スポーツを楽しむ心を育む「ボッチャ」。
ユニバーサルスポーツには不思議な力がある!
2024年11月21日(木)、“障害の有無にかかわらず、子どもたちが体を動かすきっかけとなる、スポーツを好きになってもらう体験機会の提供”を目的とする「チャレンジ!ユニ★スポ」を、浜松市立引佐北部中学校で、実施しました。
応募してくる学校はさまざまな狙いを持っていますが、そのなかでも「福祉」の授業として実施されている割合が多いというのが実情です。2024年度は当選した10校のうち8校が「福祉」の授業であり、残りの2校が「体育」の授業としてユニ★スポを実施し、その一つが今回の引佐北部中学校でした。
参加したのは1〜3年生の総勢33名。さらに、小中一貫校であることから、休み時間には好奇心旺盛な小学生たちが飛び入りで体験したり、教員の皆さんも積極的に参加。コミュニケーションをとり、体を動かし、みんなで楽しんでいただきました。
今回、応募してくれたのは「体育」を担当する加納みず来先生。最初のきっかけは車椅子の生徒の存在だったと言います。「以前は私自身にとっても障害者スポーツは身近なものではなく、正直、興味を持ったこともありませんでした。ですが、車椅子で生活する生徒を教えるようになり、彼ができるスポーツを紹介するようになったところから、興味を持つようになりました」。そこで出会ったのが「チャレンジ!ユニ★スポ」でした。
応募の動機をお聞きしたところ、「普段からみんなにスポーツを楽しんでほしいという意識で体育の授業を進めています。その環境を作るために、スポーツが得意な生徒には苦手な生徒をサポートする意識を持ってもらうよう声をかけてきました。それでも車椅子の生徒は多くの競技に参加できません。ですがやっぱり、全員でスポーツがしたい。特に彼はスポーツがすごく好きなので、彼も含めてみんなでスポーツを楽しみたいという気持ちを常に持っていたからです」
授業は1〜3年生が混合で4チームを作り、総当たり戦で勝敗を決することとし、教員もチームに入って一緒に競技を進めました。ともに体験した加納先生は、「好プレーで盛り上がるのはもちろんですが、ミスがあったとしても盛り下がらないことが一つの特徴。また、他の競技は個々がプレーに専念するばかりですが、自然と会話が進みコミュニケーションが生まれることが強み」と感じたようです。
さて、引佐北部中学校の生徒たちのスポーツに対する取り組みについては、大きな課題はないということでしたが、体育科教員としては、「もっとスポーツをやってほしい、楽しんでほしい」という思いがある中でボッチャに可能性を感じているようです。
「私自身は、汗をかく、体を動かすことがスポーツであるという意識がありました。ですが、今はスポーツにもいろんな形があり、それを受け入れています。一方、子どもたちにはそもそもそういった感覚はなく、最初からスポーツとして受け入れる柔軟さを持っていることがわかりました。また今回は学年だけでなく、人間関係に配慮することなくグループを作っていますが、みんなで会話しながらスポーツとして楽しんでいることから、とてもいい競技だなと改めて感じました」
参加した生徒からの声としては…
- みんなで励ましあったり、盛り上がったりできたことがとても楽しかったです。
- 大量得点での勝利も楽しいけれど、接戦で勝利した時の嬉しさはまた特別でした。
- 作戦タイムでは、みんなで相談して投げる順番を決めたり、どうすれば近づけるかを考えました。実際にやってみて状況が変わった時も、みんなでアドバイスしあいながらできました。とても楽しかったので、またやりたいです。
- ボッチャは先生が入ってできるし、学年も関係なくみんなで楽しめるものだとわかりました。そういった機会はあまりないのですごく楽しかったです。
加納先生の思いが通じたかのように、生徒たちにも連携・協力してみんなで考えることができ、年齢や性別を超えてみんなで楽しめるスポーツがあることが伝わったようです。生徒や教員の様子を見て、その声を聞いたことで、「最初は体育の授業として取り上げるのは難しいと考えていました。ですが、この体験会を通じて戦術的な部分で頭を使う必要があるし、スポーツとしてもおもしろいので、3年生の授業で単元として3学期にボッチャを取り上げてみたいなと思いました」と、その可能性に確信を持ったようです。
「途中で飽きてしまうのではないかと心配していましたが、こんなに最後まで盛り上がるとは思っていませんでした。こういったことは通常の体育で取り上げる種目にはないので、ユニバーサルスポーツ、パラスポーツには不思議な力があるんだなと感じました」
今後は、小学1年生〜中学3年生まで幅広い子どもたちがいるからこそ生徒会の活動などでボッチャをやってみたり、保護者や地域と連携した活動など、すでにさまざまなアイディアが生まれています。引佐北部中学校での発展が楽しみです。