中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2014年9月27日

平成26年度 第8期生スポーツチャレンジ助成 第2回中間報告会を実施しました

平成26年度 第8期生スポーツチャレンジ助成 第2回中間報告会を実施しました

9月27日(土)、ABCアットビジネスセンター(東京都)にて平成26年度 第2回目の中間報告会を実施し、幅広い分野のチャレンジャー8名が集まりました。体験チャレンジャーは大川晴さん(アルティメット/指導者)、荻原京さん(スキー・フリースタイル モーグル/選手)、竹内愛奈さん(アイスホッケー/選手)、さらに第7期生のOG、梅野裕理さん(スキー・障がい者スポーツ/選手)が参加。研究チャレンジャーは蔦木新さん、西牧未央さん、瀬戸邦弘さん、そして外国人奨学生はサヤラット・ポンナリーさんが出席しました。チェコのアイスホッケーチームに所属している、体験チャレンジャーの三浦優希さん(アイスホッケー/選手)は、すでにシーズンがスタートしているため、ビデオによる発表を行いました。

コンゴ共和国でアルティメットナショナルチームの監督を務める大川さんからは、チーム構築や普及活動について、荻原さんはオーストラリア遠征や新技の開発、梅野さんからは強化指定選手となったこと、そして竹内さんからはカナダのアイスホッケーリーグへの所属が決定したことが発表されました。また、研究チャレンジャー・奨学生からは、フィールドワークで得られた知見、その分析結果や、これからの活動について発表されました。これに対して審査委員の皆さんからは、取り組み姿勢や計画の見直しなどのアドバイスがあり、チャレンジを進めていく上での貴重な機会となりました。

報告会後には、「フェアプレーとは何か?」というテーマで座談会を実施し、今回は「ルールとマナー」の位置づけと、その考え方が議論の中心となりました。ルールは「勝敗を決め、また試合を面白くするためにある。皆が最低限守るべきもの」、マナーは「国家、民族、社会により独自性があり、日本の考え方だけで決めるのは難しい」などさまざまな意見があり、それぞれが今後世界と戦う中でフェアプレーを考える良い機会となりました。






参加いただいた審査委員

浅見俊雄審査委員長、遠藤保子審査委員、北川薫審査委員、篠原菊紀審査委員、杉本龍勇審査委員、高橋義雄審査委員、丸山弘道審査委員、綿貫茂喜審査委員(五十音順)


梅野裕理さん(体験/スキー・障がい者スポーツ/選手)

現在、チェアスキーと同時に、水泳も競技としても取り組み、2重のチャレンジを行っている。まず水泳は、授業の関係で週に2・3回程度しか参加できなかったが大学の水泳部に入部。また、障がい者の水泳団体、神戸楽泳会に入会し、自分の障がいを踏まえて専門的なトレーニングに触れる機会を作った。しかし、近畿障がい者水泳選手権では、自己記録にはほど遠い状態で、練習不足を痛感することとなった。これは昨年に体脂肪が落ち過ぎ、それを取り戻せないままシーズンに入ったため十分なトレーニングができなかったことが原因。そこで、管理栄養士による本格的な栄養指導を取り入れ、現在も継続している。

一方チェアスキーでは、正式に強化指定選手に選ばれ、この冬に海外でのクラス分けレースに参加することが決定した。今後は、まず競技に最適な体作りをすること、そしてクラス分けを受け、世界のレースに出場して高いレベルに触れていきたいと考えている。

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蔦木新さん(研究)

筋肥大は単回の運動による筋タンパク合成の蓄積によって起きると考えられるが、私のチャレンジはこの筋肥大のメカニズムの研究である。筋タンパク合成は細胞内のシグナル伝達系により調節されており、良く知られているのがmTORC1である。これが活性化することで筋タンパク合成を促すと考えられているが、このmTORC1が活性化するには下流因子があり、これが筋タンパク合成を促す役割を担っていると考えられ、それらが連鎖的に起こることにより、筋肥大がしやすい状況になるのではないかと仮説を立て研究を行った。

チャレンジの前半では、短い期間で、動物を用い周波数の強弱や筋収縮回数を振り分け最適な筋タンパク合成条件を導き出す実験を行った。高周波数電気刺激による筋タンパク合成は、単回の運動後6時間後に最も亢進するが、低周波数電気刺激では3時間、6時間12時間のいずれの時点でも亢進はみられなかった。また、長期による電気刺激を用いた筋肥大反応の確認も実施した。今後は得られた情報のさらに分析していくことになる。

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竹内愛奈さん(体験/アイスホッケー/選手)

当初は、北米の大学リーグを目指していたが、大学試験をパスできない可能性、競技と学業の両立、短い期間の留学であることから、世界最高峰の北米リーグ(CWHL:Canadian Women’s Hockey League)のクラブチームへの所属を目指すこととした。まず5月からスタートした新シーズンでは、氷上トレーニングを中心に、陸トレ、ウエイトトレーニングを実施。パワー系は成果を感じることができたが、持久形は成果がみられなかったことから、見直しを図りながら取り組みを続けた。このほか、8月は苦手なPULL系種目やアジリティーの向上を目的としたトレーニングを取り入れた。

さらに8月には、CWHLのドラフトがあり、チーム8巡目で指名をもらい9月のトライアウトに参加してきた。守備面、パスなどの強みを発揮でき、メダリストと練習を行い世界トップの実力を感じるなど良い面もあったが、失敗したときにプレーの質が低下してしまうことや、コミュニケーションでマイナスを感じた。だた、無事にトライアウトを合格し、10月からチームに合流することが決定した。また11月には日本代表戦が控えている。これは日本がトップディビジョンで最下位だったこともあり、ディビジョン1のトップとなったチェコとの入れ替え戦である。次のオリンピックにも影響があるため、絶対に勝利することが必要になり、CWHLとともに強く意識して取り組んでいきたい。

