中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2011年11月5日

平成23年度スポーツチャレンジ助成 第7回目中間報告会を実施しました

平成23年度スポーツチャレンジ助成 第7回目中間報告会を実施しました

7回目となるスポーツチャレンジ助成中間報告会を11月5日(土)、都内で開催しました。当日は、第5期研究助成対象者の家光さん、左右田さん、吉村さん、山浦さん、山口さん、洪さん、外国人留学生奨学金対象者の朴さん(韓国)の計7名に出席していただきました。

家光さん、吉村さん、山口さんは運動生理学視点で、洪さんは動態物理学的視点から、さらに左右田さん、山浦さん、朴さんからは人文系視点からの研究テーマについて、進捗と今後の展望を話していただきました。サッカーボールの軌道を解析する洪さんの報告では、ボールを蹴る瞬間の下肢の動きの例を本人が実際に示すなど、熱の入った報告と質疑応答が続きました。

座談会では日頃研究者が課題と感じている事柄について、立場をこえた忌憚ない意見交換が行われました。「研究テーマを設定するときのポイント」「調査・取材に欠かせない貴重な人脈」「外国でのコミュニケーション」・・・等などテーマは多岐に渡りました。とりわけ定本審査委員からは、「研究成果発表で英語力は欠かせないが、論文執筆時には、内容はもちろんアカデミックライティング(学術的文章作成)が必要なので努力してほしい」とアドバイスをいただきました。

平成23年度スポーツチャレンジ助成 第7回目中間報告会を実施しました
平成23年度スポーツチャレンジ助成 第7回目中間報告会を実施しました

参加いただいた審査委員

浅見審査委員長、伊坂審査委員、草加審査委員、定本審査委員、事務局


家光 素行(第5期生)

性ステロイドホルモンの増大が生活習慣病を改善させるか?


家光 素行(第5期生)「生活習慣病に対する運動や食事のあり方を、性ホルモン分泌の視点から探る研究チャレンジ。性ホルモンは卵巣や精巣からだけでなく骨格筋からも合成できることは既に我々が証明してきたが、筋内の性ホルモンの新たな役割の可能性を探った。性ホルモンの前駆体であるDHEAは骨格筋に取り込まれ、性ホルモンに代謝・分泌されるが、肥満・糖尿病といった高血糖モデル動物に対し、運動トレーニングやDHEA慢性摂取は、血糖状態を改善し、その機序(メカニズム)に骨格筋内の性ホルモン分泌の増加が関わっているという結果が得られた。今後は、骨格筋の性ホルモンを増やすための運動や食事摂取方法を精査し、ヒトへの応用研究の扉としたい。」

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左右田 あみ(第5期生)

保健体育教育がおよぼす子どもたちへの影響と役割


左右田 あみ(第5期生)ブータン王国との出会いは以前海外青年協力隊員として現地で体育教育に携わったことにさかのぼる。首都の標高は2,400mという同国では「30分以上山道を歩いて登校すること自体が運動をしていることにつながる」だから体育教育を学校に取り入れる必要性がないという教育者の声。保健体育課程の履修は各校長の裁量となっており、現実には学校現場では殆ど授業が行われていない。今回は9月に2週間、体育を授業に取り入れている学校とそうでない学校を訪れ9~18歳の児童生徒約700名を対象に(小学4年~6年/同国での就学は年齢制約なし)調査を行った。このデータから、本教科(課程)が健康づくりと円滑な社会に貢献するものとなるかを精査している。今後データの考察を進める計画である。

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吉村 英一(第5期生)

