
10月11日(日)、2026年度第2回目の中間報告会を東京・日本青年館で開催しました。今回は体験チャレンジャーの種田なつはさん(アーティスティックスイミング)、安井栄絢さん(体操)、吉﨑空乃さん(競技ダンス)、野口颯さん(ウインドサーフィン)、研究チャレンジャーの服部桜さん、西川太智さん、胡暁越さん、藤田真子さんの8名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を振り返るとともに、下半期の活動計画について発表を行いました。
参加いただいた審査委員(敬称略・五十音順)
伊坂忠夫審査委員長、片山敬章委員、小島智子委員、杉本龍勇委員、瀬戸邦弘委員、増田和実委員、村上晴香委員

服部桜(研究)
私のチャレンジは、スポーツ遺伝学の研究に必要な、培養細胞の遺伝子編集技術を確立することにある。筋力や持久力などの身体能力には遺伝的要因も関与しているが、関連する遺伝子がどのような仕組みで能力の個人差を生み出すのかは、まだ十分に解明されていない。そのメカニズムを明らかにすることで、個人に最適化されたトレーニングや栄養介入の開発につなげたいと考えている。当初の計画では、既知の遺伝子の機能を培養細胞で再現・検証した後、新たな遺伝子の機能解析に取り組む予定だった。現在は、遺伝子編集の技術自体は習得できたものの、編集した細胞を実験に使える状態にする作業に時間を要しており、計画には遅れが生じている。一方、条件検討や実験環境の構築を通じて、新たな技術や研究遂行に必要なスキルを身につけることができた。直近5回目の試行では、目的とする遺伝子編集が約30%の割合で確認できた。今後は編集された細胞を一つずつ分離・抽出し、10月中に具体的な機能解析へ進むことを目指す。
種田なつは(アーティスティックスイミング)
アーティスティックスイミングの競技力向上に向け、上半期ではこれまで経験のなかったピラティスに取り組み、身体の深い部分の使い方を学んだ。また、抵抗をかける道具を使ったトレーニングにより、技のスピードも向上した。演技面では、芸術的な表現力を高めるとともに、後半でも事前に申請した難易度(DD)どおりに技を実施できるようになった。5月の日本選手権と6月のチャレンジカップでは、技が正確に認定されず、悔しい結果となった。一方、8月の日本学生選手権では、芸術性と技の出来栄えが評価され、優勝することができた。この経験から、高い芸術性に加え、技を正確に実施することの重要性を再認識した。今後は約1カ月間、シンガポールでの練習に参加し、新たな技術や考え方を学ぶ予定。1月のナショナル・トライアルでは、3年連続3位という過去の成績を上回りたい。
西川太智(研究)
私は、筋力トレーニングの効果に大きな個人差が生じる仕組みを解明するため、筋線維の動員と、筋肉から分泌される筋肥大誘発性マイオカインの関係を研究している。仮説は、筋肉の使い方によって分泌される物質が変化し、それが筋肥大の個人差につながるというものである。当初の計画を見直し、現在は同一人物に対し、自発的な筋力発揮と電気刺激による筋収縮を比較する実験を進めている。最大筋力の10%という低強度の運動を行い、筋力や筋厚、運動神経活動、血中のマイオカインなどを測定する。予備実験では、安全に実施できることを確認し、両条件で酸素摂取量に大きな差がない一方、筋疲労や筋線維の動員に違いが見られた。現在は本実験のデータ収集を進めており、今後、マイオカインの解析を通じて、運動神経活動の違いが筋肥大の個人差にどう関係するのかを明らかにしたいと考えている。
野口颯(ウインドサーフィン) ※オンライン参加
