中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2011年11月3日

平成23年度スポーツチャレンジ助成 第6回目中間報告会を実施しました

平成23年度スポーツチャレンジ助成 第6回目中間報告会を実施しました

今年度のスポーツチャレンジ助成第6回目中間報告会を11月3日(木)、都内で実施しました。

今回は、第5期のスポーツチャレンジ研究助成対象者の秋間さん、牛山さん、樋口さん、宮本さんに加え、第4期の外国人留学生奨学金対象者の金さん(韓国)、林さん(台湾)の計6名に参加していただきました。

秋間さん、牛山さん、宮本さんは運動生理学視点で、樋口さんは運動科学視点を織り込んだ研究テーマについて、進捗や今後のテーマを報告していただきました。金さん、林さんからも各テーマに沿った実験の進捗と今後の展望を話していただきました。とりわけ、金さんの報告の中では、この日の参加者が2人ペアとなってリズム運動を模擬体験するなど、現場での実践活動を再現しながらの報告となりました。

報告終了後は、審査委員のアドバイスを受けながら座談会。日夜研究者たちが抱える疑問や課題について活発な意見交換が行われました。とくに“研究費の使い方”や“レベルや個性の異なる人間相手に実験を進めることの難しさ”、さらに“スポーツ現場に基礎研究の成果を如何に役立てるか”といったテーマに熱い議論が続きました。

最後に草加審査委員からは、「研究には色々な立場があり、今日行われるスポーツ動態を解析する研究もあり、一方10年後や20年後を俯瞰した研究もある。自分の研究が今どのフェーズにあるかを認識し、他のフェーズの研究といかにリンクを張るかがポイント。積極的にリンクを張って、交流を図る意識をもってもらいたい」とアドバイスをいただきました。

平成23年度スポーツチャレンジ助成 第6回目中間報告会を実施しました
平成23年度スポーツチャレンジ助成 第6回目中間報告会を実施しました

参加いただいた審査委員

浅見審査委員長、草加審査委員、事務局


秋間 広(第5期生)

股関節屈曲による大腿直筋の筋収縮は中間広筋の筋活動を引き起こすか?


秋間 広(第5期生)身体運動にとって重要な筋群が大腿四頭筋である。中でも前面表層部の「大腿直筋」と深層部の「中間広筋」の間には、筋膜などを介して張力が伝達される現象がある。今回は股関節の屈曲で生じる「大腿直筋」の筋収縮が、「中間広筋」にどう影響を与えるかを解析中。6月に股関節屈曲マシン(椅子)が完成。被験者は3人で屈曲度数を90度、110度、130度と変えつつ表面筋電図と医用画像を用いテータを収集した。現在得たデータでは「中間広筋」への影響にタイムラグがあり、仮説に合致しない部分があった。今後は被験者を増やし、また応力に変化を与えながら解析の精度をアップしていく。

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牛山 潤一(第5期生)

静的筋収縮時にみられる運動皮質-筋間の同調的活動が発揮張力の安定性に及ぼす影響


牛山 潤一(第5期生)私は骨格筋に指令を出す脳(運動皮質)と筋肉の間の同調的活動を、ふたつの信号の相関関係を定量評価する「コヒーレンス」という計算手法で評価し、この相関性の大小が発揮張力の安定性にどのような影響を及ぼすか解明しようと、本研究にチャレンジしている。9月までに、脳波の記録チャンネル限定条件で予備実験し、脳波筋電図コヒーレンスの強い被験者では、発揮張力が大きく揺らぐことが確認できた。9月末に、全頭脳波計測用のキャップを入手し、全頭コヒーレンスマッピングのためのプログラムの作動を確認した。今後、実験・解析を急ぎたい。

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樋口 貴俊(第5期生)

活動後増強を用いた野球打撃前のウォーミングアップ法の有効性


樋口 貴俊(第5期生)バッターボックスに入る前に、重くしたバットを振るとバットが軽くなりスイングが速くなったと打者は思うときがあるが、実はスイング速度は低下している。一方我々は瞬間的に力を発揮できる“活動後増強”と呼ぶ現象を引き出すウォーミングアップ法を考案した。本チャレンジでは、双方について、スイング速度、バットコントロールを基準に検証している。6月までに被験者22名を集めランダムに2組に区分。各被験者に2回の8週間トレーニング(7~8月)と4回の測定(ティー打撃5球、ウォームアップ、ティー打撃5球を基準)を行い、スイング速度と正確性を検証した。実験データの精査を進めているところである。

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宮本 忠吉(第5期生)

運動時の呼吸循環系を制御する高次脳機能メカニズムの統合的理解
-予測・見込み的制御の運動生理学的意義-


宮本 忠吉(第5期生)スポーツ等運動を目前に控えた準備期における予測や見込みが運動生理機能に影響を及ぼすことは、各スポーツ現場で経験的に知られている。それは単なる“緊張”ではない。今回は、運動準備期からはじまる中枢神経系からの信号入力やその制御が、運動生理学的に如何なる意義をもつか解明している。9名を被験者に、高負荷運動を予測して行う場合と、予測せず突然行う場合を比較。後者の場合は、運動初期の心拍及び血圧上昇制御について時間的遅れが生じることが確認できた。今後、調整系の運動適応機構の統合的理解に役立て、種目別トレーニング法模索を展望したい。

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金 ウンビ(外国人留学生第4期生)

音楽を用いた身体活動の心理的・行動的効果と運動の継続性に関する研究


金 ウンビ(外国人留学生第4期生)エアロビクスダンスは気分が良くなる運動であることを、この間の調査で再確認した。エアロビクスダンス初心者(男性10名・女性10名)を対象に、TDMS(二次元気分尺度)という心理状態を数値化するシートを利用し、快適度と覚醒度を2軸化し集計・確認した。また独自に考案した手順で、運動は集団で行ったほうが、より快適な気分状態になる可能性も示唆された。なお、5~6月には被災地のいわき市、石巻市の避難所を訪れ、高齢者向けに座ってできるストレッチなどを指導、運動不足・ストレス解消に努めてもらった。今後、音楽を用いた運動が心理状態(気分の改善)に及ぼす影響を確認すると共に、行動的(対人関係の促進)な効果についても検討して行きたい。

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林 勝龍(外国人留学生第4期生)

日本統治下における台湾野球の文化研究


林 勝龍(外国人留学生第4期生)1931年、甲子園での全国中等学校優勝野球大会の準優勝校は、嘉義(かぎ)農林学校野球部。それは日本人、漢民族、高砂族からなるチームだった。このチームの精神は、嘉農精神と呼ばれ、台湾で日本が1918年より展開した同化政策の成功例とされる。2000年に国立嘉義大学と同校が改称された後も継承された。こうした歴史をさらに紐解くと、1890年頃に遡ることになる。漢民族が日本教育を受け入れる中で、“武士道的競技概念”が思想的、身体的に反映されていったようだ。資料精査やインタビューを通じ、この歴史をさらに整理する中で、体育学、身体文化学、文化人類学、民俗学に貢献できる研究を進めている。

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