呼ばれるツールドラブニールに日本代表として出場したが、落車して頭部を強打してしまった。迷いはあったが、一時帰国してきちんとした治療を受けることにした。目標とするプロチームとの契約もまだつかめておらず、ここまでの自己採点は60点。シーズンも終盤に差し掛かっている。まずは10月23日に開かれる全日本ロードレースU-23で優勝を目指す。

林七虹(研究)
林七虹(研究)

スポーツ競技者における鉄欠乏や貧血の要因には、鉄の不足や発汗、溶血(赤血球の破壊)などによる鉄の喪失、ヘプシジンによる鉄代謝の抑制などがあげられる。よって、運動が誘発する溶血を軽減することができれば、スポーツに取り組む人びとの鉄欠乏や貧血のリスクを低下できるのではないかと考えている。運動時のどのような衝撃が溶血に関連するのか? 衝撃の緩和で溶血の程度を減らすことはできるのか? ランニングを題材に、そうした不明点を明らかにしたい。10月に予備実験、12月に本実験を計画している。