中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2017年9月22日

平成29年度 第11期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました

9月22日(金)、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京都)にて平成29年度 第1回目の中間報告会を実施しました。この日、参加したのは体験チャレンジャーの紀平梨花さん(フィギュアスケート/選手)、三島廉さん(カヌースラローム/選手)と、研究チャレンジャーの岩山海渡さん、平野智也さん、大塚光雄さん、宮本直人さん。アメリカに留学中の三浦優希(アイスホッケー/選手)は、インターネットを通じて報告を行いました。

報告会終了後には、メンタルトレーナーの後藤史さん(体験助成第5期生/株式会社リコレクト)を講師に招き、「チャレンジする心の持ち方、高め方」というテーマで座談会を実施しました。グループに分かれたチャレンジャーは、ボールを使ったゲームに取り組んだ後、プレッシャーのかかる状況下での心的状況やパフォーマンス低下の原因となる要素を洗い出し、グループごとに発表を行いました。その発表内容について全員で議論を行ったほか、審査委員の先生方からさまざまなアドバイスをいただき、活発な座談会となりました。

参加いただいた審査委員

浅見俊雄委員長、草加浩平委員、定本朋子委員、高橋義雄委員、福永哲夫委員、増田和実委員、村田亙委員(五十音順)

岩山海渡さん(研究)
平成29年度 第11期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会

身体の中に蓄えられているグリコーゲンは、運動を持続する際のエネルギー源。持久系の種目で、グリコーゲンについてこれまで考えられてきたのは、事前にどれだけ蓄えるかということです。私のチャレンジでは、蓄えるのではなく、グリコーゲンの消費を節約することについて研究します。そのため、被験者に炭水化物と脂肪の多い食事を摂取させ、運動させた後にどちらがグリコーゲンを節約できるかを測定します。評価には、私の所属する施設で行われてきた筋肉内での評価に加え、新たに肝臓での評価手法も用います。見た目が明らかに異なると研究結果に影響されるため、見た目やその他の成分は同じで、脂肪と炭水化物の量だけが違うマフィンを用意した。その結果、現状では運動中は脂肪の多いマフィンを食べた方がグリコーゲンを節約できるという結果がでている。運動後の結果としても、筋肉内のグリコーゲンはほぼ同じだった。一方で肝臓内のグリコーゲンは、脂肪の多いマフィンを食べた方が節約できていた。年内までに予定人数である10名のデータをとり終えて、3月までには結果をまとめたいと思っている。

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紀平梨花さん(フィギュアスケート/選手)
平成29年度 第11期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会

アメリカ・コロラド州で行った4月の強化合宿では、高地トレーニングと現地の著名な振付師にショートプログラムの指導を受けた。帰国後は国内ショーへの出演や全日本ジュニア強化合宿に参加した。8月の香港でのアジアンオープントロフィーでは、ショート/フリープログラムをともにノーミスで終え、ジュニア女子にて優勝した。9月4日〜11日にかけて行われたラトビアでのジュニアグランプリの結果は2位。練習では4回転ジャンプを成功させ、トリプルアクセルの成功確率も上がってきている。とは言え、ロシア選手をはじめ国内外選手の技術力/表現力も向上しているので、陸上/氷上トレーニングの強化とともに、バレエ・ダンスも練習に組み込んで表現力を伸ばしていきたい。12月の全日本選手権と来年の3月にブルガリアで開催される世界ジュニア選手権に出場できるよう、国内外の試合でいい成績を狙いたい。

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平野智也さん(研究)
平成29年度 第11期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会

2016年のリオパラリンピックのT47クラス(片側前腕切断または同等の機能障害)女子100m決勝では、義手を用いる選手、用いない選手が混在していた。しかし、義手を使ったアスリートからは、「義手を用いた方がレース中盤やスタートで効果的」というコメントをもらっている。そこで私は、スタート局面でのパフォーマンスと動作に義手が与える効果を探っている。そこを明らかにするために、パラスプリンターと学生スプリンターに、3点支持と4点支持でのクラウチングスタートからの10m全力疾走をしてもらったところ、学生スプリンターの片腕を固定すると、3点支持での5mタイムは低下し、スターティングブロックに加える力も前・後脚ともに低くなることがわかった。今後は、パラスプリンターの両手・両足での力発揮などの力学的データ、体幹や骨盤のひねりなどの動作データを詳細に分析したい。健常者においても片腕の使用を制限した3点支持の場合にどのようなクラウチングスタートをするかを検証する。

