中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2012年11月2日

平成24年度スポーツチャレンジ助成 第5回目中間報告会を実施しました

平成24年度スポーツチャレンジ助成 第5回目中間報告会を実施しました

11月2日(金)、東京・丸の内にて今年度5回目の中間報告会を開催しました。今回は、研究チャレンジャー第6期生の牛山潤一さん、門田浩二さん、佐藤幸治さん、寒川美奈さん、吉武康栄さん、そして外国人留学生のフィゲロア ゴンザレス イポリト ラファエルさん(メキシコ)が参加しました。

第5期生から継続の牛山さんからは「脳と筋肉の活動関係から見えるメリットとデメリット」、門田さんからは「スポーツ選手の素早い反応を制御する視覚運動情報処理」、佐藤さんからは「ヒト骨格筋における運動・食事が性ステロイドホルモン合成に与える影響」について、それぞれ進捗状況を報告してもらいました。

さらに寒川さんからは「ダイナミックストレッチングのスポーツ現場での有用性」、吉武さんは「サッカーにおける蹴り足の動作と手や腕といった上肢との連動性」というユニークな研究について、ラファエルさんからは「後期高齢者が自立して豊かに生活するための運動カリキュラムの策定」に向けた研究状況を発表してもらいました。

またこの日も、チャレンジャーそれぞれの報告に対して、審査委員を交えて活発な意見交換が行われました。この中で審査委員からは「あるデータ間に関連性や法則性が見られた場合は、別要因の可能性を精査することも必要である」「自分の研究分野に固執するのではなく、異分野の研究者とも意識的に交流することで視野を広げて欲しい」「データを収集する作業と解析する作業は別次元と考えて実行することが大切」といった具体的なアドバイスがあり、チャレンジャーからも「今後、研究を進める上でとても参考になった」などの声が聞かれました。



参加いただいた審査委員

浅見審査委員長、伊坂審査委員、景山審査委員、定本審査委員、綿貫審査委員、事務局


牛山 潤一(第5,6期生)

運動皮質-筋間の活動連関のメリットとデメリット


牛山 潤一氏「コヒーレンス」とはふたつの信号間の相関性を周波数上において 定量化する計算方法である。2011年は第5期生として、この計算方法を使い、運動指令を出す「皮質(脳)」と「筋肉」の間における同調性の強度の個人差に着目し、発揮張力安定化の関係性を検証した。結果、皮質-筋間のコヒーレンスが高い被験者ほど、発揮張力が不安定化することを見いだした。2012年はこの皮質-筋間のコヒーレンスが運動課題依存的に変化し、またパフォーマンスにどのような影響がでるかを個人内で比較し、皮質-筋間の活動連関のメリットとデメリットの解明をめざしている。春に新たに導入した脳波計測システムを駆使しつつ、発揮張力の揺らぎの許容幅の設定など 実験プロトコルの精査を図りながら、実験計画を練っているところである。

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門田 浩二(第6期生)

スポーツ選手の素早い反応を制御する視覚運動情報処理メカニズムの解明


門田 浩二氏スポーツ選手が素早い運動を行うときの「意思決定」や「運動の実行」など、意図的な処理系統を飛び超えた感覚運動の制御があることに着目した。運動中にターゲットや視野を動かすと約0.1秒後に修正動作が誘発されることは従来の研究で明らかにされているが、本研究ではこの高速の視覚運動処理系の特性が、長期間のスポーツ経験の有無や競技種目で差異がみられるかを検証。予備実験として10名(成人19歳〜32歳・男女)を被験者に、プロジェクターと3D赤外線反射カメラを用いて高速の視覚・運動応答の計測を行った。この結果、情報処理系の制御には、運動に関連する情報処理よりも視覚情報処理側が重要ではないかという仮説を導きだした。今後はアスリートを被験者に実験を進めスポーツ振興に役立つ研究としたい。

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佐藤 幸治(第6期生)

ヒト骨格筋における運動、食事が性ステロイドホルモン合成に与える影響


佐藤 幸治氏本研究では1)ヒト骨格筋において性ステロイドホルモン合成酵素が発現するか、2)その合成酵素発現と加齢の影響、3)高齢者のレジスタンス運動が骨格筋性ステロイドホルモン合成に影響するかの解明を目的としている。高齢男性と若年男性を被験者に、12週間の筋力トレーニングを実施してもらい、前後で筋内の性ステロイド合成酵素を測定した。結果、ヒト骨格筋において、性ステロイド代謝酵素が発現していることが確認できた。また、性ステロイド代謝酵素、筋内及び血中の性ステロイドホルモン濃度は加齢により低下することを確認した。この研究を通じメタボ医療費削減、健康寿命延長に貢献したい。

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寒川 美奈(第6期生)

筋腱機能に着目したダイナミックストレッチングの有効性に関する検証


寒川 美奈氏ダイナミックストレッチング(DS)とは、筋の自動運動を用いリズミカルに関節可動領域を動かすストレッチング法である。ジャンプ、ダッシュ、ゴルフスイング等で運動能力の向上が報告され、近年多くのスポーツ現場で実施されている。本研究は、DSの筋腱機能へ与える影響を調べ、スポーツ現場での適切な普及を目的とする。今回は被験者13名を、ウォーミングアップ後にDSを取り入れたDS群と、DSなしで安静にさせた安静群とに分け、高速カメラなどを使ってジャンプ能力を測定した。結果、DS群では垂直跳び高、テイクオフ時の最高速度及び最大パワー値に有意な増加が認められ、DSによって筋腱機能の向上を示唆する結果が得られた。11月以降は、筋電図や足関節角度変化の解析を織り込み、研究の精度を向上させていく。

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吉武 康栄(第6期生)

スポーツパフォーマンス中に発現する下肢-上肢の動作投影の様相と神経生理学的メカニズムの解明


吉武 康栄氏例えば右足関節の動作は、右側の手首や手指の不随意的な動作と協調することがある。それをサッカーのキック動作に当てはめると、蹴り足の動作は同側の手首や手指に類似した動作を協調させるという仮説が成立する。そこでキック直前の手や指を観察すれば、キックの種類などの予測も可能という提言を目指す。研究領域はバイオメカニクス的研究(3D動画解析)と神経生理学的研究。上半期は前者のデータ収集として、体育大学サッカー部Aチーム6名を対象に、最大強度で4種のキックをしてもらい3次元動画解析を行った。その結果、キックの種類によりそれに付随した特異的な手や指の動作が認められた。一方、カメラの振動対策やアングル選定など課題も浮き彫りとなった。今後、フェイント時の動きも測定・精査し、引き続き神経生理学的な実験・測定に入っていく。

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フィゲロア ゴンザレス イポリト ラファエル(外国人留学生・第6期生)

後期高齢者用のADL(日常生活動作)年齢算出式の開発


フィゲロア ゴンザレス イポリト ラファエル氏後期高齢者にとっては、特定のスポーツで高い力を示すより、自立して活力ある生活を営むことが重要である。そこで高齢者の運動能力について「自立して活力ある生活を営むときに必要な力」をポイントに、ADL年齢算出式の開発を目指している。2012年の上半期は、茨城、千葉で約400名の被験者の協力を得て豆運び、握力、連続上腕屈伸、片眼片足立ちから起立動作時間など8項目についての動作測定を行った。しかしながら被験者の体力の個人差があり、ADL算式に直接影響がないと推定される要素も含まれていたため、計算式確立には至らなかった。今後は、測定値、測定項目や相互関係を精査し精度を高めていきたい。

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