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西牧未央さん(研究)

急速減量とは、比較的短期間での激しいトレーニングや極度の食事制限、水分摂取制限を伴う減量のことである。これにより、脱水症状、免疫機能低下、体温調節機能低下、低血糖などが生じる恐れがあるが、この研究は、この実態の把握や実施者の意識改善を目的としている。

そこでまず、急速減量期間の違いによる、持久性パフォーマンスと生体内の応答マーカーの変動を測定するため、被験者に1日、3日、7日という異なる期間で急速減量を実施してもらい、最大酸素摂取量と生体内評価を実施した。7名の健常男子現役選手を対象に行っているが、現状では試合等の影響により、2名分の実験、測定しか終わっておらず、統計も完了していない状況にある。しかし、ある一定未満の減量であれば、期間が短い減量の方がパフォーマンスや生体内の影響が少ないのではないかと考えられる結果が見えてきた。今後は、年内に全被験者の測定を終え、解析・考察を行い、成果をまとめていきたい。

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大川晴さん(体験/アルティメット/指導者)

これまの活動では、ナショナルチームの本格的な始動、スポーツ省との交渉、2014年世界クラブチーム選手権の視察、国際会議への出席など行った。チームの始動は、ナショナルチームスタッフ招集、選手発掘などを掲げたが、思うように進まず現状は50%程度の達成にとどまった。しかし、スポーツ省との交渉では事務局長と面会し、国家におけるスポーツランクのアップを果たした。来年は全国大会の開催を目指すこととなる。続く世界クラブチーム選手権の視察では、2014 WFDFの国際会議に参加するとともに、会長・事務局長と会見を持ち、コンゴ共和国のプレゼンス向上に努め、次期連盟登録候補に位置づけられた。これにより2016年の世界選手権出場という目標に一歩近づくことができた。10月以降は、学校教育への普及、ナショナルスポーツ(スポーツランクのさらなるアップ)への昇格などの課題があるが、現地でエボラ出血熱流行の危機もあり、日本で活動しなければならず、今後の対策を考えなければならない。

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サヤラット・ポンナリーさん(外国人奨学生)

この研究の目的は、母国ラオスの子どもたちが、積極的に運動に参加するようになること。それには運動に対する自信を作る「運動有能感」の向上が有効だと考えている。これは、運動ができるという自信(身体的有能さの認知)、努力や練習をすればできるようになるという自信(統制感)、他人から受け入れられているという自信(受容感)で構成されている。

現在の研究では、ラオスの運動への参加状況及び学校体育の現状を明らかにするため、昨年行ったラオスの小中高生483名を対象とした調査の分析を行った。結果、体育授業は1週1回で、75%はスポーツをしているが、遊びとして行っている人が多いこと、ラオスの子どもたちの「運動有能感」は、3因子に分かれず「身体的有能さの認知」と「受容感」で構成されていることか明らかになった。また、運動している人の方が「運動有能感」が高いこと、女子より男子の方が「運動有能感」高いという結果が見えた。これからは、ラオスの体育における楽しさの構造や、運動有能感と楽しさの関係についての考察も加え、修士論文などに繋げていきたい。

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荻原京さん(体験/スキー・フリースタイル モーグル/選手)

2013-2014シーズンは、世界大会を中心に出場、ソチ五輪のファイナリストが揃う中で滑ることができるなどの経験を積むとともに、FISランキングも49位としてシーズンを終えた。4月からは、世界と戦う中で感じた課題克服のため、エアトレーニングやウイエトトレーニングを実施。さらに8月にはオーストラリア合宿と大会に参加した。韓国のナショナルコーチの指導を受けるなど得るものもあったが、4日目に鎖骨を骨折してしまい、精神的に大きく落ち込んだ。まもなく完治するが、今後は、総合得点に占めるターンの割合が50%から60%に変更されることもあり、ターンの質を上げることを重点的に取り組んでいきたいと考えている。なお、オリンピック出場には前年度までに全日本スキー連盟が定めるいくつかの規定のクリアが必要なので、海外戦や国内のFIS大会で良い結果を出し、規定のクリアを達成することに集中していきたい。

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瀬戸邦弘さん(研究)

これまで沖縄、台湾、韓国など、東アジアを中心とした綱引き文化を見てきた。この研究のポイントは地域におけるスポーツ文化の独自性だけでなくエリアや枠組みを超えた共通性、またそこから見えてくる普遍性などを確認していくことにある。現在は東アジアからさらに世界に調査対象を広げているが、今回はアラスカ、そしてドイツにおいてフィールドワークを行った。ここでは、その中でドイツの事例を紹介する。

エリアは、非常に独自性が強いバイエルン地方で、伝統競技として行われている1対1での指を使った綱引きについて調査を行った。特に興味深かったのは、ドイツの競技として考えていたが、バイエルン地方のものという意識が非常に強く、この競技会が、自分たちの誇りやアイデンティティーを確認する場所であるとされていることだ。さらに、この競技はバイエルン地方だけでなく、アルプス地方でも行われており、我々の考える枠組みではないエリアでも共有され、スポーツ文化がエリア形成に使われていることが分かった。今後は、先の研究結果はもちろん、アラスカの事例も含め、考えたこと、分かったことをまとめて、WEBによる綱引き文化の世界地図を作成しようと考えている。

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