
- 氏名
- 植田 俊(うえたしゅん)
- 所属
- 東海大学国際文化学部地域創造学科
- 助成実績
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スポーツチャレンジ研究助成(基本):第17期生
視覚を用いない〈みるスポーツ〉の可能性を探る実践的研究―スポーツ・ソーシャル・ビュー開発の試み―
スポーツチャレンジ研究助成(基本):第16期生
〈障害者―健常者〉関係をゆるがすアダプテッド・スポーツ実践―協働的実践としてのタンデム自転車の事例―
協働的なスポーツ実践を通じて、スポーツにおける規範的な〈障害者―健常者〉関係がゆるがされ脱構築されていくプロセスと新たに構築される関係の内実を、視覚障害者と晴眼者によるタンデム自転車実践の事例から明らかにする。課題解明のポイントは、自転車を上手く乗りこなして共に「楽しむ」ために直面する課題を克服していく協力の過程が、視覚障害者・晴眼者が各々もつ「障害者像」「支援者像」をいかに解体しているかである。
スポーツチャレンジ研究助成(基本):第14期生
スポーツにおける〈視覚〉の社会的構成に関する研究―ブラインドランナー -伴走者関係と相互作用に着目して―
スポーツにおける視覚障害者の〈視覚〉が、スポーツ実践を支援する健常者との相互作用を通じて構築されていくプロセスと〈視覚〉の内実を、ブラインドマラソンにおけるランナーと伴走者の事例から明らかにする。課題解明のポイントとなるのは、伴走者との関係を通じて、視力の低いブラインドランナーがどのように自らの「見え方」=〈視覚〉を構築し、ランニング時における「安心感」を獲得しているか、という点である。
成果報告(2021年3月)
コロナ禍のため、インタビュー・参与観察による調査の遂行が計画通りに進まない時期もあったが、結果として研究開始前の想定以上の成果を得ることができた。既存の量的調査結果の及び先行研究の整理を通じて、視覚障害者のスポーツ環境は「人」によるサポート、特に視覚障害者が「体を動かしたい」と思った時に支援者が対応できる環境整備のあり方(クラブ、指導者、ガイドヘルパーの人材配置など)の解明に未だ課題があることが分かった。
一方で、ブラインドマラソンランナーへの調査を通じて、視覚障害者たちがランニング時に構築しているイメージ(=空間認識)の内実を明らかにすることができた。彼らは決まった場所に在ったり聞こえてきたりする「動かないモノ(=空間情報)」(例:街路樹、街灯、コースの傾斜・凹凸、スタート地点からの距離、環境音)の情報を活用し、自分が今走っている位置や場所の状況をイメージしていた。しかし、ランニング時に最もリスクとなる、時と場合によって変化するためにイメージしにくい「動くモノ(=時間情報)」(例:他の利用者、季節ごとの路面の変化)に対しては、伴走者からの情報提供や誘導によって回避していた。
この調査結果から、ランニングにおける視覚障害者の〈視覚〉は、人と空間との相互作用によって構築される社会性を持つものであることが解明できた。そのプロセスにおいて、時間情報が空間情報へと変換されることが重要となる。