スポーツチャレンジ賞

スポーツ界の「縁の下の力持ち」を称える表彰制度
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【対談】遠藤謙×佐藤圭太

【対談】遠藤謙×佐藤圭太/いつか義足もメガネのように

いずれ義足のランナーの方が速い時代は来る

【対談】遠藤謙×佐藤圭太

遠藤たとえば、アメリカの例で言うと、NPO法人が、1年間に30億円ぐらいとか、すごい金額の資金を集めて、そのお金を使ってパラスポーツを盛り上げる活動を展開していたりします。そういうNPO法人が、アメリカにはいくつも存在しています。

YMFSそれはすごいですね。

遠藤これがヨーロッパになると、メーカーが主導して、自分たちの販売促進活動の一環でパラスポーツを支援しています。じゃあ日本とかアジアではどれがマッチするかと言うと、まだ僕には見えてはいないですが、パラリンピックとかパラスポーツの大会が盛り上がって、そこからトップダウン的に裾野が広がっていくようなモデルが合っているかもしれませんね。

佐藤遠藤さんって優しいんですよね。これだけ能力があったら、もっとお金稼ごうと思えばいくらでも稼ぐことができる人だと思うんですよね。でもそういうことはせずに、こうやって利他の精神で活動してるし。

遠藤結局のところ、僕はモノを作るのが好きだし、こうやってモノを作ることで社会の課題を解決してゆくのが楽しいんです。さっき「縁の下の力持ち」って言葉が出ましたけど、僕なんかよりももっと見えないところで頑張っている本当の「縁の下の力持ち」はたくさんいますから。僕はそういう人たちをすごくリスペクトしていますし、そういう人たちが正しく評価されて報われる社会であって欲しいと願っています。

YMFSでは最後に、お二人が考えるこれからのパラスポーツについて教えてください。

佐藤僕自身は常々パラスポーツをしているという感覚はなくて、ただ単に陸上競技をやっているだけなんです。そして僕の周りもそういう感覚の持ち主が多いですね。ですから、最終的にはパラスポーツっていう単語自体がなくなって、いずれはすべてがクロスオーバーする時代が来るのではないかと感じます。

【対談】遠藤謙×佐藤圭太

遠藤特に陸上競技はそうなるかもしれませんね。パラスポーツが今、なんでまだ取っ付きにくいかと言うと、あらゆるセクターの人がパラスポーツという一つの共通ワードで集まると、微妙に話題が合わないんですよね。医療従事者にとっては、リハビリテーションであり、アスリートからすればそれは単なるスポーツに過ぎないし。
僕自身はスポーツ好きなので、最終的には単純にスポーツとして楽しめるようなもの、エンターテイメントになっていくといいな、と願っています。100mは厳しいかもしれないけれど、200m、400mあたりでは義足のランナーの方が速い時代は来ると思いますよ。

YMFS健常者も、義足のランナーも、すべてのアスリートが同じ舞台でタイムを競う、そんな日が来るのもそう遠くないのかもしれませんね。本日は楽しいお話、本当にありがとうございました。

【対談】遠藤謙×佐藤圭太

<了>

写真=近藤 篤 Photograph by Atsushi Kondo

【対談】遠藤謙×佐藤圭太

佐藤圭太

KEITA SATO

1991年7月26日 静岡県藤枝市出身。
中学3年生、15歳でユーイング肉腫を患い右下肢膝下15cm以下を切断、高校入学後、リハビリの一環として陸上競技をはじめる。中京大学在学中の2014年、ロンドンパラリンピックに出場を果たす。その後、2016年リオデジャネイロパラリンピックに出場し、4x100mリレーで銅メダル獲得。100m(2016年)、200m(2013年)のアジア記録、日本記録(T64クラス)を樹立した。トヨタ自動車所属。