第1四半期は、グーフィースタンスの技術向上と試合構成の確立に取り組んだが、試合で十分に成果を出せず、達成率は50%である。第2四半期はダブルループの成功率が大幅に向上し、達成率を80%とした。マウイとスペイン・カナリア諸島での3大会では、思うような結果を残せず悔しい思いをした一方、世界のトップ選手との差や課題を把握できた。特に、波の大きなセットを捉え、そのポテンシャルを最大限に生かすことが現在の課題。また、ダブルループはボードの回転を意識した練習により、3回の挑戦で1回は着地できるレベルまで向上した。今後は大きなセットを捉える技術とダブルループの完着率をさらに高め、10月のアロハクラシック、11月の大会で成果につなげたい。この2つの課題を克服し、世界チャンピオンという目標に近づいていく。
胡暁越(研究)
私は、暑熱環境下での熱中症予防に向け、手足を冷やすAVA(動静脈吻合血管)冷却の効果を検証している。近年、熱中症による健康被害が深刻化するなか、効果的な身体冷却法の確立が重要である。実験では、気温35度、湿度50%の環境で自転車運動を行い、その後、15~16度の冷水に15分間浸す方法と、市販の保冷剤を使う方法を比較した。その結果、足部よりも手掌部を冷水で冷やした方が、運動後の体温や心拍数の低下に効果があり、保冷剤による手部冷却では明確な効果が認められなかった。これにより、冷却する部位だけでなく、方法も重要であることが分かった。一方、科学的に有効な方法と現場で実践されている対策には隔たりがある。今後は手掌部と足部を同時に冷却する実験を行い、効果を検証するとともに、研究成果の発信と現場への普及を目指す。
安井栄絢(体操)
今シーズンは、インターハイ、全日本ジュニア、国民スポーツ大会で団体優勝し、高校三冠を達成した。個人総合でもインターハイと全日本ジュニアで優勝し、チームを引っ張ることができた。一方、全日本選手権では実力を発揮できず、トップ選手との自信や演技の完成度の差を痛感した。この悔しさをきっかけに、自分の考えや言い訳を紙に書き出し、課題を整理して練習の目的を明確にするようにした。今後は演技への集中力を高め、着地まで決め切る力を磨くとともに、技の難度を上げてDスコアの底上げを図りたい。来年4月の全日本選手権ではDスコアを1.2~1.5点引き上げ、6種合計82点超えを目指す。高校での実績に満足せず、シニアのトップ選手と戦える力を身につけていきたい。
藤田真子(研究)
今回の研究では、心拍リズムと運動リズムが同期する現象(CLC/Cardio-Locomotor-Coupling)に着目し、同期が循環機能や運動時のエネルギー効率に与える影響を検証している。健常者20人を対象に、心拍間隔の30%(収縮期)と80%(拡張期)に着地のタイミングを合わせる条件、制御しない条件の3条件で走行実験を実施した。9月末に全員の実験を終え、現在はデータを解析中である。中間結果では、音によるタイミング制御によって心拍と着地を高い精度で同期できることを確認した一方、同期の程度には個人差が見られた。また、同期条件では酸素摂取量(VO₂)が低下する傾向が確認された。今後はエネルギー消費量や循環指標などの解析を進め、心拍と運動の同期が身体に及ぼす影響や、運動効率の改善につながる可能性を明らかにしていきたい。
吉﨑空乃(競技ダンス)
私の目標は、自分らしい表現で観客の心を動かし、世界で戦い続けるラテンダンサーになること。第1四半期は、東京オープンのシニア・ソロ部門で優勝し、海外コーチのレッスンを通じて、リズムの捉え方や身体の使い方を学んだ。一方、体調管理と体力強化が課題となったため、第2四半期は週2回の3km走や筋力トレーニング、ストレッチを継続した。技術面でも、身体の連動や難しい動きでの姿勢の崩れを改善するため、部分練習や動画による振り返りを重ね、7月のオールジャパンで優勝、8月の全国大会で準優勝した。世界トップレベルのドイツの大会では一次予選を通過したものの、世界のトップ選手との基礎力の差を実感した。下半期は毎月の重点課題を明確にし、技術と体力の向上、身体のケアを両立させながら、海外でも通用する選手を目指して努力を続けていく。










