年度別チャレンジャー一覧

助成対象者のチャレンジ概要
高橋 祐美子
氏名
高橋 祐美子(たかはしゆみこ)
助成実績
スポーツチャレンジ研究助成(基本):第12期生
運動後の骨格筋グリコーゲン回復に対して、糖質エネルギー利用を抑制させる栄養素は有効か?

運動時の骨格筋グリコーゲン(Gly)回復促進方法は、Gly合成に着目した探索が主である。しかし、運動後の糖質摂取量とGly濃度の増加関係に頭打ちがみられるなど、Gly合成量の上限が予想される。先行研究や申請者の研究で、運動後のGLY回復への糖質エネルギー利用の抑制の有効性が示唆された。そこで、糖質エネルギー利用の抑制が報告されているケトン体がGly回復に与える効果を、摘出骨格筋を用いて検証する。

成果報告(2019年3月)

栄養素の作用機序に関する基礎研究は、その栄養素を摂るべき状況の把握、他の栄養素との効果的な組み合わせの考案など、現場での応用に繋げられる。ヒトを対象とした研究で、骨格筋グリコーゲン回復を促進させる栄養素として、ケトン体の有効性が報告されていた。しかし、生体でのグリコーゲン回復は、グリコーゲンの材料となる糖質の血中濃度、グリコーゲン合成を高めるインスリンの分泌、骨格筋での糖質の取り込みやグリコーゲン合成酵素の活性化など、多くの要素に影響されるものであり、ケトン体がの作用場所・機序は不明であった。そこで、本研究では運動後のマウスから骨格筋を摘出し、ケトン体が骨格筋に与える直接的な効果を検討した。また、本助成によりグリコーゲン回復に関わる酵素・シグナルの活性状態を定量化する試薬を購入し、ケトン体の作用の詳細解明に役立てた。その結果、ケトン体の骨格筋への添加でグリコーゲン回復の促進がみられ、同時に、糖質をエネルギーとして使うことに関わるシグナルの抑制、糖質の取り込みに関わるシグナルの活性化を示唆する結果を得た。本チャレンジでの成果は国際誌に投稿中であり、今後も掲載決定に向け邁進する次第である。