中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2012年10月22日

平成24年度スポーツチャレンジ助成 第4回目中間報告会を実施しました

平成24年度スポーツチャレンジ助成 第4回目中間報告会を実施しました

10月22日(月)、東京・丸の内にて今年度の第4回目となる中間報告会を実施しました。この日は、研究チャレンジャー第6期生の鈴木浩太さん、瀬戸邦弘さん、須藤みず紀さん、行實鉄平さん、外国人留学生第4,6期生の金ウンビさん(韓国)、第3,5期生の朴京眞さん(韓国)が参加しました。

「運動嫌いの子供たちへの科学的支援」を研究する鈴木さんからは、7〜13歳の子供を被験者とした調査結果の報告と今後の展望を話してもらいました。「沖縄諸島の民族綱引き文化」の考察をテーマとする瀬戸さんからは、現地取材を通し民族綱引きの素晴らしさ、奥深さを改めて知ることができたなどの報告がありました。

続いて須藤さんからは「糖尿病性筋萎縮における運動療法」の研究報告があり、ラット実験での苦労話からDNAメチル化まで幅広いテーマで語ってくれました。行實さんからは、大学・医療機関・県・住民組織の連携に基づいた運動スポーツ事業の「実践の試み」が報告され、異口同音に審査委員から期待の声が聞かれました。外国人留学生の金さん、朴さんからは、直近の研究進捗状況のレポートと今後のテーマについて紹介してもらいました。

また今回の報告会では「世界をめざすチャレンジ」というテーマのもと座談会を実施しました。この中では浅見審査委員長はじめ、各審査委員からは「自分たちの問題、また日本だけの問題だと思っていても、世界のどこかで同じような課題を抱えている人たちもいます。彼らと連携をとり交流するためにも、常にアンテナを高く張って欲しい」「自分の研究を社会にどう活かすかを考えるとき、社会の速い動きを配慮すべき。いま世界で何がテーマになっているか、と視野を広げ研究を進めて欲しい」「研究が社会に役立つかどうか、という話と“研究”は別の話。研究成果をどう使うか、はあまり深く考えなくて良いだろう」といったアドバイスがありました。



参加いただいた審査委員

浅見審査委員長、伊坂審査委員、衞藤審査委員、草加審査委員、田原審査委員、福永審査委員、事務局


鈴木 浩太(第6期生)

運動嫌いの子供たちへの科学的支援 -反応モニタリングによる運動機能の向上を目指して-


鈴木 浩太氏運動がうまくできないため、運動が嫌いになっている子供がいる。そこで、運動嫌いの子供の支援のために、運動がうまくいかない原因が、自分の運動をモニタリングする認知能力(反応モニタリング)にあるのではと着目し、彼らの反応モニタリング能力について検討することをテーマとした。予備実験として、成人を対象に反応モニタリング課題における脳波及び筋電位を記録した。分析では、ボタン押し前の筋電位の出現から、部分的な誤反応と完全な正反応に試行を分類した。そして、部分的な誤反応と完全な正反応における脳波指標に違いがみられ、この違いを用いて反応モニタリングを評価できることを確認した。さらに7〜13歳の男児4名を対象に同様の実験を行い、子供においても今回用いた反応モニタリング課題が適応できることを確認し、発達的な変化がある可能性を示した。今後は対象数を増やし、反応モニタリングの発達的な変化を確認するとともに、運動嫌い、運動能力、反応モニタリングの関係を明らかにしたい。

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瀬戸 邦弘(第6期生)

沖縄諸島における民族綱引き文化の観光化利用とその伝統保護に関する動態研究


瀬戸 邦弘氏民族綱引きの動態研究を通じ、アジアに共有される農耕とスポーツ文化の連動性を明らかにするのが長期的研究テーマである。この夏は沖縄の喜屋武(きゃん)、渡名喜島(となきじま)などを訪れ、民族綱引きについての現地調査を行った。そこでは、いわゆるスポーツの勝ち負け、強い弱いとは異なる「対戦相手とともにあり、相手に感謝する心」が存在することを感じとることができ、伝統文化としての綱引きの素晴らしさ、奥深さを改めて知ることとなった。一方で、綱の素材「藁」の確保に苦労するなど綱引き文化の継承には多くの課題も出てきており、地域の文化体系に根ざした年中行事としてそれらを維持していく難しさも知ることができた。今後は調査内容をアーカイブ化しつつ、伝統的綱引き文化の継承に関する知見を深めたい。

