スポーツチャレンジ賞

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第5回 奨励賞 江黑直樹

第5回 奨励賞 江黑直樹

「楽しいリハビリスポーツ」の普及をめざした日本女子ゴールボールチーム金メダルへの挑戦

ゴールボールの本質は、視覚障害者が楽しみながら「音をとる能力」や「方向や位置を確認する能力」を養うリハビリスポーツ。その効能は日常生活にも役立つものでありながら、これまで競技の存在自体が広く知られてはおらず、また視覚障害者の間でも「痛い」「怖い」というイメージが先行して普及には至らなかった。日本ゴールボール協会の理事でもある江黑氏は、代表チームの活躍や各種普及活動を通じてリハビリスポーツとしてのゴールボールを広めるため、人々の注目が集まるパラリンピックでの金メダル獲得をめざした。

ヘッドコーチとして日本女子チームを率いたアテネパラリンピックでは、初出場ながら銅メダルを獲得。アシスタントコーチとしてチームを支えた北京パラリンピックは7位に終わったが、北京大会後、再びヘッドコーチに就任するとロンドンパラリンピックまでの4年間にわたる長期強化計画を組み、栄養、心理、体力測定・強化、映像サポートなど、各分野の専門家に協力を仰ぎながら積極的に科学的トレーニングを導入・実践した。選手の多くはスポーツ未経験者であったことから、その指導は生活習慣の改善にまで及んだ。

また、ゴールボールの競技特性をあらためて研究・分析するとともに、日本人の俊敏性を活かして攻守の切り替えスピードとカバーリング技術を徹底して磨き、日本チームのストロングポイントである鉄壁の守備を築き上げた。同時に国際大会への出場頻度を倍加させ、選手の経験値を高めるとともに、日本独自の技術や作戦の精度・熟度を高めていった。こうして挑んだロンドンパラリンピックでは、それまで重点的に取り組んできた守備力で強豪国を上回り、夏季・冬季合わせて日本初となるパラリンピック団体競技での金メダル獲得を実現した。

第5回 奨励賞 江黑直樹

江黑直樹ゴールボール女子日本代表チーム ヘッドコーチ(1965年生・埼玉県出身)

帝京高校、日本体育大学卒業。大学時代から障害者教育の現場に携わり、卒業後は全国障害者総合福祉センターや国立福岡視力障害者センターに勤務。2001年からは日本ゴールボール協会の運営委員(2003年から理事)としてゴールボールの普及・強化に取り組み、アテネパラリンピック(2004年)では女子日本代表チームのヘッドコーチ、北京パラリンピック(2008年)ではアシスタントコーチとしてチームを支え、ヘッドコーチに再任したロンドンパラリンピック(2012年)ではチームを悲願の金メダルに導いた。現在は国立障害者リハビリテーションセンターで理療教育・就労支援部の教官を務める。