急速減量・急速回復時のエネルギー代謝と体組成の変化に着目した研究


吉村 英一(第5期生)体重でクラス分けされる競技に出場する選手は、試合前の短期間で減量する。この減量中や計量後の体重回復の際の身体組成の変化については、解析されてない部分がある。そこで本研究では1週間で5%減量する急速減量と、その回復によるエネルギー代謝など身体への影響を検証。柔道選手など10名の協力を得て通常時/減量時/回復時の時間軸で体水分量、タンパク・ミネラル量、脂肪量の推移をみた。結果、急速減量では脂質酸化の低下、乳酸産生が抑えられる傾向などが確認できた。今後は対象者間の減量方法の相違やパフォーマンスに関して考察していきたい。

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山浦 一保(第5期生)

アスリートのキャリア発達上における危機的経験からの飛躍に関する研究


山浦 一保(第5期生)アスリートは、時として“苦境”や“落ち込み”など危機的経験をする場合がある。その危機から心理的に回復し、さらに以前のレベルを超えて飛躍するにはどうすればよいのか。本研究では、その危機的経験の内容、それを克服するために必要な要因を探ることが目的としている。
6月までに日本選手権レベル以上の競技経験者13名のインタビューを終了。同時に、学生232名の調査アンケートも回収した。
インタビューでは、“危機的経験”を時系列でみて「安定型」「V字型」「波乱万丈型」「二重構造型」の4つにタイプ分けすることができた。
今後は“危機的経験”の内容、および回復・飛躍の心理的プロセスを精査するとともに、監督コーチとのかかわりなどの要因を含めて、「次の飛躍」に有効なサポートのあり方の示唆を得ていく。

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山口 鉄生(第5期生)

骨格筋損傷 ~筋再生加速化への挑戦


山口 鉄生(第5期生)骨格筋損傷は運動器障害の中で頻度が高く再発しやすい。我々は既に筋芽(きんが)細胞を用いた研究により39度で培養すると遅筋化することを報告した。今回は更にこれを発展させ、温&冷ストレスを組み合わせることで筋芽細胞の増殖と分化に及ぼす影響ついて検証した。温度変化により様々な増殖と融合の変化が観察され、遅筋・速筋を決めるミオシン重鎖のタイプ変化は温度とその負荷時間により細かく制御できる可能性が確認できた。温度変化に伴い細胞内カルシウムとその下流の転写因子の発現が変動しており、ミオシンのタイプ変化の一つの機序として考えられる。これらの細胞レベルのデータをもとに、人体への適用を視野に入れている。身近な方法としてアスリートの温泉や冷泉の有効的活用法、また今後は肉離れ再発防止策などに繋げる研究へ進めたい。

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洪 性賛(第5期生)

サッカーにおけるナックルボールの空力特性と無回転キックのスウィング動作の特徴


洪 性賛(第5期生)サッカーでの無回転シュートは、予測できない軌道を示すケースがある。本研究では被験者5名の協力のもと、独自の計測器を併用し工学的・流体力学的手法でボール廻りの流体を可視化した。ボール後方にランダムな渦巻きが生じ、これが不規則な軌道を示すナックルボールになる要因のひとつと推測できた。あわせて無回転シュートを生むスイング動作の分析も進め、ここではインパクト時の蹴り足やボール速度だけでなく、足関節の動きやジョイントトルクなど広範囲にわたるデータを収集中。今後被験者を増やし、技術的メカ二ズム解析を進めていく予定である。

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朴 京眞(外国人留学生第5期生)

ナショナルカリキュラム(教育課程)からみたダンス教育に関する研究


朴 京眞(外国人留学生第5期生)ナショナルカリキュラムにおけるダンス(舞踊)の指導内容について、日韓の特色や相異を調査することを通じて、学校教育でのダンス教育のあり方や、日韓で互いに示唆できる点を模索する研究である。予備情報として教科書内容の確認が肝心と判断し進めてきた。韓国では国定と検定の教科書が使われ、それらを対象にナショナルカリキュラムから教科書への具体化について分析をしている。今後は記載内容や教育現場の情報だけでなく、教科書執筆者への直接インタビューを行い、意図や背景を確認し教育課程に示唆できる内容として練り上げたい。

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