中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2020年10月3日

2020年度 第14期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました

2020年度 第14期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会

10月3日(土)、2020年度第1回目の中間報告会を開催しました。今回は新型コロナウイルス感染拡大防止を目的にリモートでの実施となりましたが、当日は体験チャレンジャーの斎藤華南さん(フェンシング)、松本龍さん(フェンシング)、篠原琉佑さん(スノーボード・アルペン)、堀島行真さん(スキー・モーグル)、研究チャレンジャーの白石智也さん、佐藤冬果さん、山仲勇二郎さん、上田麻理さんの8名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を報告するとともに、下半期の活動予定について発表を行いました。

参加いただいた審査委員(敬称略・五十音順)

浅見俊雄審査委員長、伊坂忠夫委員、北川薫委員、草加浩平委員、小島智子委員、定本朋子委員、野口智博委員、福永哲夫委員、増田和実委員

白石智也(研究)
白石智也(研究)

世界を見渡すと、学校教育にて体育が軽視されている地域がある。私は開発途上国において有用な体育教員の研修モデルを開発したいと研究を行っている。当初の予定では上半期にホンジュラスとモンゴルで体育教員を対象とした研修を計画していたが、新型コロナウイルスの影響で渡航ができなくなってしまった。そうした半面、新しい活動も開始した。日本スポーツ振興センターが支援するスポーツ国際貢献事業に参画し、ペルーにおける体育教師の能力開発支援に取り組んでいる。すでにオンラインによる授業研究研修会(学会)を開催したほか、現地の関係者にコンサルテーションなども行っている。今後、学校現場の先生たちを対象としたオンライン調査などを進め、年度末には論文としてまとめたいと考えている。

斎藤華南(フェンシング)
斎藤華南(フェンシング)

自粛期間は主に機械トレーニングや、オンラインによるコーチの指導を受けていた。7月以降は各種合宿に参加したが、その中で太ももの肉離れを起こしてしまった。その一方で、自粛期間を有効に活用し、そうした機会にしかつかめないものを得られたと感じている。一つは、見る力をつけたこと。自分やトップ選手の映像をたくさん見ることで、自分なりに分析ができるようになったと感じている。また、ケガをしてしまった後は、苦手意識のあったディフェンス面の動作を身体にしみこませることに集中し、これも自分のものになりつつある。国内上位16人による全日本選手権は1回戦敗退となったが、インターハイの代替大会ではきっちり優勝することができた。今後は積極的に大学に出向いたり、合宿での練習の質を高めたりしながら、目標として掲げたJOCでの優勝に一歩一歩近づいていきたい。

篠原琉佑(スノーボード・アルペン)
篠原琉佑(スノーボード・アルペン)

コロナの影響でさまざまな計画の見直しを迫られたが、いまある環境でできることを考えて新年度をスタートした。まずはケガをした左肩のリハビリを行い、同時にフィジカルトレーニングにも力を入れた。コンディショニングや機能向上の取り組みについては、民間が提供するプログラムも積極的に活用した。予定されていたニュージーランド遠征が中止となってしまったので、その代替として国内の人工芝で滑走フォームチェックも行った。このような中、半期を振り返るとチャレンジの進捗は計画より遅れている。最も残念なのは海外での練習環境を確保できていないこと。雪などの環境だけでなく、人とのつながりや最先端の情報など、海外で練習することはさまざまな意味を持つ。現在、ジュニア世界ランキングは7位、シニアでは68位。この自粛期間でケガを完治させることができたので、間もなく始まる新シーズンでシニア60位以内を目標にチャレンジしていく。

佐藤冬果(研究)
佐藤冬果(研究)

