中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2014年9月26日

平成26年度 第8期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました

平成26年度 第8期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました

9月26日(金)、ABCアットビジネスセンター(東京都)にて平成26年度 第1回目の中間報告会を実施しました。従来は体験チャレンジャーと研究チャレンジャー・奨学生に分かれて実施していたこの中間報告会ですが、異分野交流の機会を増やすことを目的に、今年度からグループ分けを廃止し、さまざまな分野のチャレンジャーが集まって行う形式としました。

参加したのは、体験チャレンジャーから田中康大さん(水泳・障がい者スポーツ/選手)、芦田創さん(陸上・障がい者スポーツ/選手)、研究から北岡祐さん、藤井慶輔さん、福谷充輝さん、外国人奨学生からフィゲロア・ラファエルさんの合計6名でした。なお、フランスを拠点に活動している体験チャレンジャーの内山雅貴さん(自転車レース・ロードレース/選手)は、ビデオにて発表を行いました。

アジアパラ競技大会へ出場する田中さんからは大会への準備状況や手応え、芦田さんからは、400mに加え、新たにトライしている三段跳びへの挑戦の様子が報告されました。また研究チャレンジャーや奨学生からは、それぞれが進める研究の状況や、今後の課題が発表され、審査委員の皆さんからさらなる課題の指摘や、その解決に向けたアドバイスがありました。

報告会の後には「フェアプレーとは何か?」というテーマで座談会を実施しました。今回はチャレンジャー全員が、まずテーマについて自身の考えを発表し、それを元に議論を進めていきました。その中で「リスペクトの精神がファアプレーの源」「障がい者アスリートのクラス分けについて」「ルールを守れば何をしてもいいのか?」など、それぞれが持つ考えや疑問をぶつけ合い、審査委員の先生方も意見を出しながら、活発な意見交換が行われました。





参加いただいた審査委員

浅見俊雄審査委員長、衞藤隆審査委員、定本朋子審査委員、高橋義雄審査委員、村田亙審査委員、綿貫茂喜審査委員(五十音順)


田中康大さん(体験/水泳・障がい者スポーツ/選手)

200m個人メドレーは、大会毎に自己ベストを更新し、現在は世界ランキング5位、100m平泳ぎは世界ランキング3位となっている。200m個人メドレーは、新しくリオパラリンピックの出場種目に設定し、クロールと平泳ぎに加え、バタフライや背泳ぎも練習しなければならないため、練習時間の配分が重要になった。また、これまでは個人で活動してきたが、はじめての取り組みとして、千葉県水泳連盟主催の朝練習に参加するなどの工夫を行った。

アジアパラ競技大会については、日本代表に選ばれ、100m平泳ぎと200m個人メドレーにエントリーすることになった。本大会では100m平泳ぎで1分7秒台を出すこと、200m個人メドレーは自己ベスト更新を目標にがんばりたい。

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北岡祐さん(研究)

乳酸は、これまで疲労物質として考えられてきたが、現在はエネルギーになっていることが少しずつ分かってきている。細胞膜にはこの乳酸を運ぶタンパクがあり、最後はミトコンドリアに入るが、その間に乳酸がどういった経路を辿るかが謎のままだった。それは筋肉の中からミトコンドリアだけをきれいに取り出すことが難しかったからである。そこで私は、これまで使われてきた遠心分離という方法ではなく、独自の新しい方法を考案し、不要なものがほぼ含まれないミトコンドリアを採取することに成功した。しかしこの結果で、本来ミトコンドリアの中にあるとされてきた乳酸のトランスポーターがないことが分かったことから、現在は、ミトコンドリアの外での変化に着目し研究を続けている。また今後は、どんなトレーニングをすればそのトランスポーターが増加するかなどを検証していきたいと考えている。

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藤井慶輔さん(研究)

対人競技の勝負は速さ、正確さ、強さ、高さなどに加え、相手との関係で生まれる要因も存在する。バスケットを例として考えると、ディフェンダーが動き出す前の準備状態において、加重状態と非加重状態でディフェンスが成功するのは非加重状態の時が多いことが分かっている。そこで、10名のバスケット選手(大学生)の協力のもと加重状態の時になぜ動き出しが遅れるのかを明らかにしていくため実験を実施した。この中で加重時に突破された場合は、非加重・防御成功時に比べ、動き出し時刻の差が大きく、移動運動を生み出す関節トルク・パワーの振動が大きいことなどが明らかになった。現在は実験を終了し、国内学会発表も完了しているので、今後は分析を進め、論文の執筆・投稿に進むとともに、動き出しが遅れないトレーニング方法など、現場への応用可能性を考えて研究を進めたい。

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フィゲロア・ラファエルさん(外国人奨学生)

身体機能年齢推定式の反応性を検討するため、後期高齢者83名を対象者とした運動介入を行い、過去に計測した1006名で行った日常生活動作と関連する8項目の体力測定から、主成分分析の結果で3項目を選出、そして計算された相関行列に再度主成分分析を適用し、今回集めたデータのADLスコアの推定式を得た。運動介入前後のADL年齢を比較した結果として、男性は介入前の暦年齢に対して上がっていたが、運動介入後は-1.9歳ほど改善していた。一方女性も、介入前は暦年齢を上回っている状態であったが、介入後は-1.0歳ほど体力が改善しており、暦年齢を下回るという結果を得られた。

ADL年齢は、筋力トレーニング改善効果を反映することができADL年齢の有用性が示唆され、元気高齢者から虚弱高齢者までの身体機能レベルおよび運動実践効果があった。今後は長期にわたる運動実践者の身体機能レベルについて調べていきたい。

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福谷充輝さん(研究)

反動によってパフォーマンスが増強するメカニズムには4要因が確認されており、これまでに多くの研究が行われた。しかし、ヒトを対象とした運動課題では運動条件の制御が困難で、また4要因の複数が同時に変化してしまう場合があり、どの要因によるものなのか判別が難しい。そこで、反動効果のメカニズムであるこの4要因を個別抽出し、反動によるパフォーマンス増強メカニズムを検証するため、動物(ラット)を用い、また摘出筋を対象に反動動作を模倣する計測システムを作成した。現在までに、計測システムを作成して予備実験を行い、計測システムが機能することを確認し、作成した計測機器を使った実験プロトコルの作成を行った。ここからは、本実験と解析を行い、学会発表および投稿論文という形で公表する予定だ。

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芦田創さん(体験/陸上・障がい者スポーツ/選手)

活動の前半では、400mでアジアパラ競技大会の代表に入ることを主な目標として活動を行ってきた。そのため6月の日本選手権に照準を合わせて、量を重視したオフシーズンから、質やスピードアップを重視した練習に移行するとともに、積極的な試合出場を行った。その試合で課題を見つけ、それを克服するということを繰り返してきたが、十分に記録が伸びず代表に入ることができなかった。一方、アジアパラ競技大会の種目にはないが、新たに挑戦している三段跳びは好調で、13m35の日本記録を更新し現在は世界ランク5位につけている。

アジアパラ競技大会に出ることができなかったことから、計画を修正、三段跳びについては、14mへの挑戦、400mは49秒台を目指して体作りをしていきたい。さらに12月には海外遠征を計画しているため、量より質の練習を行いそこで記録を伸ばしたいと思う。

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