9月23日(土)、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京都)にて平成29年度 第2回目の中間報告会を実施しました。この日、参加したのは体験チャレンジャーの村上レイさん(アイスホッケー/選手)、本堂杏実さん(障害者スポーツ・アルペンスキー/選手)、若月新さん(アルペンスキー/選手)と、研究チャレンジャーの惠谷隆英さん、尾川翔大さん、佐藤佑介さん。オランダに留学中の中田貴央さんは、インターネットを通じて報告を行いました。
参加いただいた審査委員
浅見俊雄委員長、遠藤保子委員、北川薫委員、小島智子委員、定本朋子委員、高橋義雄委員、増田和実委員、ヨーコゼッターランド委員(五十音順)
村上レイさん(アイスホッケー/選手)
春先のシーズンオフには週5回のトレーニングを行い、瞬発力と体幹の強化に取り組んだ。また、実業団チームが主催する陸上トレーニング&氷上練習にも参加した。8月上旬にはU16エリートキャンプに呼ばれたが、残念ながらロシア遠征のメンバーには選出されなかった。コーチの皆さんからは、フィジカルの強化や体重の増加、またシステムの理解を深めるよう指導をいただいた。また8月中旬には2週間、カナダでのホッケーキャンプに参加した。そこで実感したのは、日本よりハードなトレーニングが行われていること、より早い判断が求められること、そして言葉の壁など。その一方でノバスコシア州のニューブリッジアカデミーから入学についてのお話をいただき、10月からの留学が決定した。まずは13〜14歳のバンタムリーグで活躍し、より高いレベルのリーグを目指していく。
惠谷隆英さん(研究)
私は「音と空間イメージがリズミックな全身運動に与える影響」というテーマで研究している。たとえば音楽に合わせて自然に身体が動くように、音と身体には強い関連性があるという先行研究はあるが、具体的にどのような音がどう作用するかについては明らかにされていない。このメカニズムを解明すれば、運動パフォーマンスの向上に寄与できるのはないかと考えている。上半期はまず、音圧の影響について実験と分析を進め、音にアクセントがあると身体の強調が安定するといった結果を得た。10月からは音高の実験に入り、来春には論文執筆を予定している。
本堂杏実さん(障害者スポーツ・アルペンスキー/選手)
2018年平昌パラリンピックへの出場を目指し、全力でチャレンジしている。できるだけ滑り込みを行いたいと遠征を繰り返し、昨日、チリから帰国したばかり。現在はナショナルチームの育成選手として、1年のほぼ半分は海外で強化に取り組んでいる。ジャパンパラリンピックでは2冠を獲得したが、平昌に出場するためにはあと5秒ほどタイムアップしなければならない。日本は出場枠を持っているので、あとは自分がその5秒にチャレンジしていくだけ。来月から2月中旬まで、ヨーロッパや北米の遠征を繰り返し、ポイントを積み重ねて必ず平昌への切符をつかみたい。平昌に出場することが、2022年北京パラリンピックにつながると信じている。
尾川翔大さん(研究)
私のテーマは「戦間期におけるスポーツ政策に関する歴史学的研究」。同様の研究はこれまでもいくつかなされてきたが、それらの多くは文部省を中心としたスポーツと政治的権力の関わりに焦点を当てたもの。しかし私は文部省に大きな影響を与えた内務省の政治的権力を踏まえて検討する必要があると考えている。太平洋戦争へと向かってしまった時代と、いまの時代の空気が非常に似ていると感じている人がいる。同じ過ちを繰り返さないために、この研究には大きな意義があると考えている。上半期は国立国会図書館や神保町の古書店街で史料・資料の蒐集を進めた。12月のスポーツ史学会では、その一部を「体育・スポーツ政策の文部省への一元化の経緯」(仮題)として発表する予定。また下半期には、北海道大学や神戸大学のみに所蔵される資料「内務時報」の調査を行う。
若月新さん(アルペンスキー/選手)
2022年北京オリンピックに出場するため、FISのポイントランキングで同世代のNo.1になることを目標にチャレンジしている。SAJジュニア管理指定選手に選抜されたことから、定期的にJISSで体力測定などがあり、基準値をクリアするために、陸上トレーニングなどでフィジカルの強化に取り組んでいる。管理指定選手には年代ごとの明確な強化対策が打ち出されており、国内外のランキング争いもし烈。それらを乗り越えるためには、自ら進んでより良いトレーニング環境を求めていく必要がある。またマテリアルテストの結果、この夏から使用するスキーとブーツを変更した。スキーは技術と用具のマッチングが大切なので、新たな技術の獲得にもつながると期待している。10月にはスキーメーカー主催のスイス遠征に参加して、11月からは中国遠征を予定している。12月から始まる新シーズンでは、FISポイント20点以内を目指していく。
佐藤佑介さん(研究)
私はこの研究を通じて、あん馬での両足旋回中に体操選手は何を見ているのか? を明らかにしたいと考えている。その結果を、2020年東京オリンピックを目指す選手や指導者に還元し、金メダルの獲得に貢献したい。7〜8月には予定通り実験を行い、男子体操選手22名のデータを取得した。その結果、競技を始めた最初の5周に対し、最後の5周では規則性にノイズを確認するなど貴重なデータを得ることができた。先行研究では頸部の疲労が眼球運動に影響を与えるとされており、より詳細な分析が必要だと考えている。研究の過程でナショナルチームの選手やコーチとのディスカッションも行っており、こうしたつながりから、2017年モントリオール世界体操選手権に日本チームの研究部の一員として参加する機会を得た。より現場で強化に直結する研究を進めていきたい。
中田貴央さん(留学生)
SOMTという大学院教育の1年次を無事に修了し、9月から2年次に突入する。SOMTにはオランダでフィジオセラピストとして登録されている者のみが入学でき、私はここで可動域制限の改善と神経筋機能の改善を目的とする治療法を学んでいる。合わせてサッカー日本代表の久保裕也選手の個人サポートも続けており、所属クラブと連絡を取り合いながら、インディビジュアルトレーニングサポートなどを作成している。彼はベルギー1部の所属クラブでは17試合で11得点の成績を上げ、ロシアW杯アジア最終予選にも名を連ねた。その活躍は嬉しい限りだが、私自身が日本代表に貢献するため一日でも早くGPSや血液検査などの機器が整ったクラブで活動したい。パフォーマンスの分析を今から始めなければ、日本サッカーが世界から取り残されてしまうのではという危機感を抱いている。