中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2024年10月12日

2024年度 第18期生スポーツチャレンジ助成 第3回中間報告会を実施しました

2024年度 第18期生スポーツチャレンジ助成 第3回中間報告会を実施しました

10月12日(土)、2024年度第3回目の中間報告会を東京・御茶ノ水ソラシティで開催しました。今回は体験チャレンジャーの大島朱莉さん(ウインドサーフィン)、研究チャレンジャーの鈴木智大さん、野中愛里さん、清水純也さん、阿藤聡さん、林勇樹さん、犬走渚さんの7名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を振り返るとともに、下半期の活動計画について発表を行いました。

参加いただいた審査委員(敬称略・五十音順)

伊坂忠夫審査委員長、片山敬章委員、杉本龍勇委員、瀬戸邦弘委員、増田和実委員、能瀬さやか委員、村上晴香委員、吉岡伸輔委員

2024年度 第18期生スポーツチャレンジ助成 第3回中間報告会を実施しました
鈴木智大(研究)
鈴木智大(研究)

陸上競技を対象とした簡便かつ正確な動作測定と、3次元分析を可能とするシステムの開発にチャレンジしている。その技術を活用してトレーニング中の動作を長期間にわたって収集・分析することで、アスリートへのより有効なフィードバックが可能になると考えている。上半期では、カメラ較正が不要で測定も容易な姿勢推定技術を開発し、国際会議や国内の学会での発表や検討を行った。一方、その過程で姿勢推定技術の性能が学習データに過度に依存しているという課題が浮き彫りとなり、現在、その改良に取り組んでいる。具体的には、分析目的の動作にその都度、Few-shot学習する手法が有効なのではないかと考えている。今後は、こうした手法を完成させるとともに、動作分析用AIの構築とその実応用の検証を進めていく。

大島朱莉(ウインドサーフィン)
大島朱莉(ウインドサーフィン)

国際大会派遣の選考会を兼ねた蒲郡カップで優勝し、7月にイタリアで開かれたユースワールドカップに出場した。18位という結果だったが、主にスピード、風に対する角度、フィジカルの3点で海外選手と自分の実力差を実感した。また、セールのチューニングやフォイルの角度についても、もっと突き詰めていかなくてはならないと新たな課題も持ち帰った。一方で、スタート時の位置取りやそのスピードなど自信をつかんだ面もあった。下期には、スペインで開かれるユース&ジュニアの世界選手権にU17で出場する。合宿や部活(ハンドボール部)でのトレーニングを通してさらにフィジカルを高めていくとともに、技術面では海外選手がレースで使っているフォイルタックを習得したい。これをマスターすれば、ロスの低減につなげることができる。

野中愛里(研究)
野中愛里(研究)

本チャレンジでは、大きな力発揮を必要とする投擲競技において、より少ない力で投擲物を加速させるための身体の動かし方を探求している。これを明らかにすることで、小柄な日本人の競技力の向上や障害リスクの低減にも結び付けられると考えている。ケーブルと回転軌道の接線の角度を小さくすれば、ケーブル張力から加速への変換率を高められることや、競技者が引っ張る力の方向を微妙にコントロールしながらケーブルの姿勢を変えていることなどがすでにわかっている。この角度をより小さくするために、適切なハンドルへの力の加え方と体幹の動かし方を明らかにし、より小さな力で投擲物を加速させるために必要となるトレーニングの再検討などに結びつけていきたい。

清水純也(研究)
清水純也(研究)

トレーニングによる骨格筋の適用範囲には大きな個体差がある。しかし、その個体差がいつ・どのように生じるのかは明らかになっていない。私はそのメカニズムをひも解くために、エピジェネティクスに着目してマウスによる実験を行った。その結果、筋の運動適応における個体差は運動歴と関わりがあり、EZH1/H3K27me3/H3K4me3によって生じるものと示唆された。このような運動誘発性ヒストン修飾の研究は、筋老化に対抗し、生涯にわたって筋の運動適応制御システムを担う可能性を持っていると感じている。

阿藤聡(研究)
阿藤聡(研究)

加齢に伴って骨格筋の毛細血管支配が低下することは知られているが、運動抵抗性と骨格筋毛細血管支配の因果関係は明らかになっていない。本チャレンジでは、この点について実験動物をモデルに研究を進める計画だったが、自然加齢マウスを助成期間内に入手できないという課題に直面した。その代替として、現在は血管支配の改善によって収縮による筋肥大応答が改善するメカニズムと、非薬理的介入による毛細血管支配改善と筋肥大応答改善の可能性に関する探索・検証を進めている。前者はサンプルの解析を進めており、後者については現在介入実験を実施している。

林勇樹(研究)
林勇樹(研究)

競技力向上につなげるための映像を、会場の環境に関わらず、自動制御で収録可能な汎用システムの開発にチャレンジしている。また、泳速変動の可視化にも取り組み、泳ぎのどの部分が加速・減速を生んでいるのか、直感的なフィードバックができるようにも発展させたいと考えている。パリ五輪では試験的な運用を実施し、追尾撮影中に分析やフィードバックを行えるなど手応えを得た。また国民スポーツ大会でも、各都道府県の科学サポートスタッフに対して映像提供のテストを行った。日本代表クラスから全国のさまざまなレベルの競泳選手まで活用できるシステムを目指している。下半期は、位置データと映像を組み合わせ、新たな価値の創出にチャレンジしたい。

犬走渚(研究)
犬走渚(研究)

ボルダリングやダンスなどの全身運動では、手と足をそれぞれ目標位置まで同時に移動させることが求められる。ヒトは手と足の運動をどのように制御して全身運動をつくりだすのか、行動実験と数理モデルを用いたシミュレーションに取り組んでいる。上半期では、健常な成人11名に対して、肘と膝関節の進展運動課題による実験を行った。この結果、手足の同時運動において、手と足の運動は時間的に協調して制御され、脳は運動目標に応じて手足の動き出し時間や運動速度を柔軟に調整することが示唆された。さらに研究を進め、こうした手足の協調関係が何を目指した結果として現れたのかを明らかにしていきたい。現在、そのための実験課題のデザインに取り組んでいる。