中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2013年10月26日

平成25年度スポーツチャレンジ助成 第5回中間報告会を実施しました

平成25年度スポーツチャレンジ助成 第5回中間報告会を実施しました

10月26日(土)、東京国際フォーラムにて平成25年度 第5回目の中間報告会を実施し、第7期生の研究チャレンジャー岩本えりかさん、江川賢一さん、小笠原理紀さん、長谷川弓子さん、松島剛史さん、そして第6・7期生の研究チャレンジャー瀬戸邦弘さんが参加、オランダ留学中の中田貴央さん(海外留学生奨学金・第6期生)はビデオにて報告を行いました。自然科学分野のチャレンジャーからは、チャレンジ目標に加え、それぞれが行ってきた実験の詳細な解説、またその中で悩みや検討課題についての報告がなされました。一方、人文社会分野のチャレンジャーからは、調査の状況に加え、それぞれの研究が持つ意義や社会の中でどのような影響を与えるかについての言及があり、分野を超えた話題として積極的な質疑応答が行われました。

報告会後の座談会は、「研究は社会に対してどのような意味を持つか」、「現在の研究者はスペシャリストであるべきか」、といった研究者としての悩みが話題の中心となりました。この中で「研究の意義は分かりにくく、自己満足に見えることもあるが、必ず社会や人にとって意味のある結果をもたらすことは間違いないし、それを意識することが大切」、「研究はどの方向にもいくことができ、終わりもない。だから、いろいろな道を歩むか、また一本、道を決めて歩み続けるかは、自分自身で決めれば良い」など、審査委員からアドバイスがあり、出席したチャレンジャーは有意義な時間を過ごしました。




参加いただいた審査委員

浅見俊雄審査委員長、伊坂忠夫審査委員、定本朋子審査委員、事務局(順不同)


岩本 えりか(第7期生)

運動や環境要因により、活動肢、非活動肢ともに血流量、および血管への摩擦力であるシェアストレスが増加するが、これが血管内皮機能の改善に影響する可能性が示されている。また、運動や環境要因により、血流パターン(順行性・逆流性血流量)が変化するが、これも血管内皮機能の改善に影響する可能性が示されている。そこで、低酸素環境と定常負荷運動の組み合わせが、非運動肢の血流パターン、シェアストレス、および血管内皮機能に与える影響を明らかにし、低酸素環境を利用した、新しい、より効果的な運動処方プログラム作成に応用できると考えた。上半期では、予備実験を行って運動強度を決定するとともに、本実験のプロトコルを策定した。進捗状況はやや遅れはあるものの順調に進行しており、現在は本実験を実施している。

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江川 賢一(第7期生)

私のチャレンジテーマは、東京都あきる野市における、住民協働によるスポーツ推進計画に基づく健康なまちづくりに貢献すること。今年度は、地域住民のスポーツ実施率の増加プロセスに着目して実証研究を進めるため、過去のスポーツ実施率を把握し、その上で、今後の計画策定のために住民・各種組織へのアンケートを行いベースラインの評価項目を選定する作業を行っている。具体的な活動のひとつとして、子どもを持つ家族の健康状態と身体活動の関連についてのアンケートを実施した。798人の有効回答を得て解析を行い、家族レベルでも主観的健康度は運動習慣の決定因子であることが示唆された。また東京オリンピックの開催が決定したが、今後はこの影響も踏まえて実験・調査を進め、将来は週1回以上運動を行う人の割合を現在の約50%から70%へ引き上げることをめざしていきたい。

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小笠原 理紀(第7期生)

レジスタンス運動による筋肥大は、最初こそ順調に進むが、徐々に停滞してしまう。私は、筋肥大のメカニズムを解明し、それに基づいて効率的なトレーニングを作ることだが、なぜ停滞するのかをひとつのモデルに用いることで、筋肥大に関わる因子が分かるのではないかと考え、現在の研究を進めている。そもそも筋肥大は、運動によりタンパク質の複合体(mTORC1)が活性化することが重要とされ、結果的に筋タンパク質合成の増加を促し、これを繰り返すことで起こる。そこで、mTORC1の活性を指標に研究を行い、トレーニングを進めることで徐々に活性が低下することを確認したため、mTORC1を活性化させる上流の因子を探ることで、筋肥大が停滞する原因がわかると考えた。しかし、実験の結果、mTORC1の活性が絶対的な指標ではなく、別の要因があるとわかったため、今後は他の可能性を模索していこうと考えている。

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瀬戸 邦弘(第7期生)

アジア共通のスポーツ文化である綱引きを通し、地域の共通性を確認し、国際理解・友好を深めるという目的をもって調査を進めている。また、綱引きでは、国家の枠を超えたひとつの文化圏を確認できたため、友好のきっかけとすることも可能であると考えている。4-6月には台湾のブヌン族について参与観察を実施した。彼らは年に1度、狩猟儀礼として、またブヌン独自のスポーツや、国際的なスポーツを実施する祭りを行っている。この中で伝統的な綱引きが行われているが、この祭りでは、伝統として綱引きを守りながらも、競技会的な要素が付加されるなどにより、その伝統自体が変容し、国際スポーツ化が進んでいることが確認された。今後は綱引きが伝統的に行われている韓国の調査を行い、アジアの綱引き文化の動態をさらに広く考えたいと思っている。

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長谷川 弓子(第7期生)

私はかつてゴルフを専門的に行ってきた経験があるが、その中で、なぜ熟練している動作が崩れるのか、また崩れるまでに何が起こっているのかについての興味を持ち、現在は、ゴルフに心理的距離は存在するか、というテーマで研究を行っている。ゴルフパッティングは、短い距離より長い距離のほうが難しいはずだが、実際の現場では、特にゴルフ熟練者にとって短い距離(1.5m以下)の方が不安を感じるという報告がある。そこで、物理的距離と心理的距離が等価であるか、履歴現象が生じるか、技能の熟練差はあるかという3点で検討することとした。ただし、実験詳細の決定に時間がかかって実験開始のスタートが遅れており、現在はプロゴルファーの測定中で、今後はこの結果の分析、アマチュアゴルファーの測定と進んでいく予定だ。

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松島 剛史(第7期生)

ラグビーの伝播・普及、需要のプロセスをひも解いていくというのが研究テーマであるが、1980年代以降の国際ラグビー評議会で構築されたラグビーのありようが、日本ではどのように受容されたかということに着目することで、その動向を読み取りたいと考えた。ではなぜ日本に着目したかと言えば、アジアのラグビー文化の生成に大きな影響力を発揮する存在であるためだ。さらに、1980年代以降のラグビーの受容プロセスにおいて、日本がどのような役割を果たしたのかを明らかにすることで、国際ラグビー評議会と日本の関係が見えてくると考えている。そこで上半期は日本ラグビーの需要と展開に関する史資料を収集した他、イギリスのワールドラグビーミュージアムで調査をした。今後は、この調査で得た史資料の分析や学会報告などを行っていく予定である。

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