ハーバード大学のロバート・キーガン博士(心理学)が、「構造発達理論」で大学生世代の発達課題としているのがSelf-authorship(SA)。自己主人公性と言い換えることもできるが、解のない課題に他者と協働して取り組むことが求められる現代社会で必須の能力とされている。私は「体育スポーツによるSA発達プロセスモデルの提示」を今回のチャレンジの目標に掲げている。当初の予定では上半期にSAを意図した授業の実践、数量的評価、インタビュー調査を完了している予定だったが、大学で体育授業が開講されず、また調査対象となる受講生が不在だったことから、これらを下半期にスライドすることにした。その代わりの新たな研究として、昨年度の体育授業の学期末レポートの内容分析などを行った。計画の変更はあったものの第4四半期には論文をまとめ、海外のジャーナルへの投稿を行いたい。

松本龍(フェンシング)
松本龍(フェンシング)

上半期は、オンラインによるU-20 のトレーニングに取り組んだ前半と、シニア/ジュニアの日本代表合宿に参加した後半に大別することができる。目の前に相手がいないオンライントレーニングでは、フェンシングで重要な距離感というものがない。そこで、一人でもできるフィジカルの強化とフットワークを鍛えるトレーニングを積んだ。7月からは国内合宿が開かれるようになり、徐々に実戦の感覚を取り戻していった。コンディションが上がっていった8月の合宿では、シニアのスピードについていける自信が持てたし、シニア選手に勝つこともでき自信を得た。全日本ではトップ選手に敗れて6位になったが、勝つチャンスはあったと思っている。スピードも技術も歯が立たないという印象はなかった。ただ、流れをつかむ試合運びという点では、相手が一枚上だったと思う。ポイントの精度アップ、下半身のフィジカル向上といった課題を解消しつつ、長身を活かした自分の長所をさらに磨き、世界ランキングを上げていきたい。

山仲勇二郎(研究)
山仲勇二郎(研究)

私の研究は、光と運動による生物時計調節メカニズムを解明するもの。具体的には、生物時計の光反応性を評価するメラトニン光抑制試験を用いて、高照度光下での運動が生物時計の光反応性を増強するか否かを検証する。この研究を基盤に運動による効果的な生体リズム調整法を開発することができれば、時差ボケなどに悩むアスリートの支援などに貢献できると考えている。一方で、コロナ禍では研究計画の見直しが必要となった。当初の計画では健康な成人男女1名に対し5条件を予定していたが、これを2〜3条件に絞って実験を進めていく。感染症対策を十分に施したうえで、実験を完遂したい。

堀島行真(スキー・モーグル)
堀島行真(スキー・モーグル)

現在の世界ランキングは2位。No.1のミカエル・キングスベリー選手(カナダ)を抜いて世界一となるために、あらためて自分に伸びしろのあるポイントに着目して分析を行った。その結果、ターン、エア、スピードの3つの項目のスコアのうち、改善時に効果が最も期待できるのはターン、続いてスピード、そしてエアの順であることが明らかになった。一方、直近4試合でのキングスベリー選手との対戦は2勝2敗だが、彼の最高点は90.80。確実に凌ぐためには91.00が必要となるという仮説から、91点の滑りという視点でも検証した。その結果、タイムの向上が欠かせないことを確認でき、足の回転を速くするための陸上練習に取り組んでいる。12月上旬のシーズンインまであと2か月。充実した準備で世界一を獲得したい。

上田麻理(研究)
上田麻理(研究)

私の専門領域は音響工学と聴覚心理、そして生理学。これらを組み合わせて「音と〇〇」といった応用音響工学の研究を行ってきた。「音とスポーツ」に取り組み始めたのは5年ほど前から。本チャレンジでは、スポーツ競技力向上のための聴能訓練システムの開発と評価をテーマに研究を進めている。上半期は、競技中に発生する音が競技者にどのような影響を与えているか? また、どのような情報をもたらしているか? についてWebアンケートを実施した。その結果、アンビエントサウンドの影響には競技により差があること、野球の内野手においては経験が少ないと影響を受けやすく、経験の長い選手は発生音を活用する可能性を持っているという傾向が見られた。コロナ禍で研究活動にも影響は出ているが、無観客試合の影響や、観客側への調査などにも今後取り組んでいきたい。