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須藤 みず紀(第6期生)

糖尿病性筋萎縮における運動療法とエピジェネティクスな遺伝子発現調節の解明


須藤 みず紀氏糖尿病は、骨格筋の萎縮に起因した活動量の低下となるので、運動による改善が推奨される。ただ運動が直接的に何を変化させるのか解明されていない部分があり、これを研究している。まず2型糖尿病ラットにエキセントリック運動負荷を与え、炎症応答、筋再生過程を解析。結果2型糖尿病筋骨格の炎症増大はアトポーシス(細胞の積極的な消滅)に関連していることが示された。今後は、ラットのダウンヒルトレーニング構築、ラットに損傷を誘発させない運動の作成などを進めると同時に、DNAメチル化レベル(遺伝子発現制御)との関係性に着眼点をおき解析を進めていきたい。

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行實 鉄平(第6期生)

メディカル・フィットネス施設による地域スポーツ環境の構築 -大学・医療・行政・住民組織の連携を通して-


行實 鉄平氏過疎地域における持続可能な健康づくり施策の検討をテーマとした。徳島県阿南市にて大学・医療機関・県・住民組織の連携のもと、総合型地域スポーツクラブの60歳以上の会員を対象に、疾病予防に向けた運動スポーツ事業の「開発」、「実践」を試みた。測定会、健康教室、講話会などを行い、その中で知識の獲得や仲間作りなどの成果を確認した。これを踏まえ、さらに地域に根付いたスポーツカリキュラム構築を模索、研究する。 将来は、健康診断等の結果表を自分で咀嚼できる力、「健康づくりリテラシー」を人々が身に付けることを望んでいる。

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金 ウンビ(外国人留学生第4,6期生)

体操の効果のエビデンス検証と、その実践的活用による地域(被災地)の人々の心身の健康増進への貢献


金 ウンビ氏音楽を用いたペア運動が心理・対人行動に好影響を与えることは、以前の実験で確認した。しかし、音楽とペアという複数の要素を独立させた場合の結果は検討できなかった。そのため、この四半期は、新たに音楽の要素の有無及び対人的要素の有無(個人・ペア)により、4つの運動条件を作り、心理的な変化(運動の楽しさ尺度:徳永・橋本、1980)を比較検討した。その結果、運動の満足度を示す基本的欲求充足因子は、音楽の要素の効果が大きく、音楽のあるペア運動のほうが、音楽のない個人運動に比べ実施後の満足度が高いことが確認できた。人間関係の因子は、音楽の有無にかかわらず対人的要素のある運動条件の得点が優位に高い値を示し、各自で実施した運動(個人)よりも、身体的交流を含むペア運動のほうが相手との親近感が強まることがわかった。今後、日本での研究成果を活かし、日韓をはじめ世界の人々の心身の健康増進に貢献したい。

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朴 京眞(外国人留学生第3,5期生)

ナショナルカリキュラムからみたダンス教育に関する研究


朴 京眞氏「学校ダンス(舞踊)教育学」の学問的な領域確立と、ダンス及び体育教科としての地位向上を図ることを目的に調査・研究を続けている。特に日韓の新カリキュラムを比較することを通じ、両国のダンス教育の現状把握、今後のダンス教育の方向性に関する知見を導くことを主眼とした。この四半期は、「新カリキュラム誕生の変遷」「改定の背景」「関連テキスト」などの課題を抽出した。次のステップは、1)ダンスの特性の明確化、2)体育か芸術か?の議論を超えた指導内容の確立、3)時代の変化への的確な対応、4)ダンスの良さの普及などを考えている。研究対象として難しいといわれるダンスは、体系的先行研究も少ないが確実に歩み、その中でダンスの存在意義を高めたていきたい。

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