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三浦優希さん(アイスホッケー/選手)
平成29年度 第11期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会

今シーズンはまず、体幹部の強化を行い体重80kg以上に増加することを目標に、北米大学トップ選手たちに当たり負けしない徹底した体づくりをした。そのために、パフォーマンス向上を目的とした機関にて、シュート力向上と一対一で負けない体づくりをテーマにメニューを作成して実践した。その後、シーズン開幕に向けて、試合終了まで走りきる身体づくりをテーマに盛岡合宿を行った。合宿には、海外で挑戦するアスリートが集まり、スケーティングの復習とフォームの矯正とともに、海外でも戦える強いメンタルのトレーニングがあった。今年の秋より所属するレイク・スーペリア州立大学で、NCAAの規約違反のために1年間の試合出場の停止処分を受けてしまった。この期間は英語力の向上と、試合を気にせずに筋肉トレーニングなどフィジカルの強化に集中して取り組みたい。現時点での体力テストで、いくつかの種目ではチーム1位の結果だったのでコーチへのアピールはできていると思う。コツコツと努力を続けて、1年後の開幕戦で大活躍したい。

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大塚光雄さん(研究)
平成29年度 第11期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会

実業団と大学で、陸上競技の短距離走の選手を対象にしたコーチングをしている。400mハードル走の選手には、シーズン前に足の回転数と歩幅で決まる通過タイムをもとに目標値を設定する。コーチングする400mハードル走選手の中で9名を被験者として、大幅な自己新記録更新時のレースペースを推定できるかについて研究している。シーズン前に良いタイムが出たレースでの通過タイムの傾向や足の回転数や歩幅の傾向を基に目標値を算出するが、選手によって、前半・後半のタイムの傾向や、足の回転数と歩幅は違う。シーズンが開幕し、現状では、5名が自己記録を更新し、その内で3名が大幅な自己記録を更新した。その更新したレースでの実測値と目標値を比較した。前半/後半のタイム差、後半区間での足の回転数や歩幅は小さいものだったが、前半の歩幅や足の回転数の差は結果となった。まだ自己記録を更新していない選手に自己記録を更新させて比較すること、それにプラスして国内外の一流選手で大幅な自己記録更新した映像なども分析していきたい。

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三島廉さん(カヌースラローム/選手)
平成29年度 第11期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会

4〜8月は、国内大会での優勝やU23日本代表としてスロバキアで行われた世界選手権大会(スロバキア)に出場した。ただしアグレッシブに攻めたことが裏目に出てしまい、ペナルティーを取られることもあった。順位は良くても、タイムを伸ばすことはできなかった。夏にはチェコにて1ヶ月の夏合宿を行なったこともあり、4月に比べて試合勘やコースへの対応力が向上したとともに、波や流れの使い方が向上してきた。しかし9月のイタリアでの世界大会では、予選敗退に終わり、まだまだ世界との差があると実感している。今後は、フィジカルや静水でのトレーニングを実施して、2月のオーストラリアオープンでは表彰台を狙いたい。

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宮本直人さん(研究)
平成29年度 第11期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会

100年前のオリンピック優勝記録において、現代のマラソンでは約20%のタイム短縮をした。一方でクロスカントリースキーだと、タイムは2倍以上、高速化している。この理由として、クロスカントリーでは、道具をうまく活用したことが挙げられる。スキーの場合、雪質にあったワックスを選択することは特に大事。事前に雪の上で行うワックステストから勝負が始まる。今までは、感覚的にこのテストをしていたが、定量的なアプローチが必要ではないかということで研究をスタートした。そのために移動時でも2cm以下の精度で測定できる、新開発のGPSを用いてワックスの比較テストを比較したい。これまでにクロスカントリースキーの一流チームであるフィンランド代表のワックステストに参加し、どのようなテストをしているかについて視察してきた。そして山形県の雪氷防災センターにて、スキーで生じる摩擦の計測も行った。これから本格的なスキーシーズンに入るので、できるだけ多くのデータ収集と解析を行っていきたい。

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