
10月5日(日)、2025年度第2回目の中間報告会を東京・日本青年館で開催しました。今回は体験チャレンジャーの名草慧さん(ハンググライダー)、研究チャレンジャーの斉藤陸さん、稲葉健さん、林和寛さん、松村哲平さん、森永浩介さんの6名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を振り返るとともに、下半期の活動計画について発表を行いました。
参加いただいた審査委員(敬称略・五十音順)
伊坂忠夫審査委員長、片山敬章委員、髙橋義雄委員、高橋京子委員、村上晴香委員

斉藤陸(研究)
前十字靭帯(ACL)の損傷は、最も高頻度に発生する靭帯損傷であり、同時に選手生命を脅かす重大なスポーツ外傷である。ACLは自己治癒しないため再建術の実施が推奨されているが、その再建術には多くの課題が残っている。本チャレンジでは、ACLを自己治癒に導く保存的治療法の確立を目指し、運動による機械的刺激に応答したACL自己治癒メカニズムを解明する。上半期ではペンシルバニア大学のNathaniel Dyment博士のもとで研究活動を行うとともに、Scx-EGFPマウスへの外科的介入及び、各タイムポイントにおけるサンプル採取を実施した。下半期では、それぞれの解析を進めていく計画。
稲葉健(研究)
骨格筋代謝機能の向上は、特に持久系アスリートの競技パフォーマンス向上に重要な要素の一つ。アスリートたちは競技力向上のために異なる運動強度を併用し、トレーニング計画に応じて各強度のトレーニング実施頻度を調整している。しかし、それに伴う骨格筋代謝適応は明らかになっていない。本チャレンジでは、実験動物を対象に、それらが骨格筋の糖・乳酸代謝に与える影響を検討している。10月中旬にサンプリングを計画しており、下半期ではその解析を進めていく。
林和寛(研究)
運動トレーニング後に生じる筋痛の程度は、負荷量を統制した運動トレーニングにおいても個人差があることが知られている。本チャレンジでは、その筋痛を強く感じる者が存在するメカニズムを解明し、アスリートの痛みの問題に貢献することを目指している。これまでにプロトコルや実験手技等を整え、男女対象者も同程度に取り込むことができている。また仮説を概ね支持する結果も得ており、下半期では本研究を発展させていくための準備も進めていきたい。「CPMを鍛えることはできるのか?」、「女性で痛みが強いことは解決できるのか?」といったチャレンジに加え、ヒトと実験動物を用いた検証などにも発展させていきたい。
名草慧(ハンググライダー)
「アジア人初のハンググライダー世界チャンピオンを目指して」のチャレンジも、今期で通算4期目。今年7月、以前からそのターゲットとして見据えてきたパラグライダー世界選手権2025(スペイン)に出場した。ここでチャンピオンになるために、直近3年間でこのエリアの大会に5回出場して準備を整えてきた。スタートは順調で、2日目終了時点で115人中4位のポジションにつくことができた。しかし、その好成績にその後「やや守りすぎたフライト」になってしまったことを悔やんでいる。さらに、これまでの経験からコース取りを決めつけてしまい、上昇気流の雲の流れを見過ごすなどミスもあった。結果、最終総合成績では26位まで落ち、目標を達成することができなかった。しかし、ここで諦めることなく、2027年にブラジルで開かれる世界選手権にチャレンジする。グライド技術や高度を上げるスピードなど基礎技術を磨いて、次こそ世界チャンピオンを獲得したい。
松村哲平(研究)
運動前のカフェイン摂取は、筋力発揮パフォーマンスを一時的に向上させ、プレワークアウトサプリメントとしても利用されている。その一方で、伸張性収縮を伴うレジスタンス運動前のカフェイン摂取は、運動後の一時的な筋力低下や運動誘発性筋損傷というリスクを増大させてしまう可能性が指摘されている。本研究では、トレーニング場面でのカフェインの応用を考える上で、安全かつ効果的な方略を提案するための基盤形成を目指している。これまでの研究結果を反映して計画の一部に変更を行うなど想定より時間がかかってしまったが、方法論は固まった。11月以降にデータ取得を開始する予定。
森永浩介(研究)
競技用の義肢・装具は保険が適用されず、成長期のアスリートにとって経済的負担は大きい。本チャレンジでは、ジュニアパラアスリート向けに最適化されたクラウチングスタート用前腕義手を、低コストで提供するための開発を行っている。上半期では従来型の義手と3Dプリンターによる新型義手の計測を行ったほか、医療分野における3Dプリンターの活用事例などを学んだ。今後は安定する手先具の検証や、重心位置とランニングフォームなどの解析を行い、従来型の義手との走行タイムの比較などに進んでいく。

