年度別チャレンジャー一覧

助成対象者のチャレンジ概要
吉原 利典
氏名
吉原 利典(よしはらとしのり)
助成実績
スポーツチャレンジ研究助成(基本):第16期生
女性のトレーナビリティを決定する因子の探索―基礎からヒト骨格筋への応用―

筋力トレーニングの効果は男性と比べて女性で低く、女性競技者では筋機能を向上するにはより高強度・頻度の運動が必要となり、オーバートレーニングによって運動器障害や競技力の低下を招くことは少なくない。本テーマは、女性の筋力トレーニングに対するトレーナビリティが低い原因を、環境要因によるエピジェネティクス(後遺伝的な変化)から解明し、女性の運動効果を最大限に引き出すための科学的根拠の創造にチャレンジする。

成果報告(2023年3月)

私は、この一年間14期生での基礎的な研究を発展させ、環境要因によるエピジェネティクス(後遺伝的な変化)という観点から女性の筋力トレーニングに対するトレーナビリティが低い原因の解明に取り組みました。その結果、ヒト外側広筋におけるグローバルなレベルのヒストン修飾状態の変化は、一過性の運動よりも性別や性周期によって大きな違いが見られることを示しました。また、遺伝子発現解析の結果、筋肥大に関わる遺伝子の安静レベルの発現量に差が見られる他、それらが性ホルモンであるエストロゲンにより変動する可能性も見出しています。研究者に(しつこく)寄り添ってくれる本助成は、自分を客観的に見直す良い機会であり、研究者としてのさらなるステップを踏み出すきっかけになりました。今後も本チャレンジの成果を活かし、女性の運動効果を引き出すための科学的エビデンスの創出に努めたいと思います。

スポーツチャレンジ研究助成(基本):第14期生
女性のトレーナビリティを決めるのは遺伝よりも環境なのか? ―基礎的研究からのアプローチー

筋力トレーニングの効果は男性と比べて女性で低く、女性競技者では筋機能を向上するにはより高強度・頻度の運動が必要となり、オーバートレーニングによって運動器障害や競技力の低下を招くことは少なくない。本テーマは、女性の筋力トレーニングに対するトレーナビリティが低い原因を、環境要因によるエピジェネティクス(後遺伝的な変化)から解明し、女性の運動効果を最大限に引き出すための科学的根拠の創造にチャレンジする。

成果報告(2021年3月)

私はこの一年間、「女性のトレーナビリティを決めるのは遺伝よりも環境なのか? ―基礎的研究からのアプローチ―」というチャレンジテーマを掲げ、男女のトレーナビリティの性差を引き起こす根本的な原因の解明に取り組みました。当該年度には、安静時のラット⾻格筋におけるヒストン修飾状態の性差や⼀過性の運動やタンパク質摂取後のヒストン修飾応答の性差について検討を⾏いました。興味深いことに、相対的に同程度の筋収縮運動を実施したにも関わらず、トルクの低下率や⾎中乳酸濃度の上昇には性差が認められ、雌ラットにおいてネガティブな影響が⼤きいということが示されました。そして、得られたラットの筋サンプルからトータルRNAを抽出し、アレイ解析によりこのような応答の性差を網羅的に解析したところ、タンパク質翻訳の開始を司るタンパク質をコードする遺伝子やヒストンの脱メチル化を担うヒストン修飾酵素の遺伝子発現に性差が認められ、環境要因によるエピジェネティックな遺伝子発現調節が女性のトレーナビリティを決定づける重要な因子である可能性を見出すことができました。定期的な評価を受けながらの取り組みは有意義なものであり、同時にコロナ禍において研究に対する意欲を維持するためには非常に重要でした。本助成による一年間の取り組みは終了しますが、本チャレンジの成果を活かし、更なるメカニズムの解明に向けて今後も研究に取り組みたいと考えています。