全国児童 自然体験絵画コンテスト

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水辺に学ぶ体験レポート:Vol.4

八頭町立船岡小学校(鳥取県八頭郡)

子どもたちに「夢中」になれる何かを見つけてほしい

八頭町立船岡小学校では、自然体験を実施するだけでなく、授業や学校行事と連動させ、体験を通じて育んだ興味・関心を広げる指導が行われています。そこには、子どもたちに「熱中できる」「夢中になれる」何かを見つけてほしいという先生たちの願いが込められていました。

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興味を見つけるきっかけ
「自然体験を通じて、郷土愛も一緒に育んで欲しい」と村山洋子校長

鳥取市から車で約30分にある八頭町立船岡小学校では、「子どもたちの郷土愛を育む」という村山洋子校長の願いから、自然豊かな地域特性を生かした自然体験を授業に取り入れてきました。これを中心となって実践しているのが、現在6年生の担任を務める村岡宏寿先生です。当初は「船岡の宝物を見つけよう」というテーマで、生き物の観察や飼育、自然の中で遊ぶことの楽しさを伝え、川や山など自然そのものが、船岡にとっての「宝物」であることを感じてもらおうと進めてきましたが、この中で村岡先生は、自然体験がもつ別の効果にも着目しました。

「自然の中で子どもたちは、普段に比べ無邪気で素直になり、助け合う子、リーダーシップをとる子、一つのことに集中する子など、個性や性格が見えてきます。さらに、子どもたちがどんなことに興味を持っているかを知ることができるのですが、それは同時に子どもたち自身が、自分の興味を知る機会となったのです」。

たとえば、魚に興味を持った児童は、それが釣りへと発展して学校一番の釣り名人となり、学校生活自体をイキイキとしたものへと変えました。また、水棲生物に興味をもった児童は、それを創作活動へと発展させました。船岡の自然を探索するアウトドアクラブの部屋には、その児童が描いた多くの生き物の絵が飾られています。またある児童は、つかまえてきた生き物について調べ、誰よりも大切に飼育する姿が見られるなど、自然の中で見つけた興味を、それぞれが普段の行動の中で表すようになったのです。


授業や学校行事との連動で興味を育てる

個々に良い反応があったことから村岡先生は、子どもたちの可能性を広げていくため、子どもたちが自然体験を通じて持ち帰った興味を掘り下げることができるよう、授業や学校行事などさまざまな機会を提供しました。「水辺の風景画コンテスト」もその一つで、自然での体験・経験を創作活動としてつなげていくために応募し、第24回のコンテストでは、自然体験で出会ったズガニを描いた野口夏輝くんの作品が「文部科学大臣賞」を受賞するなどの成果をだしました。

「現在も図工で絵を描く機会はありますが、皆、見たものに加えて、図鑑で調べて描いたり、自分が体験して感じたこと(感情)を表現しようと、教室の中でその時の顔の表情や体の動きを再現するなど、熱意を持って創作に取り組んでおり、自然体験が学習意欲の向上へと繋がっていった例の一つです」。さらに、学習発表会や児童集会などでは、子どもたちが自主的に考え、自然体験の中で見つけた生き物を全校児童に知ってもらうための創作劇やゲームを制作するなど、いろいろな活動へと広がっています。

「体験が興味を生み、その興味が原動力となって、何かを成し遂げていく。するとうれしくなってまた自然の中で遊びたくなり、さらに興味ややる気を育てているのだと思います。興味を持った子どもたちは取り組む姿勢が変わり、学校生活に活力が生まれ、何事も徹底的にやり抜く底力も備わってきたのです」。

また子どもたちの自然への興味は、保護者へも広がりを見せ、特に父親によって組織されている「父親委員会」では積極的に自然体験が行われるようになり、結果的に学校と地域が一体となって子どもたちに自然体験の機会を提供できるようになってきたそうです。


自然体験は学校の重要な役割

「自然体験は、何が起こるか、何が発見できるか、それが何よりおもしろいところです。水辺を子どもたちは、五感を使いながら真剣に歩きます。水のにおいや冷たさ、流れの速さ、深さなど、川の力を体と心で受け止めながら、自然と自分との折り合いをつけ、どうやって楽しもう、遊ぼう、魚をとろうということから、水族館を作ろうか? どんな魚を入れようか? 絵を描いてみようか? 詩を書いてみようか? と想像をふくらませ、創造していくのです。また、子どもたちは水辺にいると元気になりますが、一方で遊びに飽きると、足を水の中につけてボーっと自然に体と心をゆだね、体と心を開放しています。このように、興味を育てるだけでなく、忙しい最近の子どもたちには、ほんのりとした時間も大切なのです。だからこそ、自然と触れ合う機会を作るという部分で、学校の果たす役割はとても重要になっているのだと思います」。

取材を行ったこの日も、学校のすぐ近くにある見槻川で、6年生と1年生による合同での自然体験が行われました。「今回は、6年生が生き物を集めて1年生用の小さな水族館を作りましたが、生き物を見つめる1年生がとても良い表情をしているのがわかりますか? これがいろいろな興味を育てていくわけです。だからこそ、今後も、自然に触れる機会を作り続けていかなければなりません」と、村岡先生。これからもこの情熱が、子どもたちの興味を広げ、やる気に満ちた逞しい子どもたちを育てていくことでしょう。

(2013年9月取材)




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