スポーツチャレンジ賞

スポーツ界の「縁の下の力持ち」を称える表彰制度

第16回 表彰式

第16回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞表彰式を実施しました

第16回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞表彰式

5月28日(火)、東京都千代田区のソラシティホールにて、「第16回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞 表彰式」を実施しました。

2023年度のスポーツチャレンジ賞は、「Blade for All ~“だれもが走れる社会”を実現するために~」を掲げ、走りたいという希望を持つ義足ユーザーの支援に取り組む遠藤謙氏が受賞。表彰式では当財団の木村隆昭理事長から、表彰状とメダル、賞金(目録)、記念品を贈呈されました。

受賞者コメント|遠藤謙氏
受賞者コメント|遠藤謙氏

僕は、Blade for Allというプロジェクトの前に、Xiborgという会社を始めました。速く走れる義足を作りたいといろいろな人に声を掛けましたが、ほとんど共感してもらえませんでした。本当にきつい思いもしましたが、そうした中でもパラアスリートの池田樹生選手、佐藤圭太選手、春田純選手、そして義肢装具士の沖野敦郎さんらが初期の活動に理解を示してくれました。
手探りで活動を始めて、「1人でもいいから、義足の子を走れるようにしてあげたい」という佐藤選手の言葉をきっかけに「ギソクの図書館」も始めました。そのうちに、地方の人たちから「東京まで行けない」という声が聞こえてきて出張するようになり、活動の輪が広がっていきました。
僕は義足を作っていますが、それだけでは活動は進みません。一つ例をあげると、あるイベントで、みんなが楽しく走っているのに義足でうまく走れない女性がいました。それを見つけた池田選手がマンツーマンで指導して、最後には笑顔でリレーを走ることができました。これがスポーツの素晴らしさであると感じるとともに、エンジニアのアプローチからはたどり着けない領域があることも実感しました。
昨年、ある義足の男の子が、がんの再発で亡くなりました。その子は最初の抗がん剤治療が終わった後に「ギソクの図書館」に見学に来てくれて、体力がない中、少しだけ走って帰りました。治療で体力が失われていたので、回復してからのほうがいいじゃないかという声もある中、佐藤選手が「いや、すぐにやるべきだ。その場でできることをやるべきだ」と言い切りました。しばらくして彼は残念ながら亡くなってしまいましたが、お父さんは「あのときに走れて良かった」と言ってくれました。走る。楽しく走る。ただそれだけのことが、人生においてどれほど意義があるかということを痛感しました。
僕はこの活動を進めるとき、必ず「僕たち」とか「私たち」と複数形にして発信しています。僕はブレードという板バネの部分しか作っていません。ソケットの部分は義肢装具士さん、それを使って教えるのはアスリートたち、そして彼らを支えるスタッフの皆さんもいます。ですので、ここにいる人もいない人も含め、プロジェクトに関わる全員で受け取った賞だと認識しております。このような素晴らしい賞をいただいて、本当にありがとうございました。

主催者挨拶|木村 隆昭 (ヤマハ発動機スポーツ振興財団 理事長)
主催者挨拶|木村 隆昭 (ヤマハ発動機スポーツ振興財団 理事長)

遠藤謙さんは、「走りたい」と願うすべての義足ユーザーがその希望を叶えられるよう、義肢装具士やパラアスリートの皆さんと連携し、テクノロジーと環境整備の両面から「だれもが走れる社会の実現」に向けてチャレンジされています。
「走る」という行為は、おそらくスポーツの最も根源的な部分であろうと考えます。しかし、義足ユーザーが「走りたい」という思いを抱いてから、実際に「走れた」となるまでにさまざまな障壁があることを、私たちは遠藤さんらの活動を通じて知ることができました。そうした障壁を丁寧に一つずつ取り除き、「走りたい」から「走れた」までをつなぎ合わせるBlade for Allの活動の意義に、私自身、強く感銘を受けております。
安価なブレードの開発をはじめ、体験会やランニング教室の開催、そして「ギソクの図書館」の開設など、遠藤さんとその仲間・理解者の皆さんによる、幅ひろく、実効性の高いこれらの取り組みにあらためて敬意を表します。おめでとうございました。

来賓祝辞|和田 訓(スポーツ庁 健康スポーツ課 課長)
来賓祝辞|和田 訓(スポーツ庁 健康スポーツ課 課長)

遠藤様、ならびに関係者の皆さま方に、心よりお祝いを申し上げます。誠におめでとうございます。
さて、皆さま方もご承知のとおり、今年はパリオリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。スポーツ庁ではこの大会を好機として、スポーツが生活の一部となり、スポーツを通じた楽しさや喜びの拡大、共生社会の実現など、一人一人の人生や社会が豊かになるというスポーツ・イン・ライフの姿を目指し、スポーツ振興に資する施策を一層取り組んでいます。遠藤様の取り組みは、走りたい希望を持つ義足ユーザーが直面する障害の解消に向けて、だれもが走れる社会を実現するものと伺っています。この取り組みは、スポーツ庁で推進している第3期スポーツ計画に掲げる、スポーツをする、見る、支えるの実効性を大きく高めるものであると考えています。本日、ご臨席の皆さま方におかれましても、これから生涯を通じてスポーツに親しみ、健康で活力のある気概に満ちた生活をお送りいただくことを期待しております。

選考経緯|伊坂 忠夫(ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞 選考委員長)
選考経緯|伊坂 忠夫(ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞 選考委員長)

本日は誠におめでとうごいます。遠藤さんの業績の一つ「ギソクの図書館」は、走りたくても走れない人たちを、走れるようにする、あるいはそういう喜びを味あわせる、かつ、未就学児も含めて、成長著しい時期であればこそ義足のマッチングが難しい中で、多くの方にその体験をしていただくという献身的な活動に私たちは着目しました。
加えて、「障害は技術のほうにある」という言葉も拝見しました。エンジニアとして、技術で違いを乗り越える。むしろ、その違いをうまく利用できるんじゃないかというところの発想、その思いを持ったイノベーション、そしてそこから新たなチャレンジを生み出したことに対しても、我われは大きな敬意を払っています。遠藤謙さんを表彰できたことを、我われも誇りに思っております。私たちも遠藤謙さんの功績やチャレンジの姿勢を学びながら、YMFSをますます発展していきたいと思います。

※敬称略