ジュニアヨットスクール葉山

セーリングスポーツを通して子どもたちの成長を
 2011年8月19日

「子供たちは夏休みに成長する!」〜外洋帆走訓練〜

2泊3日、往復52マイルの外洋帆走訓練
荒波を乗り越え一段と逞しくなった生徒たち

ジュニアヨットスクール葉山では、8月19日から21日の3日間、今年も葉山から伊豆大島への「外洋帆走訓練」を実施しました。

この外洋帆走訓練は普段の練習艇とは異なる大型クルーザーでの航海を通じて、海の壮大さを体験しながら自然に対する畏敬と畏怖心を育み、上級生はリーダーシップを身につけること、下級生はチームクルーとして役割を果たすことをテーマに、全員が力を合わせて目標を成し遂げることを目的としています。

晴天と穏やかな海象に恵まれた昨年とは打って変わり、今年は前線通過による悪天候の中での実施となり、一部のプログラムの変更も余儀なくされました。その中で参加した13名の生徒たちは、仲間と助け合いながらクルーザーを走らせ、ひとりも脱落することはありませんでした。海はいつも穏やかなわけではありません。今回の荒れ気味な天候の中での外洋帆走訓練は、海の怖さを知り、気象や海象の変化について学び、集団生活や野外活動を通じて協調性やリーダーシップを身に付けるなどの目的意識を持ってのぞみました。この経験が生徒たちにとって、大きな自信となり、セーリングに限らず、社会生活においても役立っていくことを願っています。

2泊3日で実施された伊豆大島への外洋帆走訓練
2泊3日で実施された伊豆大島への外洋帆走訓練

昨年に引き続き実施した伊豆大島への「外洋帆走訓練」。初日の8月19日の朝、葉山マリーナに集まったスタッフ、そして生徒と保護者たちの間でミーティングが行われました。波やうねりはそれほど無いものの、進行方向となる南からの風がやや強く、2隻のクルーザーの航行能力や経験豊かな艇長とコーチたちにとっては日常的な海象とはいえ、生徒たちにとっては厳しい条件となることが予想されます。それでも大島を目指すか? ─ そんな問を投げかかけられた生徒たちでしたが、ひるむことなく全員一致で「大島を目指そう」という結論を自ら出しました。

予定より30分遅れて10時に葉山港を出港。2隻のクルーザーにチーム別に乗り込み、約26マイル南の沖合に浮かぶ伊豆大島を目指しました。フェンダー(防舷材)を引き上げ、メインセールを上げるなどの作業を手分けして行い、沖へ出ると、海上は予想通り南の風が強く、各艇は安全と到着時間を考慮してエンジンと風の力を併用した機帆走で進んで行きます。
デッキには風で舞い上がった海水が打ち込み、激しく揺れるヨットの上で早くも船酔いに見舞われる生徒もありました。各艇の艇長やコーチは生徒たちの安全を第一に、励まし、また休ませるなどしながら約6時間の航海を続けました。また、スタッフの乗船した大型パワーボートが伴走し、航海するヨットを見守りました。

2艇のヨットが伊豆大島の岡田港に入港したのは16時過ぎ。船酔いで寝込んでしまった生徒も陸に上がるとすっかり元気を取り戻し、大島での3日間の生活に胸を躍らせながら、宿泊所となったコテージに入りました。

〈牛若丸〉の加藤幸男さんは昨年に続いて協力してくださった。ベテランコーチが分乗し、安全第一で航海を実施した
〈牛若丸〉の加藤幸男さんは昨年に続いて協力してくださった。ベテランコーチが分乗し、安全第一で航海を実施した

8月20日。大島での朝を迎えました。この日は大島よりさらに南に浮かぶ伊豆七島のひとつ利島を巡り、大島の南側に位置する名港・波浮港を目的地とした日帰りクルージング、さらに現地でのシュノーケリングなどのプログラムを予定していましたが、この日も天候が回復せず、予定変更を余儀なくされました。

悪天候は事前に予想されていたこともあり、変更となった際の行動予定についても前夜のミーティングでリーダーを中心に生徒たちが話し合い、コーチのアドバイスに従いながらプログラムを決めていました。午前中はコテージから徒歩で20分ほどの野田浜海岸まで散策にでかけ、磯の観察を行いました。昼食を挟んで午後からは、昨年同様、岡田港近くの日の出浜においてシュノーケリングを実施。ここでは各自がこれまでに学んできた「水辺の安全学習」の成果を発揮して安全意識と仲間意識を持ちながら、トラブルも無く楽しむことができました。

夕方からは夕飯を兼ねたバーベキューとキャンプファイヤー。薪づくりや炭火起こしなど生徒たちは準備段階から率先して参加し、活動的な一日を過ごしました。

訓練3日目の8月21日。大島・岡田港からホームポートの葉山へ帰る日です。この日は初日とは反対の北からの強い風が海上に吹き渡っていました。来た時と同じように向かい風の航海を強いられることになります。

舫を解き港から出ると、すぐに手分けして帆走の準備に取りかかります。そして走り始めると激しいピッチング(縦揺れ)に見舞われると同時に、3日前の往路と同じようにスプレーを全身に浴びながら目的地を目指すこととなりました。

個人差はあるものの船酔いや睡魔、寒さと闘いながら航海を続ける生徒ももちろんいます。そんな中、「確かに去年は天気も良くて気持ちの良いクルージングでしたけれど、こういう海も、嫌いじゃないです」とにこやかに語る生徒、また「船酔いは大丈夫です。揺れるので腹が減りました」と安全かつドライな場所を見つけては揺れるデッキの上でなんなく弁当を平らげる生徒の姿もあります。特に中学生をはじめとする上級生のリーダーたちは、常にデッキの上に居続け、往復52マイルの航海を見届ける頼もしさを発揮していました。

今回の訓練にはヨットやボートに分乗して3組の保護者も参加していました。そのうちの一組の保護者は「行きも帰りも家族全員で滅多にできない経験をしました。これから生きていく上で、ちょっとやそっとのことなら何が起きても驚かないんじゃないですか」とハードなコンディションの中でセーリングを続ける我が子の姿を頼もしそうに見つめていました。

また、生徒たちが乗艇するクルーザーのオーナー/スキッパーとして参加した〈ミッド・ナイト・ウォーク〉のトニー・ミラーさんは、「子どもたちにとって素晴らしい体験になる」からとこの訓練にご協力いただき、ハードな航海中、常に笑顔で生徒たちを励まし続けてくださいました。さらに、昨年に続いてご協力いただいた〈牛若丸〉の加藤幸男さんは、積極的にクルーザーの操船に参加する場を生徒たちに与えてくださいました。

2艇が葉山マリーナに入港したのは予定より120分以上遅れての17時。桟橋に次々と降り立ち保護者たちの出迎えを受けた生徒たちの顔からは、困難を乗り越えた充実感と新しい自信が漲っているようにうかがえました。

ムービーレポート