年度別チャレンジャー一覧

助成対象者のチャレンジ概要
田名辺 陽子
氏名
田名辺 陽子(たなべようこ)
助成実績
スポーツチャレンジ研究助成(基本):第14期生
皮膚間質液を用いた筋損傷評価法の検討 -即自フィードバックを目指して-

筋損傷を誘発する運動を行い、その後の血液および皮膚間質液中の筋損傷指標(クレアチンキナーゼ、タイチンなど)の経時変化を評価する。皮膚に特殊な透析プローブを挿入し、筋損傷を反映する物質を連続的に回収 する。皮内透析による間質からの筋損傷指標の評価は、従来用いられてきた血液や尿による評価法に比べ低侵襲でより即時フィードバックを可能にし、競技現場において有用性の高い評価法となる可能性が考えられる。

成果報告(2021年3月)

本チャレンジでは、低侵襲的で即時的にフィードバック可能な筋損傷評価法として皮膚間質液に着目した。予備検討として、筋損傷運動後に1)皮膚間質液で筋損傷指標となる物質を検出可能であること、2)皮膚間質液では検出可能な物質(タイチンフラグメント)と不可能な物質(クレアチンキナーゼ)がある可能性が確認できた。一方で、当初の予想に反して皮膚間質液中の筋損傷指標の経時変化は血液中のものと類似していた。さらに、非活動肢側の皮膚間質液からも筋損傷指標が検出されたことから、血中で増加した筋損傷の指標となる物質が、間質へ漏出する可能性が考えられた。本実験の開始が予定よりも遅れてしまい助成期間内に全ての分析を完了できなかったが、今後分析を進め、成果の公表に努めたい。今回検討した筋損傷指標では目標としていた即時フィードバックに繋がるような知見は得られなかったが、皮膚間質液からも筋損傷指標を検出できる可能性を見出せたことは将来ウェアラブル端末から筋損傷の程度を評価できる可能性を示唆し、応用的な側面からも大きな意義がある。このようなチャレンジングな研究に取り組めたことは大変貴重な経験であった。この基礎研究を基盤として、皮膚間質液を用いた筋損傷評価法を確立し、競技選手や指導者が簡易にコンディショニングを把握できるような知見を発信したい。財団の先生方には研究のご助言だけでなく体調にも配慮していただき、感謝申し上げる。