年度別チャレンジャー一覧

助成対象者のチャレンジ概要
沼尾 成晴
氏名
沼尾 成晴(ぬまおしげはる)
助成実績
スポーツチャレンジ研究助成:第1期生
一過性有酸素性運動中の血中アディポネクチン濃度の動態

最近、メタボリックシンドロームの増加が社会的な問題となっています。その増加の背景には、食生活の欧米化や生活環境の自動化による身体への過剰なエネルギーの保持、つまり肥満の増加があげられています。それでは、肥満の増加によりなぜメタボリックシンドロームが引き起こされるのでしょうか。そこには、様々な要因が関連しているといわれていますが、その中でも近年注目されているのが、脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの存在です。従来、脂肪は余剰なエネルギーを蓄える役割をもつにすぎないものと考えられていました。しかしながら、近年では身体の恒常性を保持するために多くの生理活性物質を分泌していることが明らかとなりました。それが、アディポサイトカインであり、その増減がメタボリックシンドロームの発症に関連していることが明らかとなっています。メタボリックシンドロームの予防や治療に運動が効果的です。運動を継続的におこなうことは予防や治療に重要ですが、一過性の運動であっても効果が得られることがわかっています。しかしながら、その機序はすべてが明らかになっているわけではありません。その一つの機序として、アディポサイトカインが関連しているのではないかと私は推察しています。つまり、それらの運動中の動態が運動の効果をもたらす可能性があるのではないかと考えています。

多くのアディポサイトカインの中でも、アディポネクチンがメタボリックシンドロームと深く関連することが示されています。アディポネクチンは、健康な人では血液中に高い濃度で存在し、逆に疾患を持つ人は低い濃度で存在します。つまり、アディポネクチンを増加させることが健康増進につながるといえます。また、アディポネクチンは大きく分けて3種類の分子量で存在し、近年、分子量の高いアディポネクチン濃度がメタボリックシンドローム(インスリン抵抗性)の発症をよりよく判定できることがわかっています。このことから、運動によりアディポネクチン濃度に変化が生じ、また、その分子量の濃度にも影響を及ぼす可能性があると考えていますが、その点については明らかになっていません。そこで、私は有酸素性運動中の血中アディポサイトカイン濃度の動態を実験的に検証してみようと考えています。本検討では、運動中の血中アディポネクチン濃度に着目して、実験をすすめていきます。また、その分子量の違いも検討していきます。将来的には、様々なアディポサイトカインに着目し、メタボリックシンドロームを効率的、効果的に予防、治療する運動処方の構築を目指していきます。本検討ではそのための、基礎的な知見の蓄積をできればと考えています。