年度別チャレンジャー一覧

助成対象者のチャレンジ概要
増田 和実
氏名
増田 和実(ますだかずみ)
助成実績
スポーツチャレンジ研究助成:第3期生
運動時の筋内酸素ダイナミクスとコンディショニング評価への応用の可能性

健康維持・増進のために運動が重要であることが明らかにされている。運動を実施することによって、酸素運搬系のみならず組織における代謝能が改善される。その際、ミトコンドリアの代謝能とそこへの酸素供給能が、ヒトの酸素摂取パワー、ひいてはパフォーマンスを決定する重要な因子となっている。近年、我々は筋収縮中の筋細胞内の酸素濃度変化を捉えることに成功した。この観察は非常に難しいとされてきた。併せて、我々は細胞内酸素流量が収縮レベルに応じて変化することを認めた。つまり、細胞内酸素量はミトコンドリアの代謝活性レベルに関連している可能性があり、筋の代謝レベルや機能レベルを反映する新たな Indexになりうるものと考えた。本研究では、筋細胞内酸素動態が継続的に運動に伴うミトコンドリア代謝活性レベルを反映しているものかを明らかにし、筋代謝機能の指標としての応用の可能性を検証することを目的とした。

スポーツチャレンジ研究助成:第1期生
安全なレジスタンストレーニング方法の検討-伸張性収縮は心臓血管系の応答を抑制するか?

レジスタンストレーニングは健康増進の手段として代表的な方法です。レジスタンストレーニング時に配慮すべき点は効果性を持ち得た安全性であり、そこには怪我などの外科的項目と、心臓血管応答などの内科的項目が含まれるでしょう。特に中高齢者を対象にした場合、対象者が潜在的に心臓血管疾患のリスクを抱えているケースがあることに留慮する必要があると思われます。その点からも、レジスタンス運動中の心臓血管応答やその機序についてスポーツ科学的立場から、詳細に検討する必要があります。筋収縮には静的収縮と動的収縮があり、我々が日常的に行う運動には動的収縮が主です。また、動的収縮は短縮性収縮と伸張性収縮とに分けられます(例えば、短縮性収縮:物を持ち上げようと手で物を持ち、腕を曲げた時の上腕の筋収縮、伸張性収縮:持ち上げた物が重たく、持ち上げようとしているけれども腕が伸ばされていくような時の上腕の筋収縮)。伸張性収縮は短縮収縮と比較して運動単位の動員数や発火頻度が少なく、発揮される最大筋力も短縮性収縮よりも 20-30%大きいという特徴があります。近年の研究によって、この伸張性収縮運動を行った時の方が短縮性収縮運動よりも交感神経活動や血圧および心拍数が低いこと、つまり、筋の収縮様式が異なることによって心臓血管応答の違いが生じることが示唆されています。しかしながら、先行研究では、異なる収縮様式間の比較において、負荷条件等が体系的に考慮されていないため、収縮様式の違いによる心臓血管応答の違いの有無を理解するには注意を要さなければなりません。運動時の循環調節には、セントラルコマンド、筋機械受容器反射、筋化学受容器反射、動脈圧反射など複数の調節機構が複雑にかつ精密に関係しています。本研究で着目した収縮様式の違いから引き起こされる何が違うから心臓血管系の応答に違いが生じるのかについては、十分に明らかにされていません。そこで我々は、異なる収縮様式が心臓血管系の応答に及ぼす影響について検討することを目的としました。実験では、収縮様式や負荷強度の条件を複数設定して、筋収縮(腕の屈曲/伸展)を行った際の心拍数や血圧の変化やその背後のメカニズムを検討してみようと考えています。冒頭でも述べましたように、多くの人々がレジスタンストレーニングを行う今日において、アスリートや一般市民に対する安全で効果的なトレーニングプログラム(リハビリテーション含)の策定上の基礎的資料として本研究での成果を呈したいと考えています。